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#111.全てが分かる

 

 ライブフェス開催まであと1週間。

 この状況でのメンバーの逃亡は、非常にまずいことであった。


 タイムテーブルは既に公式サイトでアップされており、24日の最終演目の欄に、すぴかの名前も記載されている。

 それに加えて、私達のダンスの動きや歌のパートも、全てすぴかが居る前提で考えられたものだ。


 もし、このまますぴかが練習に来ず本番にまで至ったとしたら、私ときうい姉は噛み合わない最悪のパフォーマンスでファンを絶望させて、自分達の株を下げたまま演目を終えることになるだろう。


 ライブがある24日の4日前、8月20日14時の練習まですぴかが姿を現さなかったなら、すぴかの出演を取り消す。


 これが、マネージャーづてに伝えられたコーチからの伝言の要約だ。


 コーチは、すぴかの出演が取り消された後、ダンスと歌のパートを修正して本番に臨む姿勢だが、そんな急拵えのパフォーマンスで投票1位を取れるとは思えない。


 それに、私が構築している"導線"を取り入れたライブ中の演出も、3人を想定して制作している。時間的にも、今更演出をもう一度作り直すなんて事は出来ないため、もし急拵えのパフォーマンスが奇跡的にウケたとしても、ズレズレの演出でおしまいだ。


 つまり、残された猶予は3日間。


 3日以内にすぴかを呼び戻すことが出来なければ……私の勝機はなくなるだろう。

 ならば、私がする行動はただ一つ。


 すぴかを連れ戻す……!!


 私は"数日の間配信を休む"という旨をSNSでリスナーに報告して、自室で1人PCに体を向けた。


「ここからは……"天才"の見せ所よ!!!」





「あられちゃあーん、遊びに来たよぉ〜……お?」


 ガチャっと扉が開く音。

 私はPCから目線を外さないまま、一応ペコっとお辞儀をして小さく口を開く。


「……お疲れ様です」


「えぇ!? どうしたのそのクマ!?」


「え……クマですか……?」


 パッとPCのデジタル時計に目をやると、時刻は18時26分を指していた。


 あぁ、もう3時間も経過していたのか。集中しすぎで気がつかなかった。


「少し集中していて……猶予はあと3日ですから、少し焦ってました」


「え? 3日? ……あと2日じゃなくて?」


「え?」


「えぇ?」


 私は自然ときうい姉の方に向いた顔を、もう一度PCのデジタル時計に戻す。


 ……えーと日付は……8月18日……


 あー、つまり、集中しすぎて27時間作業していたらしい……あはは……笑えない……


「えひっ……うぐふふふふぅ……」


「うわぉ笑い方がヤバいねぇ……大丈夫……?」


「……ハイ、心配いりません。もうすぐ()()()ので……うぐふふっ」


「へ、へぇ……じ、じゃあ私はお邪魔みたいだからもうお暇するねぇ〜……頑張ってぇ〜」


 ……あの人、何しに来たんだろう。


私がもう一度PCから視線を外すと……机の上にエナジードリンクが数本置かれていた。


……敵とか言ってるけど、やっぱり優しいんだよなぁ。


私は少し口元を緩ませながら、キンキンに冷えたエナジードリンクを喉に流し込んだ。


 きうい姉が去った後、絶えずPCを睨み続けて早8時間……待ちに待ったその時がようやく訪れる。


 ……わかった……!!


 深夜2時。

 私は一人椅子から飛び上がると、無音の雄叫びを響かせた。


 と、立ち上がった途端足の力が抜けて再び椅子に着地してしまう。


「ちょっと、こん詰めすぎたかな」


 PCの画面に映る数多の"すぴか"と"スピカ"の文字を眺めながら、痙攣する足腰に苦笑いする。


 ……全て分かった。


 すぴかの雑談配信の情報から名前も知らない新生地下アイドルの情報まで、様々な情報を調べてはこの頭にインプットして可能性を類推。そして、そこから炙り出された的確な"欲しい情報"を再び調べ、インプットして類推……


 その結果、私は今、すぴかの生い立ちも、過去も、今ぶつかっている壁も、そしてそれを乗り越える為の解決策も、全て分かってしまった。


 後は、その解決策を実行に移すだけだ。

 私は震えた腕で、近くのテーブルに置かれたDVDを手に取る。


 その表紙には、伝説の地下アイドルグループ"ウォルフ・ライエ"のリーダー──"星野 スピカ"が笑顔でピースしている姿が映されていた。


……配信の収益を全ブッパして購入した甲斐があった。


 そう、このアイドル"星野 スピカ"こそ、VTuber"火火(ピカ) すぴか"の隠された秘密に最も関係する人物である。



 ウォルフ・ライエのメンバー、星野 スピカは……恐らく、VTuber火火(ピカ) すぴかの母親だ。


 そして彼女は──




 十年前に()()()()()


 現在の登録者数:496,316人(14,728人up⤴︎︎︎)


***

第 1 1 1 話読了ありがとうございます!


・面白いっっっ!!

・はやく続き読みてぇぇぇ!!


と感じましたら、良ければブックマーク登録、感想、評価★★★★★よろしくお願いします!!

面白くなければ、★☆☆☆☆でも構いません!!


また、特にお気に入りのエピソードに《いいね》して頂けると、分析時や今後の方針を決める時にとても助かります!!


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