#138.ブーメランは跳ね返る
コンマ数秒。
私の右足を妨げた小石と目が合う。
そして──
ドンゴロゴッルァーン！！！
視界がグワングワンと回転して、私はボディプレスのように体をアスファルトにうちつける。
着ぐるみ！！
通常よりも重く、動きづらく、視界が狭くなる何とも頼りない装備！！
頭部の重量が大きいことからそもそもの重心が高い位置に移動しており、何のトラップを仕掛けておらずとも危うくコケそうになる不安定な状態だ。
小石などの障害物によってコケてしまうことも、難しいことではないのである……
私の転倒に観客達はより一層騒がしくなる。
「すげぇ……！！ 生PONだぁーーっ！」
「再現度高ぇ！ ガチでかわええぞ！！！」
ライバーが転けてるのに何で誰一人心配しないのよっ！ ……まあ、悪い気はしないけど。
「焼きそばパン残りひとつでーーーすっ！！！」
はっ！ マズイ！！ 早く買いに行かないとっ！！
私はフラフラとしながらやっとの事で上半身を起こすと、明後日の方角を向いている顔部を正面に戻して焼きそばパン売り場に目を向ける。
焼きそばパンはもう目の前……！ 後は立ち上がって注文するだけ──なっ！？
焼きそばパン売り場の真ん前で仁王立ちするソレに、私は絶句する。
私と同じ二頭身のマスコット。
派手な赤髪を携えて、豪華な服装を身につけているのにも関わらず、どこか隠せない陰の気配を感じさせるこの独特なキャラクターデザイン。
「お買い上げありがとうございます！！ これにてライバースゴールデン焼きそばパン、完売でーす！！！」
カランカラン ポコン
絶望のアナウンスやジングルベルの音色と一緒に、ポケットのスマホが通知音を奏でる。
私は無心でスマホを取り出すと、連絡アプリを開いて確認する。
火火 すぴか【5期生】
あられさーーーーんみってるぅーーー？？？？(*^^*) ピスピス 焼きそばパン アザマス♪(*´ω｀人) あられさんが買えなかったんでしゅねぇーーー(^^)カワイソゥ笑
頭下げてくれたら、特別に一口分けてあげてもいいですよ( ~ᐕ)~一口だけネ♡
まあ笑 今回は私の勝ちWinᕙ( ˙꒳˙ )ᕗってことで(≖ᴗ≖)
乙です笑
……こんのぉクソ陰キャがああああぁぁぁぁぁっっっ！！！！！！！
何なのコイツ！？ こんなメッセージ送ってきて何がしたいの！？ 煽りか？ 煽りかこのクソ陰キャ！！
あと何でメッセージだとこんなに流暢なんだよ！！ 普段はこんなにも喋らないだろうが！ アッ……ウス……くらいだろうが！！ インターネットだからって調子乗ってんじゃねぇ！！！！！！
……はぁ、はぁ、心の中なのに叫び疲れた……
くそぅ、もういいわよ。どうせもう売り切れちゃったし、焼きそばパンなんて別にいらないし──
「あのっ！ あられちゃん！！」
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