#167.VTuberとして勝つ
「……っ凄いよぉあられちゃあ〜〜〜〜んっっっ!!!!!!」
……よおおおおお……いや、これはきうい姉の反応だ。また喜ぶことは出来な──
バチ パチ バチ
突如現れたその軽快な音は、星乃 ルナのぶつかり合う両手から鳴っていた。
「あられさん……あなたは、私が思っていたよりも遥かに立派なようだわ……その歳で……本当に、素晴らしい……」
「……ということは!」
「えぇ。株式会社ラナンキュラス 社長 星乃 ルナとして……甘姫 あられさん、あなたの事務所の設立を認めるわ」
……っいよおおーーーーーしっ!!!!
私は余りの嬉しさに思い切りガッツポーズを決める。
事務所が立てられる……これでナンバーワンVTuberに大きく近づくことが出来る……でもそれ以上に、アイドルとしてではなくVTuberとして"四強"星乃 ルナに勝利できた気がして、私は嬉しかった。
「やったねぇ〜やったねぇ〜あられちゃあ〜ん!!!」
「やりました! やりましたよきうい姉!!」
「え? 今なんて?」
……あっ、感情が昂ってつい……
「ねぇ〜今のなにぃ〜? 私のこときうい姉♡って呼んだよねぇ〜? もしかして心の中ではそう呼んじゃってる感じぃ〜?」
「うっ」
「うぇ〜い!? ほんとにぃ〜? もぉ〜呼びたいならそう言ってくれたらいいのにぃ〜ツンデレだなぁ〜。なにぃ? やっぱり隠れて私のこと尊敬しちゃってる感じぃ〜? ねぇねぇ〜」
……ウッ、ウザいっ!!!!
くぅ、最後の最後で間違えてしまった! 油断なんてするんじゃなかった!!
きうい姉はこうなったらウザい、とことんウザい。
たとえ今はぐらかせたとしても、きっとこのことであと二週間はいじってくる……こんな酒乱グウタラ女に二週間弄られ続けるなんて……そんなのムリ! 我慢できない!!
どうする……? 何とかして否定するか? それともいっその事泣いてやるか? ……ダメだ、全部軽く流される未来しか見えない……
……いや、もうこうなったらいっその事認めてみるか。別に、彼女を心の中できうい姉って読んでいることも、VTuberとしての活動に関してだけなら一種の尊敬の念を抱いているのも事実だ。
ならば、こんなおめでたい日くらいしっかりとその思いを伝えたって良いかもしれない。
よし、そうと決まれば!!!
「えぇ、そうですが……?」
「……え?」
「そうですが何か!? 尊敬してますが何か!? きうい姉のお陰でここまで来れたし、めちゃくちゃ感謝してますけど何か文句ありますかぁっ!?!?」
「えぇっ!? どどどどうしたのあられちゃぁん!?」
「抜けてるようで色々と考えてくれてるところとか、身バレ意識高いところとか……私がピンチの時にダメ元で電話をかけたら、直ぐに出てくれてアドバイスしてくれた事とか、私が徹夜で作業してた時にエナジードリンク差し入れてくれた事とか……何やかんやで優しくていざって時に頼れる所が、だっ……大好きですけどぉ!?!?」
私はそう言い放った後、少し後悔する。さすがに感情が篭もりすぎてしまった……これでもし馬鹿にされてしまったら……VTuber引退するかも。
と、私はぎゅっと目を瞑って彼女の反応を怯えて待つが、いくら待っても返事が返ってこない。
何だか不気味で恐る恐る目を開けてみると……きうい姉は、顔をトマトのような真っ赤色に染めてそっぽを向いていた。
「……ち、ちょっとぉ、そうストレートにグイグイ褒められるとぉ……その、照れちゃうと言いますかぁ……」
めんどくさいなこいつっ!!!




