#108.その笑顔は夕陽よりも眩しく
「……今日は……ありがとうございました……あられさん」
「いえいえー! あられもたのしかったです!」
私達は、こちらに届く前に空間に溶けていく紅の斜陽を見つめながら、公園のベンチで黄昏ていた。
少し予想だにしないハプニングもあったが、振り返ってみると今日得たものはかなり大きい。
まず、すぴかとの信頼関係。
今日一日、私の背中に絶えずくっついていたそのお陰か、彼女は私という存在にすっかり慣れたようで、今朝は目も合わせてくれないほどであったのに、今では"私のことをジロジロ見て、どうかしたの?"と投げかけるような表情で首を傾げるまでになった。
そして2つ目、すぴかの根本。
あまり具体的なことはまだ分からないものの、すぴかがアイドルに対して過剰な憧れを持ち、そしてそれにより自信を喪失していることが分かった。
原因が分かったことにより、すぴかのあまりにもな陰キャ体質を少しでも改善出来るような策を講じることが出来るようになった。
そして3つ目、ライブの秘策。
ウォルフ・ライエのライブシーンで掴んだ、導線とファンサ。
これらの3次元の技術をどう2次元に落とし込むか、という難題はあるが、それさえ乗り越えられればライブクオリティの急激な向上が見込める。
解決しなければいけない問いは全て見つかった。後は、これの解法をひたすらに考えるだけだ。
「……ふふ……なんだか嬉しそうですね」
「えっ!? あ、あはは、ちょっとやる気がみなぎってきたというか……」
私は無意識に出ていたにやけ面を慌てて戻す。
「……私、カメラを前にすると、足がガクガクして動けなくなるんです」
……今日の、取材の時のことだろうか。
「……VTuberとして出演する時は……まだ大丈夫なんですけど……いつからこんなんになっちゃったんでしょうね……昔は、ビデオカメラの前でアイドルの真似っ子とかしてたんですけど……」
「……だれだってかわっていくものですよ! あられも、むかしは良くできる子だって褒められてましたもん!」
嘘はついていない。嘘は。
「……あられさんは良くできる子です……今日も、あられさんに頼ってばかりで……多分私一人だと、入場特典選ぶとこでもうダメになってます……」
それ、かなり序盤では?
「……だから、今日はありがとうございました……あられさんのお陰で、とっても楽しめました!」
うぉっ……美少女の笑顔……眩しい!
ニコっと笑うすぴかに、私は思わず目を細める。
……すぴかの笑顔……何気に初めて見たかも……
「こちらこそ、ありがとうございました! あしたもれんしゅう、がんばりましょーっ!!」
「……はいっ!」
この時は、全てが上手くいく気がすると、確かにそう思えたのだ。
だが。
ライバースサマーライブフェス開催まであと1週間。
8月17日。
突如、すぴかがライバースに来なくなった。
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