#159.三ツ星料理にバケる
「……え?」
「……あぇ〜?」
私の丁重なお断りに、ルナときうい姉はすっかり素っ頓狂な声を出した。
「……ちょっと待って。あられさん、今のは私の聞き間違いかしら?」
「いいえ。丁重にお断りさせて頂きました」
至って真剣な私の顔を見て、ルナはしてやられたというような顔を手の甲で軽く覆う。
「なんでぇ!?」
やや感情的にソファから身を乗り出したきうい姉が私に詰め寄ってくる。
「ライバースのリーダーだよぉ!? 大抜擢! 大出世! なんだよぉ!? こんな美味しい話、めったにないんだよぉ!?」
焦りと混乱で語尾が"だよぉ"になってしまっているきうい姉の意見は、実にもっともである。
私の目標は、目指すべき所は、このVTuber業界の一番上。現トップの"四強"を超えるチャンピオン。
この有難いお誘いは、乗ればおそらくかなりの近道になる。悪い話では全く無い。勿論、多少の批判や意見はぶつけられるかもしれないが、そんなことなど一切どうでも良くなる程のメリットがある。
普通は断るなど有り得ない、世間では何とも稀有な"うまい"話である。
私は、主観的観測ではあるが、かなり手段を選ばない方だ。無論、他人を深く傷つけることや倫理的に問題のあることは別として、プライドやこだわりによって選択肢を切るようなことはしない。
プライドが無いわけでは無い。それがプラスに働くより、マイナスに働く方が多い事を知っているだけだ。
だから、この勧誘に対して、人に敷かれたレールだからどうこうとか、私はほかとは違う道を行きたいからなんやらとか、そんな能書きを垂れている訳では無い。
ただ、今回の話を断るほど、私にはやりたい事が、より可能性を感じることがあるのだ。
「まずひとつ……私、きうい姉と仕事したくないんですよね」
「えぇ!? 理由それぇ〜!?」
「というのは冗談で……私、アイドル好きじゃないんですよね」
「えぇ!? にしてもそれぇ〜!?」
「きういさんちょっとうるさいです……でもこれはまあまあ大きいです。今回のインターンで分かりましたが、ライバースはアイドル業にかなりの力を入れている……日々のレッスンや定期的なライブを強制されるくらいなら、私はその間に配信でリスナーを楽しませたいのです」
「……それくらいならこちらで調整できるわ。あられさんはアイドル業に専念しなくて良い。これなら──」
「アイドルグループのリーダーがアイドル活動しないって何事ですか? そんな腑抜けリーダーについて行くメンバーなんていません」
「それは……そうだけれど……でも、そうしてでもあなたが欲しい……! あなたはそれほどまでの逸材なのよ!?」
褒めてくれるのはとても有難い、が──
「それに、多分私はアイドルには向いていません。一昨日のライブも、甘姫 あられという話題性と、3Dライブというハクの力があったから……それに、あのライブで一番輝いていたのは、私じゃない。それは、ルナさんも分かってますよね?」
「……」
彼女は珍しく無言になる。
「ルナさんの考えは大体分かりました。あなたは私がアイドルに向いていないことを知っている。でも、だからといって私を手放すことは出来ない。だから、ライバースで良い地位を与えて、手中に加えようとした。
……でも、ルナさん。わざわざそんな回りくどいことをする必要はありません。私にとってもルナさんにとっても"うまい"話がありますから」
そう、あるのだ。上手くいけばミシュラン三ツ星料理にバケる、とんでもない話が……!
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