#146.月は星々より近く
1300ptありがとうございます!!!!
ライブの主役はいつだって、そのステージに立つ演者だ。
決して裏方にその役柄が回ってくることは無い。
とどのつまりは、どれだけ私が演出を考えようが培った技術を駆使しようが、それらはステージ上ではたかが脇役──いや、主役が扱う一種の小道具にしかなり得ないのだ。
勿論、下準備の大切さは理解している。
だが、結果に直接影響を与えるのは、いつだってその道具を使う演者だ。
だから、ルナの演出がどれだけ奇抜であっても、一曲目が人気オリジナル楽曲であっても、それらは勝負を決める決定的な根拠にはなり得ない。
つまり、本当の勝負はここから、なのである。
星乃 ルナのカリスマ性から放たれる、凄まじいオーラ。
私も幾度となくこの身で体感した。
一回目はきうい姉とのコラボ中。二回目はラナンキュラス本社で。そして、このライブに向けて彼女を研究する過程で、画面越しに何度もそのオーラを浴びた。
しかし今や、私の中での星乃 ルナのオーラは、圧倒的なものではなくなっている。
星乃 ルナを超える逸材が、現れたからである。
火火 すぴか。彼女はルナでさえも遠く及ばない、究極の領域に既に達している。
カリスマ性の側面では、すぴかの圧勝。これはルナとの勝負において、大きなアドバンテージとなっていた。
が、その認識は間違っている、と今この場で思い知らされた。
ルナの3Dステージ上のCG演出。かなりお粗末だ。
必要最低限のものしか整っておらず、特に目立った所も見られない。
スマホ画面と巨大スクリーンとを見比べてみると、彼女の動きが手元と奥とでリンクしていることが分かる。
恐らく、スマホとスクリーンを同期させる上で、あまりにデータ量の多いものは使用出来なかったのだろう。
だが、問題はそこでは無い。そう、このCG演出も、ステージ上では小道具でしかないのだ。
こんなものは、演者の実力次第でどうとでも可能。
そんな私の考えに同意するかのように、ルナは右腕を大きく横に振り動かす。
その瞬間だ。
これは幻覚か、右腕から膨大な数の"キラキラ"が流星のように飛び立っていく。
カリスマ性から放たれるオーラというものは、単なる大きさが全てではない。
単純な数値ならば、すぴかが圧倒している。が、ルナの場合は練度がえげつない。
天性の才能とそれに追従する凄まじい努力、そして過酷な環境を生き抜いてきた経験から、ルナの練度はある種の──すぴかが辿り着いたものとはまた別の、究極の領域に到達している!
そこにまで歩を進めれば……後は簡単である。
超大物芸能人のオーラに当てられて、涙が出てきてしまうように。魔性の女のオーラに化かされて、目にフィルターがかかったが如く、より一層可愛く見えてしまうように。
究極の領域に足を踏み入れた者は、人の精神に関与することが出来るようになる。
私が見た景色は、夜空に浮かぶ月だった。
月の後ろに流れる流星。輝く星々。 だが、私達の一番近くで大きく明るく光っていたのは……恐怖を覚えるほどに美しい満月。
そう、この瞬間。
私はライバルであるはずの星乃 ルナに、魅了されてしまったのである。
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第百四十六話読了ありがとうございます!
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