#123.崩壊が兆す
「気のせい じゃ ない 目は 合っ て る よ」
コメント
:あられぇぇぇええ!!!
:かわいいぃぃぃいぃ!!!!!
:あられたぁんんん!!!!
:あられたん!!!
:こんあられぇ!!
:踊ってるあられの破壊力えぐいっ!!
:可愛いぞ!!!!!
すぴかに入れかわって前に出た私は、なるべく平常を意識して声を出す。
歌唱には、感情の起伏がどうしても現れる。
緊張や不安を持ちすぎると、それらは歌声として観客に伝わってしまうのだ。
「ハート 作 っ て 恋 しちゃって 下さ い!」
私は続けて歌いつつ、イヤモニで逐一歌声の確認を行う。
……よし、震えたり不安定になったりすることなく、しっかりと芯のある歌唱が出来ている。
今度は私とすぴかがやや後ろに下がり、きうい姉が前に出る。すると彼女は突如目の前に出現したハートに飛び乗り、なんと宙に浮いて歌い始める。
「やれる こと 何でも しま す NG 無し で 体当たり 挑戦っ!」
コメント
:きういねぇえええぇぇぇ!!!!!
:浮いたぞぉ!?!?
:俺今きうい姉と目合ったぞ!!!
:空飛んでるのやべぇ!!!
:まじで神すぎるぞ!!!
:愛してるぞきういぃぃ!!!!
このライブステージ。
私が独自に導入した演出は3つだ。
1つ目は、立体空間の利用。
私達のライブは実物では無くあくまで映像であるため、どうしても迫力に欠けてしまう。
今私が隣で浴びているすぴかの凄まじいオーラも、会場ではどうしても半減してしまっているのだろう。
だが、だからといってそれを仕方ない、で終わらせる訳にはいかない。
私は迫力を持たせる3D独特の映像表現として、空間の利用を提案した。
私達3人が3D技術を活かして空中を縦横無尽に動き回ることで、独特の迫力を持たせる。
3Dであれば、わざわざ地面にしがみついてライブする道理などないのだ!
「この演出……まずいわね」
ルナは萩原、古本と共にモニターを眺めながら、そう零した。
萩原はすかさずその言葉に反応する。
「ルナさん、どういうことですか?」
「3Dライブである以上、実物とはやはりライブ感──つまり迫力が欠けてしまう、そこでどうにか迫力を持たせようと試行錯誤して、立体空間の利用を思いついたのでしょう」
なるほど、と萩原は言葉を返す。
また、その一連の会話を聞いた古本は、無言のまますごく心配そうな顔をする。
ルナは至って真剣な顔つきで、再び口を開いた。
「立体空間の利用は私も考えたことはありましたが、実行に移すには至りませんでした。それは統一性が無いからです」
「統一性ですか……ふむ」
萩原は何かを考えるような素振りを見せる。
「えぇ、ユニットはあくまで集団パフォーマンス。それぞれの歌やダンスが綺麗に揃うことで初めて観客に感銘を与えることが出来ます。が……」
「立体空間を取り入れてしまうと、その統一性が失われてしまう、と」
「その通りです。ライブステージ──いわゆる平行空間が立体空間に拡大されると、勿論迫力は増しますが、そのぶん乱雑性も増加します。
アイデア自体は良いですが、人間の視野には限りがあります。その結果、観客にとって見るべき場所が肥大し、視点が上手く揃わずバラけてしまう。
こうなれば、もうそれをパフォーマンスとは呼べません」
ルナはモニターを凝視しながら、少しニヤついた顔で続けて言い放った。
「このライブ、直に崩れるでしょうね」
***
第百二十三話読了ありがとうございます!
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