#106.ジャーナリストは非道である
私は非道のジャーナリスト、桝 古見夜28歳。マスコミを愛し、マスコミに愛された女。
この世に生を受けて間もない頃、私はニュース番組に映る人気俳優の不倫騒動の報道を見てこう思った。
うゅおいっ……!! えううあいーをあんいうぅ!!! (しゅごいっ……!! エクスタシーを感じるぅ!!!)
それから私は生粋のジャーナリストに憧れた。中高時は新聞部に所属して体育教師の熱愛疑惑や模試カンニング事件など、数々のネタを華麗に細工して報道し絶大な支持を受け、こうして一端のジャーナリストになってからは、世の中の闇という闇を暴き散らかし続けた。
数々の炎上騒動をいち早く取材し躊躇無く報道することで、いつしか非道のジャーナリストと呼ばれた私だったが、3年前、業界全体から反感を買ってしまい、つい最近まで干されていたのだ。
干された後も、私はジャーナリストとしてもう一度花を咲かせる為、日夜努力を続けてきた。
そして今日は遂に数年ぶりの地上波! 昼下がりの超人気番組"ヒクツナンデス"の生中継を任されている!!
さぁ、ここで爪痕を遺して、華々しい復帰をなしとげるのだ!!!
……ん? あれは……SSSランク超絶美少女×2!!!
ジャーナリストにとって、美男美女は格好の獲物!! 私の長年の勘から、美男美女を10秒映すごとに視聴率が0.5%ずつ上がっていく!!(統計はない)
視聴率が上がれば、私の結果が奮ったと見なされて、再び地上波レギュラーを掴むことが出来るかも……これはまたとないチャンスよ!!!
絶対に取材してやるわ!! たとえ無理やりにでも!!!!
……という熱い視線を感じるのだが……どうしたものか。
私は取材陣を横目に頭を悩ませる。
VTuberたるもの、外出する時は身バレの危機管理を常に行わなければならない。声でバレる可能性があるので気軽に話せないし、"活動名を呼ぶ"などのふとした失言にも気をつけなければいけない。
普段からそんな調子であるのに、テレビ? 地上波? 言語道断!! NGに決まっている!
画面の隅にちょいと映るだけならまだしも、インタビューやらで声を流されたら身バレ必至である。
普通はテレビの取材というものは、あらかじめ許可を得た人のみにインタビューを行うし、その後もテレビに映していいか確認してくれる。希望すれば顔にモザイクを入れたり、音声を加工することもできる。
……が、それは収録の話だ。
あの取材の陣形。アナウンサーらしき人の受け答え。ちらりと見えるカンペの内容。
間違いない。これは"生"である。
「それでは、少し来場者に話を聞いてみましょうかー!」
「……えっ! ちょちょっと桝さん! そんな予定ないっスよ!!」
「ぅるっさいわねぇ! プロってのは現場で判断するもんなのよ!! ほら、あれ見てみなさい……」
何やら焦るスタッフと、それを抑えつけるアナウンサーとが、カメラに入らない声でコソコソと話をしている。
……ん? 今、あのスタッフと目があったような……!?
そう思ったのも束の間、彼女達は足早にこちらの方に向かってくる。
さっき、来場者に話を聞く、と言っていた。ここにいるのは私達二人だけ……つまり、そういうことだ。
いきなりインタビューしてくるような性悪メディアなんて冗談じゃない。すぐに逃げよ……ん?
私はその場を離れようと立ち上がろうとするが、その瞬間にお腹周りをガシッと掴まれて身動きが取れなくなる。
斜め下に目を向けると、すぴかが私の太ももに抱きついているのが分かった。
「ちょ、ちょっと! すぴかさん!?」
「……うぅああられさぁんっ! ……足が痺れて動けないよぉ……!!」
「えぇっ!?」
そういうのって正座とかでなるものじゃないの!?
そうしている間にも取材陣はドタドタと距離を縮めてくる。
くっ! これはホントにまずいのでは──
「すみません、少しお時間よろしいですかね?」
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