#122.恩返しは投げキッスで
「それじゃあすぴすぴ、1曲目行こうか〜」
きういさんのその言葉で歓声は自然と静まり、スタジオも心なしか暗くなる。
1曲目の出だしは私に一任されているから、責任は重大だ。
もう一度深く深呼吸する。
8月24日、午後9時。
「……すぅー……はぁー」
私の細かな呼吸音が、電波に乗って会場に響く。
目に入る、赤と白が混ざり合った、ペンライトの光。
期待のこもった沈黙。
次元の壁を越えて私とリスナーを繋ぐ、電脳世界の少女。
緊張する。けど、もう大丈夫。
コメント
:お!?
:来るかぁ!?
:なんか髪色変化してね!?
:来るぞぉ!!
:すぴすぴ……髪が……!!
:白っぽくなってる!?
:バグ? 演出? どっち!?
:めっちゃ綺麗
私の赤髪は、ゆっくりと橙、黄色、白、と順に変わって、青白く光り出す。
私はライバース5期生、アイドルVTuberの火火 すぴか。
皆の光になる、正真正銘最高のアイドル。
そして、今から歌うこの曲は。
私を救ってくれたあられさんへの。
私を育ててくれた父への。
私を導いてくれた母への。
私に希望を与えてくれたスピカへの。
そして、こんな私を今日まで応援してくれた、画面の前の君への。
恩返しだ!
「好き に な っ て! もっと! 私 を 見 て! もっと!」
コメント
:うおぉぉぉぉ!!!!
:マジかぁ!!!!
:1曲目これマジ!?
:うおぉぉぉぉ泣泣泣泣
:これは泣く!!!
:ガチィ!?
:うおおおお!!!!!!
:神選曲だろ!!
:泣いてもうてます!!
:鳥肌えぐい!
「恩返し は 愛の こもっ た 投げ キッス で ! ……chu♡」
コメント
:きぃやああぁぁぁぁぁぁ!!!!!!
:うがあぁぁぁぁぁぁぁ!!!!
:おおぉぉぉあぉぉぉぉお!!!!!
:泣泣泣泣泣泣泣泣泣泣泣泣泣
:うぐはぁっ!!!
:号泣
:投げキッスの破壊力えぐい!!!!
:かわいいいいいぃぃぃ!!!
:泣泣泣
よし、すぴかは順調に歌えている。
挨拶の途中、一時はどうなるのかと冷や冷やしたが、今は練習通り……いや、練習以上に実力を発揮出来ている。
彼女の今の姿は、観衆を笑顔にさせる紛うことなきアイドルだ。
一方、きうい姉のダンスもしっかりとキレがあって、調子づいているのが分かる。
これで、舞台は整った。
後はここから、どれだけ私がこのステージを支配出来るか、にかかっている。
ふふ……面白くなってきた……!!!
***
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