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雄介は大変困惑していた。

地面に頭をこすりつけんばかりにひれ伏した護衛たちに、もう土下座状態の商人が目の前に整列している。

確かに、貴重な薬、いや材料だったが雄介はヤギ先生のところで栽培に成功しているし、なんならまた育てるつもりで種も回収していた。


「いや、あの、ほんとに、頭を上げてください、ほんと、あの、こんな格好でこっちこそすいません、あの、お代とか、結構ですし、材料もほら、たまたま手元にあったってだけの話で、」


「こんな高価な薬を戴いては、私共どうすればよいか」


どうにか分割で支払うという商人と、何と無礼な事を!と恐縮しっぱなしの護衛に雄介は困惑しかない。

押し問答を見ていたイアンが呆れたように間に入る。


「らちが明かん、薬師殿は言い出したら聞かん。商人、この人に服を用意できるか?」


「もちろんです!!」


嬉しそうに顔を上げた商人がすぐに顔を曇らせた。


「しかし、それだけでは・・・・」


「お、僕は十分なのですが・・・」


「はあ、薬師殿は黙って、」


「はい・・・」


「では、こうしよう。」


そう言ってイアンが商人と共に少し離れて行く。

それを複雑そうな顔で雄介が見ていると、ローエンの小さな手がぺち、と雄介の頬を叩いた。

雄介と目が合うとローエンはきゃきゃと声を上げた。

ローエンにつられて笑顔を浮かべた雄介は商人と話しこむ大きな背中を見る。


 任せればいいと思ってしまう。

 あの人はきっと俺たちを悪い用にはしないと思える。


そう長い間一緒だったわけでもないが、イアンの人となりは信用できる。

なにかわかりやすい理由がある訳ではないが確信めいたものが雄介の中にあった。


「ユー、おっきよ」


馬車の扉が少し開くと、そこから顔を出したのは先ほどまで顔色悪く瞳を閉じていた少女だった。

側に残っていた護衛に少女に触ってよいか聞くと馬車に乗り込む。

きょとんと座ったままの少女の前に膝をつくと雄介はローエンを下ろした。


「ごめんね、少し腕を見せてくれるかな?」


頷いた少女に雄介は肘まで袖をめくりあげた。

ごく稀にだが、あざが残る事もあるのだ。

綺麗になった腕に満足そうに頷くと、今度は少女の顔に手をやると下まぶたを捲る。


「ちょっとベーて出来る?」


恥ずかしそうに舌をだした少女の横でローエンもまねをしている。


「うん、綺麗だ。もう大丈夫だよ。」


「あの、」


「うん?」


「お薬ありがとうございます。」


「すごい、あんなに辛かったのに意識があったんだね」


「す、少しだけ、ごめんなさい、お花、知らなかったの」


無意識に少女の頭を撫でた雄介はふっと笑みをこぼした。


「お花、綺麗だもんね。でもね、森の中に咲いてるお花は、毒を持つ物や、中には人を襲うものもあるんだ。だから知ってるお花以外は触っちゃだめだよ?」


「はい」


しっかり頷いた少女に雄介は頷き返すと、馬車を降りる。ローエンを抱き上げると護衛にもう大丈夫だと伝えるとありがとうと雄介の手を取って泣きそうな笑顔を浮かべた。

よく見ると怪我をしている護衛が多い。

雄介は少し考えると護衛たちに営業スマイルを浮かべた。


「みなさん、よく効く傷薬買いません?」


護衛の1人が子守りを引きうけてくれたので、雄介は借りたままの道具でせっせと薬をつくっている。

その様子を興味深そうに眺めている少女に雄介は笑みをこぼした。

次々に出来上がっていく薬に護衛たちも感心しきりだ。

護衛たちは気前よく出来上がった薬を買ってくれる。

雄介はホクホク顔でお礼を言うと苦笑いされる。

なかなかの売り上げに満足げな雄介を呆れ顔で見ているのはイアンだ。

横で薬を買いそびれた商人は悔しそうだ。


「何をしてるんだ薬師殿」


えへ、とわざとらしく小首を傾げた雄介に、イアンは大きな手で顔を隠してしまう。

横で商人が何やら微笑ましそうにしているのに首を傾げつつ雄介はローエンを抱き上げた。

それを見ていた少女が商人に飛びつくとそれを嬉しそうに受け止める。


「この子は妻の忘れ形見でして、本当に何とお礼を言ってよいか、」


涙ぐむ商人に雄介は慌ててポケットをまさぐるがあいにく綺麗なハンカチはない。

困ったように眉を下げた雄介に商人は笑みを浮かべた。


「ほんとうに私は良き出会いをしたようです。」


そういうと商人は大げさなそぶりで片膝をついた。


「私の名はアーブン・ホーフリット、アーブン商会は今後貴方様に降りかかる火の粉を商人らしく商人のやり方で追い払って見せましょう!」


「わ、私も!一緒にお守りします!」


父親の横で頭を下げた少女に雄介は照れたように頭をかいた。









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