#156.ラスボスは静かに待つ
すぴかとマネージャーには待機してもらって、私ときうい姉は社長室へと足を運んでいた。
社長室のある最上階に到着すると、エレベーターの扉が開くと同時に入ってきたその独特な空気に肌が触れる。
一度来た時とはまた少し違ったように感じさせる、妙に静寂な雰囲気。
私の心境は、まるでラスボス戦に向かう勇者のようであった。今すぐ左右の壁に炎の柱が立ったとしても、何らおかしくは無い。
「……」
珍しくきうい姉がちょっかいをかけてこない。
この厳かな雰囲気に当てられて、流石に何も出来ないのであろう。その証拠に、彼女の横顔はいつもの腑抜けた様子とは違ってキリッとしている。
うんうん、やはりきうい姉は黙ってた方が威厳が保たれて良い──
「ねね、あられちゃん。この薄暗い雰囲気、絶妙にえっちだねぇ」
……はぁ……期待して損した。
私が呆れ顔で反応すると、きうい姉は焦って良く分からない否定をする。
「いやいや、違うのよぉ! 今ってまだ午前でしょ!? こんなに薄暗いのって何でなんだろうって思ってさっ!!」
「あぁ、まあ言われてみれば確かに……」
窓の配置がそうさせるのか、それとも壁の色か。原理はよく分からないが、確かにわざとそう設計したような感じがする。
「ねっ! やっぱりえっちでしょぉ? ルナっちも意外とむっつりなのかなぁ〜」
「ほんと黙っててください」
ピシャリと彼女との会話を終わらせて、私は社長室の前で足を止める。
先程はラスボス戦と表現したが、実際はもう星乃 ルナに勝利している訳である。何も気を張る必要は無い。
と、頭では分かっているのだが……やはり緊張してしまう……
よし、こういう時は甘姫 あられマインドに切り替えて……
「……た、たのもぉーーーっ!!!」
威勢よく扉を開けると、まず一番にコーヒーの香りが私の鼻を刺激した。このコーヒーの匂いは、彼女が留守でないことを意味する。
視線の奥。そこには、社長椅子に腰掛けてコーヒーを啜る、星乃 ルナの姿があった。
「随分と元気な登場ね。道場破りでもするつもりかしら?」
彼女は私ときうい姉をソファに案内する。その立ち位置の構図は、ルナと私、きうい姉で三角形を描く形になっていた。
ルナは少し気まずそうに、または煮えきらなさそうに言葉を放つ。
「まずは……あられさん、本当におめでとう。投票結果の通り、完敗だったわ」
「はい……ありがとうございます 」
そのルナの口調に少しだけ含まれる"悔しさ"の気を感じ取って、私は一層嬉しくなる。
……っと、無邪気に喜んでる場合じゃないのだ。
「それで、なんですけど……」
「えぇ、言いたいことは分かるわ。卒業についてでしょう?」
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