#90.彼女は不敵な笑みを浮かべる
私の衝撃のカミングアウトに、辺りはしんと静まり返った。チラッときうい姉の顔を見てみると、何故か驚いたような顔をしている。
あんたが告白しろって言ったんでしょ!!
とツッコミたくなるが、この静寂の圧によりそれが声に出ることはなかった。
そのまま、沈黙が続く。
……誰か、何か言って……!
その空気に耐えきれずそう私が願ってから数秒後、ようやくコーチとすぴかの口が開いた。が、その反応は予想だにしないものであった。
「あっははっ! 何を言うのかと思ったらどういう冗談なの?」
「ふふ……へへ……」
コーチの豪快な笑いと、すぴかの陰気な笑いに、私は思わず目が点になる。
なるほどそうか……普通はこうなるのか。
私の電脳世界でのぽんこつと現実世界での天才は、両極端に位置するものだ。この幅を私が行き来しているというのは、客観的にはにわかに信じ難いことなのだろう。
「あ、あはは……」
私は、きうい姉の一安心したような顔を見ながら、苦笑いする他なかった。
「どういうつもりですか!?」
合同練習が終わった後、私は2人きりになったタイミングですかさず彼女を責め立てる。
「きういさん! あんなこと言って、私の秘密がバレたらどうしてたんですか!」
「どうしてたも何も、自分から告白してたじゃん」
「その告白を聞いて、一番驚いた顔をしていたのはきういさんですけどね」
彼女は、痛い所を突かれた、といった感じでポリポリと頭を搔く。
私の真剣な目に恐れを成したのか、きうい姉は1つため息を着くと……彼女は私と目を合わせたまま……何もしなかった。
そう、目に見てる行動としては、何もしなかったのだ。が、私は彼女から突如放たれたその脅威を感じ取る。
それは、何者でもない私に向けられた、強烈な威圧感のようなもの。
きうい姉から全方向に分散して放たれていたそれらが全て凝縮して、私にぶつけられているかのような圧力。
これを1つの言葉で表すとしたら……むき出しの"敵意"。
「あられちゃんさぁ、いつまであまっちょろいこと言ってんの〜? 私達が初めて会った時は、そうじゃなかったよね?」
彼女はいつもとは少し異なる、奇妙な口調で言葉を紡ぐ。
「君のライバースに来てからの態度は、とても緊張感が感じられない。君、ライバースが腑抜けた場所だと思ってるんでしょ?
私はさぁ、ライバースが仲良しごっこの甘々お子ちゃまグループだなんて、微塵も思ってないんだよねぇ。というか、そういう風に君に軽んじられてることは、心底腹が立つなぁ」
私は眉をピクりと動かす。
配信中では一生使わないような直接的な言い回し……これで、私を挑発しているつもりなのだろうか。
「ねぇ、あられちゃん。君がいつまでもそんな甘々フルーツタルトちゃんに甘んじてるのならさぁ……」
彼女は鋭く光ったその目つきで私を捉えながら、不敵な笑みを浮かべて言った。
「……じゃあ敵だね?」
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