#169.満点の星空をあなたに
一通り揉み合って騒ぎ終えた後で再び席に着いたルナは、少し満足気な顔でコーヒーを啜った。
「……ちょっとカッコつけちゃったけれど、名前なんて雑どうでもいいって話でもないし……命名に苦悩しているなら、事務所の理想の姿を想像して、そこからアイデアを得てみたらどう? 名前が事務所の方向を導くってこともあるだろうし」
……なるほど。
私はこの新事務所を通して、VTuberのナンバーワンになりたい! ……じゃなくて、やはり若いリスナー達に色々と知ってもらいたい、というのがある。まあ、大体私よりは歳上なんだけど……
最近の世の中は自由だ。未成年の私がVTuber事務所を設立出来そうなくらいには自由だ。けど、自由はやはり不安を伴う。
未来ある少年少女の中で、将来の夢を持ってそれに向かって努力している人はどれくらいいるのだろうか。娯楽が溢れたこの世界で、なあなあで暮らしていけるこの世界で、しっかりと自分の道を歩み出している人はどれくらいいるのだろうか。
だからこそ、私の事務所が、迷いの彼彼女達の道標になってほしい。自由という曖昧な言葉で理解した気になるのではなくて、自分の選択肢がどれだけ存在して、それらがどんな色でどう輝いているのか。
今のようなモヤモヤした、曇った夜空ではなく、満点の星空の下で、自分の光を見つけて欲しい。
星空……空……宇宙……ハッ!
「『ゆにばーす』!!! とかって……どうですかね……?」
ライバースと語呂も似ているし……何だかイける気がするっ!!!
「……ゆにばーす、かぁ……うーん、しっくりこないなぁ〜」
「しっくりこないわね」
「そんなぁっ!!!!」
私の絶望する表情を見て、ルナときうい姉は無慈悲にも同時に吹き出す。
「でもいいんじゃないかしら? しっくり来ない方が自然だわ」
「そうだよぉ〜! ライバースも始めはしっくり来てなかったみたいだし、成功の兆しかもよぉ〜?」
「そうですかね……もうひとつの『無限ダイバース』って方も妙案だと思うんですけど……」
「ぶふぁっ!? なんて!?」
「ちょ! きういさんなんで笑うんですかぁ!! 言っときますけど、これは無限大とダイバース(diverse)多様性でかけてるんですよ!?」
「ふへ、はひーっ!! わ、わかったから解説しないでぇっ……ちょっ、変な笑い声出ちゃうからぁっ!!」
なんで笑うかなぁ!? 人が一生懸命考えた名前を!!
……でも、やっぱりこうやってからかい合えるのは、何ともVTuberしてるって感じがして楽しい、かもしれない。
「それじゃあ話もまとまったことだし、あられさんもこれからココを出て家に帰るのでしょう? なら部屋や荷物の整理もしなきゃ行けないだろうし、今日はもう解散にしましょうか」
「あっ! ちょっと待って下さい!! 最後にもうひとつ、伝えたいことが……」
***
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