#154.VTuberは成長コンテンツである
「もう! 落ち着きましたか? 急に倒れるからビックリしましたよ!」
「アハハ、ごめんなさい。なんか急にチカラが抜けちゃって……」
高校に受かった時よりも、模試の連続一位記録100回を達成した時よりも、更に上位の感を抱いてしまった。
いつも適当そうでブラブラしているきうい姉に、そう真っ直ぐな瞳で伝えられた時。なぜかフッと肩の荷が降りた感じがしたのだ。
そしてそこで初めて、案外精神的に縛り付けられていたのかと知る。
背中の痛みがなければ、私はこれを夢と錯覚していたかもしれない。
「や、やりましたねっ……! あられさん!!」
柏木は目に涙を浮かべる。
自分の職がどうだとか、一切考えていないような澄み切った目。
……本当に、この人は。私の周りは、あたたかい人が多すぎる。
「柏木さんっ! あられ、あなたがマネージャーでよかったですっ!! 柏木さんのおかげでここまでこれましたっ!!!」
「うっ……うわあぁぁぁぁそれぇ宇宙一言って欲しかった言葉ですよぉぉぉぉ!!!!!!」
トリガーが外れたかのように、彼女の目から大粒の涙が溢れ出す。
「でもそれ、本当に思ってくれてますかぁ……? 私、今回の件であまり役に立てた自信なくて……」
「なにいってるんですかーっ!! 柏木さんは! 配信中にトツゲキしてきて! ライバースにいることバラして……そ、それで、部屋の中めちゃくちゃにして……え、えーと」
「私迷惑しかかけてないじゃないですかあぁ!!!!!」
「じ、じょうだんですよっ! 日の目を浴びていない70話のあいだに、陰でたくさんサポートしてくれましたっ!!」
「そっ! そうですよねっ!? その言葉、素直に喜んでいいんですよねっ!?」
「……」
「何でそこで黙るんですかっ!!」
まあ、何はともあれ。こうやって強敵に勝利出来たのは、これまで私に関わってくれた全ての人のおかげなのは間違いない。
だからこそ、しっかりと感謝を伝えなければ。
私は隣でぴょこぴょことバンザイするすぴかの方に体を向けると、慌てて引っ込めようとする彼女の手をがっしりと掴んで強引に目を合わせにいく。
「すぴかさんっ……!! 本当にありがとうございました!! すぴかさんのおかげですっ!!」
そんなことないですよ、と謙遜して顔を逸らそうとする彼女の頬を両手でガシリと掴んで、意地でも逃がさないようにする。
その私の行動に一瞬たじろぐも、彼女はその意図を汲み取ったようで、ムニっと潰された顔のまま口を開いた。
「……あられさんのおかげです……あの日、あられさんがあの動画を送ってくれたから……私は今、自分を誇れてます……まだ緊張とかしちゃうし、ぜんぜんだけど……でも、これからもみんなに、アイドルVTuber 火火 すぴかを、一生懸命提供したいなって、思ってます……!」
「それが一番だとおもいます!! なんせ火火 すぴかは"成長コンテンツ"ですからっ!!」
「うんうん! あられちゃんのライバースクビも無くなったし、一件落着だねぇ〜」
「……え?」
きうい姉の一言にすぴかは戸惑いの1文字を残して硬直する。
あぁ、そういえば言うの忘れてたっけ……
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