#125.熱き少女達は火花を散らす
規則的に動く多数のハートに囲まれながら、私達は滑らかに空中を飛び回る。
前と後ろ。右と左。上と下。
この三軸から成る位置関係の中でのベストポイントを研究し、緻密なプログラムでそれを実行させる。
そうすることで観客のライブへの没入を飛躍的に向上させているのだ。
私は後方にさがる二人を見て素早く前方に出ると、右から左へダイナミックに空を駆ける。
「好き に な っ て!」
コメント
:もっと!!!!
:もっと!!!!!
:もっとっ!!
:もっとー!!!!
私は宙に浮いたまますかさずウインクを放つ。と、モニターに映る観客の八割程の表情が緩むのが分かる。
そう、この空間利用と導線は最終的に、"独自に導入した演出その3"のファンサを活かすサポートになるのだ。
観客の視線がある一点に集まることで、私達は"観客が今どこを見ているか"を把握出来るようになる。
すると、私達はその一点に入り込むだけで自然と観客と目が合うようになるのだ。
ただし、これを行うには精度の高い演出技術を用意しつつ、演者がその演出を細部まで完全に把握し、かつ正確に行動すべくパフォーマンス中にステージ全体を俯瞰する客観的視野が必要になる。
それをやってのける演者が私以外に2人もいて、そしてそのどちらとも同じユニットのメンバーであったことに、私は今感動している。
そして、未だかつて無いほどに燃えている!!!
「私 を 見 て !」
私を見ろ!!!!
コメント
:もっと!!
:もっとー!!!!
:もっと!!!
:もっと!!!!
私の手には、極限まで研ぎ澄まされた刀がある。そしてそれは、きうい姉にも、すぴかにも。
私達はこの戦場で、お互いに真剣を振るってしのぎを削り合う。そして、それらがぶつかり合って激しく散った火花が、観客の心を着火させる。
モニターから流れて私達の心に響く、大歓声の重低音。
空間を超えて伝わってくる、会場の熱狂。
熱い。熱すぎる。
まるで恒星と惑星のように、私達と観客はより熱く輝いていく。
私はすぴかの方へ駆け出すと、彼女の首に照準を合わせて思いっ切り刀を振るう。
コメント
:まじでえぐいぃ!!!
:おい熱すぎるぞ!!!!!
:何これまじで!!!
:鳥肌やばいんだが!?!?!?
:まじで目離せん……!!
:コメント打つ余裕ねえわ……!!!
:これ現地やべぇぞ!!!
:現地かつ配信見てるけどまじでえぐい!! 盛り上がり過去一レベル!!!
すぴかは私の刀とそこに纏われた殺意を真正面から受け止めると、くるりと一回転して斜め上から斬りかかってくる。
それに負けじと全力で刀をぶつけてやると、凄まじい特大の火花が周囲に散る。
楽しいっ……!!!!!
全身に生き生きとした血が巡ってくるのが分かる。私は今、この状況を最高に楽しんでいる!!!
後にすぴかから聞いた話である。
私はこの時、まるで銀河一の幸せ者が『ここで人生が終わっても悔いはない、いやむしろどうかここで終わってくれ』と願った時のような、あまりの幸せに死の恐怖すら乗り越えてしまった時のような、そんな顔をしていたらしい。
そして、その直後であった。
熱く光るしなやかな太刀筋で、私の首がストン、と落とされたのは。
***
第百二十五話読了ありがとうございます!
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