#124.足りないなら加えるまで
「このライブ、直に崩れるでしょうね」
そのセリフをルナが完全に言い終わる前に、古本が何かに気づいたらしく声を上げる。
「ルナさん、なにか変ですよ」
その発言を聞いて、今度はルナに代わって萩本が隠れてニヤリと笑う。
反して、眉間に皺を寄せて怪訝な顔になるルナ。彼女はモニターを見つめながら、ブツブツと口を動かし始める。
「確かに……案外バラけていないわね……むしろ見やすいような……映像だからかしら、カメラの枠が擬似的視点になっているとか……」
モニターの画面がパッと変わって、会場の観客の様子が映される。
それを見た3人は思わず息を飲んだ。
観客が全員、同じ方向を見つめていたのだ。
まるでシンクロのように観客が一様に首を固定する光景に、3人は至って不気味な、超人的なモノに魅了される狂気のようなものを感じ取る。
それはまるで、支配者と奴隷。君主と家臣。操る者と操られる者。
みな異なるはずの、多様なはずの数多の人間達が一律で同じ方を向いている姿はまるで操り人形にでも変身させられているかのようだった。
空間が静寂に包まれてから少しして、ルナは突然にその沈黙を切り破った。
「……なるほど! 導線かっ!!」
「エゴサ で 見つけた アンチ の コメ」
「ふざけんな! 誰より 分 かってる し」
コメント
:うおおおおお!!!!
:あられ×きうい姉、声の相性良いなぁ!!!!!
:親和性高い!!
:きうい姉の歌声、感情乗っててめっちゃ良い!!!!
:あられたん! 可愛いぞおおおぉ!!!!!
:あられときうい姉の掛け合い……てぇてぇ
:あられたんの初コラボがきうい姉だからこそ、このデュエットがエモすぎるぅぅ……!!!!!
そう、私が独自に導入した演出その2は"導線"だ。
これを発見したのはアイドル展の時であったが、そこからどうライブに導入しようかとかなり苦悩した。
この"導線"は恐らくウォルフ・ライエのような大人数のグループで火を噴く秘密兵器である。
数が多くなり、通常なら観客の視線がバラつくような所で、彼女達は"導線"でそれらを操って視線を一点に集めるのだ。
だが、これは私達のような少人数ユニットでは、本来あまり効果を発揮するものではなかった。
理由は至極単純。まず視線がそこまでバラつかないのである。
勿論、ステージの端と端に分散したなら視線は分かれるだろう。が、それも私達なら分かれて3方向であるし、まずメンバー間の連携が取れなくなる為このような位置は決して取り得ない。
また、"導線"はいつでもどこでも使える魔法のような技巧では無い。
視線誘導には、それを誘導するオブジェクトが必須。つまり、ステージに立つ人間の数がある程度必要なのだ。
となると、私達が通常にライブするだけでは、"導線"は決して絶大な効果をもたらさない。
ならば、諦めよう……その思考に辿り着くのが大多数であろう。
が、私は違う! なぜなら天才なのだから!!
「でも 大 丈夫 ここに 立て ば み ん な が いる! いくよー!!!」
コメント
:サビ来るぞぉ!!!!!
:うおおおぉぉ!!
:すぴすぴ……大きくなったねぇ……
:お義母さんも見てます
:うおおおおおぉぉぉ!!!!!
:いくよーかわいすぐる!!!!!
すぴかの掛け声に合わせて、私達の下から無数のハートオブジェクトが飛び出してくる。
オブジェクトが足りないなら、それを加えてやればいいのだ!!
***
第百二十四話読了ありがとうございます!
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