#10.悲鳴は無慈悲に轟く
「えぇ!! あまちゃんまで!?」
チカの驚く顔など見る余裕もなく、私は太ももに突っ伏して丸くなる。
……何この感情っ!?
想定と違う! 確かに、私とは全く別物のキャラクターであるし、別にやらかしている訳でも無い。むしろ完璧……なはずなのに……!
この演技を私がやっていると思うだけで羞恥心と憤怒の心が……!
デビュー前、参考にと他のぽんこつ系VTuberを見た時は腹立たしさなど感じす、むしろ可愛いとさえ思ったし、これは人気が出ると感心もしたものだ。それゆえ私もその手法で挑戦しているわけなのだから。
しかし、それを自分がやっているとなると話は別!
たとえ演技であろうが計画であろうが声を作っていようが、これを私が行っている事実は変わらないしその事実を除外することなど出来ない!
つまり、とてつもないほど恥ずかしい!!
一体何なのよコイツは!!
初配信という大切な時に何重にもミスを重ねやがって!
にもかかわらず悪びれもせず応援よろしくお願いしましゅ!? ふざけるのも大概にしなさい!
失敗したら次の瞬間には分析・対策・実行!
そんなことも出来ないなんて、何て非常識な人間なのかしらっ! もう引退しなさい! てか○ね! ○ねぇーーっ!!!
……ふぅ、落ち着かねば。
たとえ演技であっても十二分に共感性羞恥を感じることは理解した。であれば、次に考えるのはWHYではなくHOW! チカをどうやって誤魔化すかだ。
チカは相当のVTuberオタク、なら初配信を振り返ることがVTuberにとってどれだけの事か無論知っているはずだ。ならば、折角納得させることが出来た"私≠甘姫あられ"も、現在の私の反応に勘づいて"私=甘姫あられ"に逆戻りする可能性が高い。
さあ、どうやって切り抜けよう。
「あまちゃん……その悲鳴ってもしかして……」
ぐぅ、来てしまった悪魔の質問が。
どうにか誤魔化せる言い訳はないだろうか。頭を回せ、頭を回すのだ私!
「もしかして……あまちゃんもあられちゃんの可愛さにヤられちゃった〜?」
…………
「アー、ウン……アラレチャン、カワイスギルー……!」
……誤魔化せたか……? それとも罠……?
「……だよねーっ! あられちゃん可愛すぎるよーっ!!」
誤魔化せたようだ。チカは目をキラキラさせて嬉しそうに手をブンブン振っている。
新発見があった。オタクは布教の成功に凄く喜ぶようだ。
まあ何はともあれ助かったようだ。と言ってもかなり危ない状況であった為、チカの無自覚助け舟で首の皮一枚繋がったものの、それが無ければ最悪の結果になっていたことだろう。
チカのことだから私が甘姫あられと分かっても秘密にしてはくれるだろうが、不安の種はまかないに越したことはない。
さて、取り敢えずは一安心──
「じゃあ! 初配信以外も色々見てみよっかー!」
「え?」
「ギャアアアアアアアアアアアア!!!!!!!」
「きゃあああああああああああああ♡♡♡♡♡♡」
結局、夕暮れまで二人の悲鳴が響き続けることとなった。
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