#135.超強い騎士は鉄拳を食らう
バシャアアアアッ!!
……ん? これは何の音?
私はぎゅっと閉じていた瞼の力を緩め、恐る恐る目を開く。
すると……
着ぐるみの上から水をぶっかけているメテオが、そこにはいた。
「ハッハー!! じゅるじゅるぅ!! 水がうまいぞぉじゅるじゅるぅぅぅ!! 礼を言うぞあまねぇーじゅるぽぉっ!!!!」
メテオは着ぐるみの生地から漏れ出てきた水を啜っているらしく、じゅるじゅると下劣な音を奏でながら私に語りかける。
……こいつ、何でもありね。
ここまで突き抜けられると、あれだけ焦って真剣に考えた自分が馬鹿に思えてしまう。というか、むしろ腹が立ってきた。
……うん、もうこれでいいか。
「メテオさん。左目にハエが止まってますよ」
「なにぃっ!? 私が糞野郎だと言いたいのかこの虫野郎ぉ!! 鉄拳を喰らわしてやるぞぉおおおお──ぐおぉぉ痛ぁい!!」
メテオは右手で作った拳を着ぐるみの左目に撃ち放ち──そのまま自身の顔を貫いて悲鳴を上げた。
……はぁ、私こんなヤツに一杯食わされたのか……
膨れ上がる苛立ちを感じながら、私は視界が奪われ悶絶するメテオの下半身に目掛けてすかさず蹴りを入れる。勿論、周囲の人達には見えないように。
「ぐふぉおぉぉぉ!!!」
ゴンっと響いた鈍い音と共にメテオの体勢がガクンと崩れ、凄まじい勢いで地面にヘッドスライディングをかます。
ドンゴロゴッルァーン
そのまま地面に転がり込んだメテオは、全身土だらけの状態でピクリとも動かなくなる。
……彼女はもう、ただの屍のようだ。
私となのは気絶しているメテオに合唱しながら、彼女を置いて先へ進む。
「あられ、暴力はイケないと思うの!!」
「……なのさん、世の中で最も罪なのは、暴力ではなく正真正銘の馬鹿です」
「ひぇっ……! いつものあられじゃないの。何かおかしいの!」
「そりぁああんなの見せられちゃ気も狂うってもんですよぉ! こうなったら絶対にアクスタ手に入れてやる!!」
「ライバースゴールデン焼きそばパン、残り5個でーす!!!」
さあ、次の標的はなの、貴様だ。どうやって調理してやろうか……ん?
「なのは暴力なんかに屈しないのっ! 絶対にメテオの仇を取ってやるの!」
「はぁ」
「欲しいものは自分で奪う主義なの! 必ずゲットしてやるの! ……なのっ!? 何もしてないのにあられと差が開いていくのっ! 何でなのっ!?」
「……なのさん、単純に足遅いです。可愛いですけど、ここは先に行かせてもらいます!」
「なのーーーっ!!」
なのの遠吠えを軽く無視して、私はぐんぐんと進んでいく。目測の距離からして、焼きそばパン売り場に到着するのもあとちょっとだ。
「ライバースゴールデン焼きそばパン、残り3個でーす!!!」
目の前に焼きそばパンを狙う人間は確認出来ない。よし、この勝負、私の勝ちだ!!
「おい! あれ見てみろ!!」
「もう一体爆速で近づいてくるぞ!!」
……まだ何かあるの!? もういい加減買わせてよ焼きそばパン!!
「あぁぁぁぁられちゃぁぁあああぁぁぁんんんんんんっ!!!!!!!!!」
後ろから聞こえてくる雄叫びのような声は、大分と序盤に退場したあの女に似ていた。
……クッ! 最後に邪魔してくるのはやっぱりアンタか、きうい姉!!!
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