結婚式《ルーシー(麻由里) side》
◇◆◇◆
────魔王討伐から、早五年。
英雄と呼ばれた私達の人気も徐々に落ち着いてきた頃、朱里とリエートが結婚式を挙げた。
と言っても、身内だけ招待したこじんまりとしたものだが。
でも、二人らしくていいと思う。
小さな礼拝堂で向かい合う二人の男女を眺め、私は心から二人を祝福する。
────若干二名ほど、複雑な表情を浮かべている者が居るが。
ニクスも、レーヴェンもまだ未練ある感じかぁ。
まあ、こればっかりはどうしようもないよね。
未だに浮いた話一つない高スペック男子達を見やり、私は内心肩を竦めた。
『ワンチャン、二人とも一生独身かもね』と考えながら。
さすがに責任感の強いレーヴェンは後継ぎを産むために結婚しそうだが、ニクスは親戚から養子を取るなり何なりして独身を貫きそうだ。
結婚してしまったら、朱里の帰ってくる場所が無くなると思って。
心配せずとも、離婚の可能性はなさそうだが。
『リエートと超ラブラブだもん』と考える中、牧師役の教皇聖下が口を開く。
「では、誓いのキスを」
いよいよ式も終盤に差し掛かり、ある意味一番の見せ場がやってきた。
『げっ……!』と顔を顰めるレーヴェンとニクスを他所に、リエートはベールに手を掛ける。
「と、取るぞ」
「はい」
笑顔で頷く朱里に対し、リエートはかなり緊張している様子。
顔だけじゃなく耳まで真っ赤にしながら、ゆっくりと慎重にベールを上げた。
そして露わになった朱里の顔を見るなり、
「くっ……!可愛すぎる……!」
と、人目も憚らず悶絶する。
でも、誰一人として彼の行動を咎めなかった。
だって、皆気持ちは同じだったから。
マジで超綺麗じゃん、朱里……!
ここ数年で更に大人っぽくなったからか、化粧でちょっと子供っぽくした今の顔はヤバい!
ギャップで心臓をやられる!
女の私でもコレなんだから、男性陣はかなりヤバいだろうな……!
と思いながらニクスやレーヴェンに目を向けると、案の定胸を押さえていた。
さすがにニヤケ顔を晒すような失態はしないが、平静を装うのに必死なのは分かる。
何とか表情を取り繕う彼らの前で、リエートは大きく深呼吸した。
かと思えば、意を決したように顔を近づける。
「愛している」
譫言のように愛の言葉を呟くと、リエートはそっと目を閉じて────朱里にキスした。
それを合図に、どこからともなく拍手と歓声が巻き起こる。
「おめでとう、二人とも!」
私もお祝いの言葉を掛けながら、力いっぱい手を叩いた。
『どうか、二人の未来が幸せで溢れていますように』と願いながら。
私、ヒロインに転生して良かった。
だって、この世界に来てなかったらこんな幸せな結末は見れなかっただろうから。
────そう思えたのは、朱里達のおかげだよ。本当にありがとう、私と出会ってくれて。
『大好き』と心の中で言い、私は喜びに満ちた笑みを浮かべた。
最後までお読みいただき、誠にありがとうございました。
終盤ちょっと駆け足になってしまい、すみません!
魔王討伐のあとに恋愛展開をガッツリ書くのは、蛇足になっちゃうかな?と思って……!
また、魔王討伐の最中にキュン!ドキッ!→恋愛に発展!とはならないよなぁと思い、こうなりました(笑)
さて、余談はこの辺にして本作の裏話や個人的に意識していたことを紹介していこうと思います。
・攻略対象者のイメージ
→ニクス:誰よりも、リディアを理解している
→リエート:誰よりも、リディアを信じている
→レーヴェン:誰よりも、リディアを見ている
・朱里の本質
→どんなものも大切にする優しさと、いざとなったら大切なものを捨てられる強さがある
・魔王ハデスの討伐について
→ぶっちゃけ、当初は普通に殺す(魔王自ら死を望んで……とかではなく、死闘を繰り広げて勝つ)予定だった
・ルーシー(麻由里)の前世
→高校生か大学生で、めちゃくちゃ陰キャ。ただ、共通の趣味を持つヲタ友は居る。
・最終イベント(聖なる杖の受け取り)について
→最初は全然違うイベントにする予定だった。
そのイベントというのが、ドワーフの血を引いている交換留学生にアイテムを作ってもらうというもの。ただ、思ったより長くなりそうだったので別のものにした。ちなみにその時、作ってもらうアイテムはリエートの使う盾。
(聖なる杖は既に回収している体で、話を進める手筈になっていた)
・リズ(リディアの実の母親)について
→イヴェールを襲い、子供まで産んだのは単純に彼のことが好きだったから。というのも、イヴェールにかなり優しく接してもらっていたため。当の本人は妻のために公爵領まで付いてきてくれた侍女だから、親切にしていただけで他意はない。でも、リズはソレを勘違いしてしまった。いや、本当は全部分かっていたけど、それでも好きになってしまった。その結果、暴走したという経緯。
・朱里の恋模様について
→誰とも結ばれないエンドも構想にあった。ただ、そうなるとジャンル詐欺になっちゃうし、あんなにリエートと結ばれそうな雰囲気を醸し出しておいてそれはないだろ!と思うので、当初の予定通り執筆。
でも、何度か『ニクスやレーヴェンが可哀想……』となって、結末を変更するかどうか本気で迷ってました(笑)
本作の裏話は以上になります。
少しでも楽しんで頂けたら、幸いです。
それでは、最後の最後までお読みいただき、ありがとうございました┏○ペコッ




