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#134,メテオは水を……

 

 まずいまずいまずい!!


 本来内部にあって見えないはずのペットボトルが、メテオの着ぐるみの手の中にある。

 ということはつまり、メテオは外から水分を補給しようと考えているのだ。


 着ぐるみの内部にペットボトルが装填されているのには理由がある。それは、水分補給時に子供の夢を壊さない為だ。


 外部から水分を摂ろうとすれば、必然的に着ぐるみの頭部が邪魔になる。そこから上手く補給するには、頭部を外してペットボトルに口をつけるしかないのである。


 となると、補給時のその姿は、ポップでキュートな体からリアル生首がニョキっと生えた──何とも見苦しい姿である。


 トラウマ! これを見た子供達は、このキメラじみた姿を脳裏に焼き付けてしまうこととなるだろう。


 更に、だ。

 私達VTuberの場合にとっては、顔を晒すというあってはならない事態に発展してしまう。

 折角着ぐるみでカモフラージュしても、自ら素顔を晒してしまえばそれは水の泡。引退騒動にまで発展しても何ら不思議では無い。


 だからこそ、運営陣は内部にペットボトルを装填して、このような悲惨な事故を無くすように心掛けているのだ。


 が、よくよく考えてみれば、この運営の配慮にメテオが気づくはずが無い!!!

 何せ頭の弱い人達が多いVTuber業界でぶっちぎりの阿呆として知られるのが彼女である。

 水分補給時に頭部を外してしまうと、自身の素顔がバレてVTuber活動が危うくなるので、ペットボトルを内部に装填しており、中の人間はそのペットボトルを使用しなければならない……なんて複雑なことを、メテオが理解出来るわけなかったのだ!


 ……VTuberどうこう以前に普通着ぐるみは人前で脱がない、なんて正論は聞き入れないわ!


 とにかく、これはVTuber超強い騎士 メテオの存続の危機だ。

 ただでさえ『着ぐるみ達が焼きそばパン目掛けて猛ダッシュしている』という噂を聞き付けた人々がわらわらと寄ってきているこの状況。更にはメテオの大声に『本物じゃね?』『そういう仕掛けでしょ』とザワついている始末。


 ここでもし、彼女の愛くるしいヘッドが取り外されて阿呆面メテオが降臨したのなら……完全に、終わる。彼女のVTuber生命が絶たれる。


 が、既に彼女はペットボトルのキャップを外し終えて、それを首元まで持ってくる所まで来ている。後は着ぐるみを脱ぎさってペットボトルに口をつけるのみだ。


 間に合わない……!


 別に私の活動が終了する訳では無い。が、私のせいで誰かの活動が終了するのは、それと同じくらい最低最悪なことである!


 どうにか出来ないか、と頭をフル回転させるが何も思い浮かばない。

 メテオの思考回路が読めない以上、この天才的な頭脳を持っていたとしても役には立ち得ないのである。


 ダメだ……! どうしようもないっ!!


 私は今、ただ心臓をバクバクと鳴らしながら、彼女の最後を見届けることしか出来ない。

 どうしようもないという無力感と、私のせいだという後ろめたさで歪み始める視界に耐えられなくなった私は、そのままぎゅっと目を瞑った。


 そのコンマ数秒後。

 聞こえてきたのは、観衆の悲鳴ではなく。


 バシャアアアアンッ!!!


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