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告白の返事

◇◆◇◆


 リエート卿と続けざまに四曲ほど踊り、私は休憩のため応接室を訪れた。

グレンジャー公爵家とクライン公爵家の直系だからか、かなりいい部屋で設備も充実している。

侍従も親切で、直ぐにお茶やお菓子を用意してくれた。

『ゆっくりとお寛ぎください』と言い残して退室する彼らを見送り、私はリエート卿に促されるまま腰を下ろす。

すると、彼も向かい側のソファへ腰掛けた。


「はぁ〜!さすがにちょっと疲れたなぁ。ダンス自体は別にどうってことねぇーけど、色んな人にジロジロ見られんのは慣れねぇ」


 『しかも、相手は各国の権力者だし』とボヤき、リエート卿はここぞとばかりに肩の力を抜く。

相当気を張っていたのか、まるで溶けるようにソファへ身を預けた。

すっかりリラックスしている彼を前に、私は居住まいを正す。


「あの、リエート卿。ちょっとお話があるんですが」


「ん?なんだ?」


 天井に向けていた視線をこちらに戻し、リエート卿はコテリと首を傾げた。

疲れていてもちゃんと話を聞こうとしてくれる彼に、私はスッと目を細める。

と同時に、少しばかり表情を引き締めた。


「────告白のお返事をしてもよろしいでしょうか?」


「……えっ?」


 鳩が豆鉄砲を食らったような顔で固まるリエート卿は、完全に呆気に取られている。

瞬きすらせずこちらを凝視する彼の前で、私は『やっぱり、急すぎたかしら?』と後悔した。

が、もう後の祭りである。


「こんな時に言うのも何かと思いましたが、早い方が良いかと思って……ダメでしょうか?」


 『ダメな場合はまた日を改めます』と言うと、リエート卿は勢いよく身を乗り出した。


「いや、全然ダメじゃない!急で驚いたけど、その……ちゃんとアカリの気持ちを知りたいから!」


 真っ直ぐにこちらを見据え、リエート卿は僅かに表情を強ばらせる。

失恋の可能性を考えて、少し不安になっているのだろう。

でも、サンストーンの瞳には期待も滲んでいて……両想いの可能性を強く望んでいるようだった。

ゴクリと喉を鳴らす彼の前で、私はふわりと柔らかい笑みを浮かべる。


「ありがとうございます。そう言っていただけて、とても嬉しいです」


 そう言って少し腰を浮かせると、私は両手でリエート卿の頬を包み込んだ。

途端に赤面する彼を前に、私は


「単刀直入に申し上げますね────私もリエート卿のことが、好きです」


 と、想いを告げた。

彼のことを見習うように、飾らない言葉で真っ直ぐと。


「横に並んで歩いてくれる貴方が、同じ目線に立って物事を考えてくれる貴方が、幸せや苦しみを分け合ってくれる貴方が大好きです。心から、愛しています」


 言葉にする度溢れてくる想いを笑顔に変え、私は精一杯の愛を伝えた。

すると、リエート卿は大きく目を見開き────何かを堪えるように唇を噛み締める。

が、堪え切れなかったようで目に涙を滲ませた。


「俺も……俺も好きだ。愛している」


 一語一語しっかりと発音して返し、リエート卿は私の手に自身の手を重ねる。

と同時に、ギューッと強く握り締める。

まるで、『離さない』とでも言うように。


「両想いとか、夢みてぇ……」


「ふふっ。大袈裟ですわ」


「いや、そんなことねぇーって。だって、ニクスがライバルだったんだぜ?」


 『超不安だった』と零し、リエート卿は手に擦り寄ってきた。

かと思えば、『現実だ……』と呟く。


「ぶっちゃけ俺さ、一生片想いする覚悟だったんだよ。俺はアカリしか有り得ないし……聖騎士だから、無理に恋愛する必要もなかったしな」


 想像よりも大きい愛情を示し、リエート卿はサンストーンの瞳をスッと細めた。


「だから、マジで嬉しい。俺を好きになってくれて、ありがとな」


「こちらこそ」


 『お互い様です』と笑うと、リエート卿はサンストーンの瞳に歓喜を滲ませる。

と同時に、私の手を一度引き離した。

『邪魔だったかな?』と思案する私を他所に、彼はテーブルをグルッと回ってこちらまでやってくる。

そして隣に腰を下ろすと、


「もう堂々と横に居ていいんだよな」


 と、しみじみ呟いた。

『どれだけ、この場所を欲したことか』と語りながら、リエート卿は私の手を持ち上げる。


「アカリ、本当に好きだ。愛している。俺とずっと一緒に居てくれ」


「はい」


 一瞬の躊躇いもなく頷くと、リエート卿は堪らずといった様子で私を抱き締めた。

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