#142.星乃 ルナは思い出す
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ガチャ
「……もしもし、聞こえてる?」
何らかの演出が始まったと察知した観客らは素早く歓声を抑え、ルナのやや音質の悪い声が空間に通り始める。
「……何で電話したかって? いや、ちょっと話したくなっちゃって……」
通話相手は私達観客という想定なのだろう。ルナの声だけが流れたまま、話は進んでいく。
それにしても、私が彼女に持つザ・ビジネスマンのイメージとは異なった、かなり甘めの声をしている。普段の配信でももう少しハキハキと話していたはずであるし、もしかすると、メンバーシップ限定動画や販売ボイスなどはこのような声質で収録しており、今回はそれを意識しているのかもしれない。
となるとこれは、リスナーが恋人或いは親密な友人のような立ち位置という設定だろう。
「……ふふっ、自分から掛けといてだけど、なんだか変な感じね。こうして話すのは久しぶり……何年ぶりかしら?」
……ん? 話すのが久しぶり? ということは、恋人設定などではないのか? 設定が上手く掴めない……
画面は無機質な通話画面のまま、話は一方的に進んでいく。
「最近忙しい? って……私はもちろん多忙よ? なんせ社長ですから。でも、仕事は楽しいけど近頃はビジネスすぎて心が休まらないわ。だから、こうして昔みたいに話せて、実はすごく嬉しい」
……何だか、少し置いてけぼり感がある。一体何の話なのか、全く先が見えない。
それとも、私の実力不足なのだろうか。本当の星乃 ルナファンならこの演出の意図も容易く読み取れるのだろうか。
そう思ってチラッとすぴかに視線を移すと、彼女はどこか苦い表情をしてボソッと口を動かす。
「……これは、ちょっと……嫌な……予感が……」
嫌な予感……私にとっての嫌なことは、この演出が実は観客を素晴らしく魅了するものであることだが……すぴかの場合の嫌なこととは、一体何を指すのだろう。
くぅ……謎だらけだ……一体何を企んでいるのだ、星乃 ルナ!!
「……今でもね。あの時の決断が、実は間違ってたんじゃないかって思ってるの。あの時ああしていたら、今がもっと楽しくあったんじゃないか、って……」
ルナは少し寂しそうな声でそう語る。
「今でもよく読み返したりするのよ? 君の手紙。すごく……励みになってる。手紙だけじゃなくて……色んな思い出とか、大掛かりな企画から何気ない雑談まで、今でも鮮明に思い出せるの。それほど大切で、あたたかくて……勿論君もそうよね?」
ここで初めて、まさか、という悪い予感の具体的思考が私の脳裏によぎる。
もしかすると……いやでも……でもだったら……くっ、上手くまとまらない……!
「……ねぇ、そういえば……君も覚えてるでしょう? あのライブ……あの時も、確かこんな感じだったわね。私が君に電話して……」
そこから一瞬で画面が白い光に包まれ、ルナの声も段々と薄れて遂には聞こえなくなる。
しばしの沈黙。
あともう少しこの沈黙が続けば、観客が不穏な空気にザワつキ始める……といったところで、再びこの音が空間に響いた。
プルルルルル
今度はドラムの音が加入し、先程の素朴な呼出音と比べて少し豪華になっている。
そして、真っ白な画面に映し出された黒文字。
それは──
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