#166.静寂に怯える
「それが私の描く"色"です!!!!!」
つい大きくなってしまった私の声が、社長室の中を縦横無尽に駆け巡って、やがて消えた。
少しの間静寂が続く。
きうい姉はポカンと口を開いてすっかり放心状態になっている様子で、ルナもきうい姉ほどではないものの少々驚いた顔をしている。
さて……この静寂、良いものか悪いものか……
このプラン、私は確固たる自信があるが、だからといってそれが正しい保証はない。
主にビジネスにおいて、何か新しいことに取り組む場合に必ずと言っていい程論争を起こす議題!そう、"需要の有無"である!!!
この現代社会において、自分の思いついたことが他に誰も考えつかなかったことであるなんて事例は、ほほ無いに等しい。
何せあのチキンラーメンすら、同じことを思いついて更には本格的に研究した人間が複数いたのだ。
何か新しいビジネスプランを思いつきルンルン気分でそれに取り掛かってみると、全く同じことをすでに行っている企業を発見して落ち込む……なんてものはあるあるである。
だが、それよりももっと恐ろしいのが……先行事例がなかった時である。
つまり、自身の考えるプロジェクトを成し遂げている企業が存在しなかった時だ。その瞬間、発案者は身体を震わせ、頭を悩ませる。
"誰も思いついていない"のか、"思いついた上でやっていない"のか……!!!
この現代社会において、自分の思いついたことが他に誰も考えつかなかったことであるなんて事例は、滅多に無い。
よって、先行事例が存在しない時……それは、"思いついた上でやっていない"方に軍杯が上がるのが殆どなのだ!!
更には、"やっていない"理由も複数ある。
誰でもやれるけれど、メリットがないから誰もやらない場合。
やろうとはしてみたが、様々な問題で実現が叶わなかった場合。
二つ目ならまだマシなのだが、一つ目の場合は悲惨である。これはつまり"需要ナシ"! そのプロジェクトが実現しようがしまいが、その先には失敗しか待っていない……まさに"詰み"である。
そして、これらの障壁を乗り越えた僅かひと握りのアイデアが、世界に新しい旋風を巻き起こすのだ。
果たして、私のはどちらか……もしここでルナに『それはさすがに需要ないわよ』なんて言われたら……軽く絶望できる……!!!
もし私のこのアイデアを真っ向から否定されたなら、事務所の下りはもちろん全て水の泡……そんなの嫌っ! この計画、大分前から温めてきた自慢のやつだったのに!!
お願い……誰か……何とか言って……
そう私が神に誓い始めた時、ようやくきうい姉が口を開いた。
「……っ凄いよぉあられちゃあ〜〜〜〜んっっっ!!!!!!」




