#94.リア友は数字になる
…
「……こ、こんばンワー……Vオタ一筋15年、"ぽんこつ"系ブイチューバー甘姫 あられ──の友達! のチカデースゥー……」
コメント
:わぁー……?
:ん?
:だれだ?w
:友達って言った?
:リア友?w
:ガチ友達草
:想像の遙か斜め上で草
盛り上がるコメント欄とは裏腹に、私とユリはしんと静まり返る。
一瞬頭の整理を行う時間があってから、ユリはもの凄い勢いでこちらに顔を向けた。私も少し遅れて彼女の方を見る。
「……え?」
目が点になったユリが震えながらに零した一言は、とてもシンプルなものだった。
そして、それにつられて電話越しのチカも。
「エ?」
と素っ頓狂な声を出す。
……あぁ、今度は私の番か。
私は空気をスゥーッと肺に送り込むと、1泊おいてから大きく口を開いて喉を震わせた。
「ええええええぇぇぇぇぇ!?!?!?」
コメント
:!?
:草
:草
:なにごと!?
:大絶叫で草
:やると思ったわw
:草
:こ ま く や ぶ れ た
:ビックリしたぁ!!
:あれ? 音消えた?
:何も聞こえないが……
ユリとのコラボ雑談で、スペシャルゲストにチカ……? この状況、一体誰が絵を描いているというのだ…………はい、勿論、私である。
リア友。
それは、VTuberのバーチャルとリアルを繋ぐ架け橋のような存在。
普段、画面の中で活動しているVTuber。たとえ、VTuberの売りが"視聴者との距離の近さ"だとしても、やはり2次元と3次元の壁により、ある一定の距離は取り払うことが出来ない。
電脳世界で笑う彼女は、実際どのような姿をしているのだろうか。画面の中で語る彼は、現実でどのような生活をしているのだろうか。
普段の彼彼女が見せることのない、仮想世界の住人の現実、それらを知りたいという渇望は、VTuberを好きになった者に必ず生まれる必然の欲求だ。
そして、その必然的欲求を一時的に満たしてくれる存在のひとつが、リア友なのである。リア友は、普段の活動で死角となっているプライベートの情報を惜しみなく語ってくれる。よって、リア友はVTuber界で高い需要を持っているのだ。
というわけで、チカを配信に出してみた次第である。
一応筋書きとしては──
「ざえちゃんにおくるはずだったメッセージ、チカちゃんに送っちゃってたぁー!!!!」
である。
ちなみに、これを私が仕組んだこととは、ユリは勿論、チカにも教えていない。
視聴者を騙すにはまず配信者から。これ重要。
焦る2人を見物して一通り愉悦に浸り終えると、私は元気いっぱいに声を上げる。
「ぃよしっ! なにはともあれ、ねおちざつだんはじめよぉーー!!!」
「え!? あられちゃんほんとに!? お友達ちゃんもイイの!?」
「……は、はい、一応心の準備は出来てたのでぇー……」
コメント
:おぉーーーー!!!
:うおおぉぉぉお!!!!
:いぇーーーい!!
:神回きちゃああああああ!!!!!
:こんなポン、今までのに比べればどうってことないねっ!!
:歴戦のポンコツ……
:まるで成長しない……
というわけで、意気揚々と始まったこの配信だが……
「うーん、むにゃむにゃ……」
配信開始から17分23秒、チカ就寝。
現在の登録者数:382,102人(208人up⤴︎︎︎)
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第九十四話読了ありがとうございます!
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