22.いざゆかん、イアンのおうち!③
雄介の嬉しそうな顔はついつい一緒に笑みを浮かべてしまう。
つられて笑みを浮かべたアーブンは雄介たちを見送ると早速、薬を売り出すべく従業員を呼び寄せた。
「さてと、ニーナの店はあっちだな」
「イアンさんもお知合いなんですか?」
「まあ、狭い町だ。俺たちの師は町で読み書きを教えていたからな、自然と子供たちのたまり場のようになっていたし、彼女は年も近い。サマンサの妹分だな。」
小さな三人を想像して雄介は楽しそうに笑う。
雄介が笑えばつられたようにローエンも笑うわけで、きゃきゃと楽しそうだ。
この少ない日数ですかっりローエンと抱っこひもが板についた雄介がローエンに顔を近づけるとローエンが楽しそうに手を伸ばす。
「ローエン、抱っこひもは痛くない?」
少し雄介なりに改良を加えた抱っこひもはローエンになかなか好評のようで足をパタパタと動かしては、きゃきゃと声を上げて笑う。
「痛くなさそうだね」
「いーない!」
「そっかそっか痛くないならいいよー」
そんな様子を見守るイアンは珍しく笑みを浮かべている。
「やだ!!イアンが笑ってるわ!!」
店の外で花壇に水をまいていた女性が声を上げる。
その声にイアンの表情が引っ込んだ。
雄介は残念そうにその女性に目をやると口元を押さえた女性は瞳を輝かせながら雄介に寄ってくる。
「あらあらあら!もしかしてあなたがユースケ?薬師様ね!私ニーナ!嫌だ!ほんとにかわいらしい人ね!!あなたがローエンね!あなたもかわいい!洋服でしょ?さあ入って!うちは人用から獣人用までなんでもそろうわよ!なんせうちの旦那様は人狼だからね!何してるのよイアン!早くドアを開けて!」
無言でドアを開けたイアンの表情筋が一瞬で死んでいる。
雄介は背中をニーナに押されるままに店の中に足を踏み入れた。
柔らかな優しい香りがする。
木製のハンガーラックにつるされた子供服、丁寧に畳まれた肌着の棚、小さな靴やおくるみ、子供用の食器や人形まである。
どれも優しい色合いで染められている。
「子供用品ならうちに任せて!」
「素敵ですね!わあどうしよう!迷うなぁ」
嬉しい悲鳴を上げた雄介に満足げなニーナは胸を張る。
雄介の様子にローエンも興味津津だ。
抱っこひもを解いて降ろすとローエンはちょこちょこと歩き出す。
「待って薬師様!ちょっとその紐見せて」
「え?ああ、どうぞ」
雄介から抱っこ紐を受け取るとニーナはしげしげとそれを見つめている。
「これ、良いわね。赤ちゃんには向かないけど、首の座った子ならただの紐で支えるよりずっと子供に負担が少ないわ!どーして考え付かなかったのかしら!!素敵!薬師様これぜひうちでも作らせてくれないかしら!」
雄介はびっくりしたように頷く。
「そうときまれば、早速ギルドに登録しましょう!」
この世界には、特許のような制度があるのを雄介も最近知ったばかりだ。
「素人が適当に作ったものですし、むしろこちらで改良してもらった物を登録した方が」
「何言ってるのよ!そんなのダメよ!」
「ニーナその辺にしといてくれ、その話は後日にしよう。とりあえず必要な物をそろえないと。ローエンはほしい物が決ったみたいだぞ」
「ユー!こえ!かーいいね!」
ローエンが握りしめているのは黄色い色合いのサロペットだ。
「ほんとだ可愛いね!ローエンに似合うよ」
ふふん!と言わんばかりに胸を張るローエンに雄介は満面の笑みを浮かべて近寄っていく。
少し大きめなので裾を折って使う事になりそうだが生地もしっかりしていて肌触りもいい。
一着目はこれで決まりだ。
「ローエン、他にはどんなものがいい?」
「うーん?」
一丁前に悩むローエンに雄介は楽しそうに笑う。
これから寒くなる事も考えて、二着目はセーター。
肌着は雄介が選んだが、洋服はほとんどローエン自信が選んだ。
靴や帽子も一緒に買う。
毛糸玉をついでに何個か購入して、後日商業ギルドに一緒に行く約束をする。
「何か作るの?」
「マフラーくらいなら作れるので」
「あら、素敵!出来たら見せに来てね!」
賑やかなニーナの店を出ると、イアンが深い深いため息をついた。
そんな様子に雄介は苦笑い、ローエンは首を傾げた。
「楽しい方でしたね」
「あれを楽しいと言えるのは薬師殿とサマンサ、ああ、あとはアレックスだな」
「アレックス?もしかして旦那様ですか?」
「そうだ、無口を通り越してほぼしゃべらん。いったい何がどうなって夫婦になったのか誰にもわからん」
「ふふ、ちょっとあってみたいですね。」
「そのうち会えるさ」
「はい」
「大荷物になったな、家に置いてくるか」
イアンの言葉に雄介は嬉しそうに返事を返す。
少しずつ荷物を運びながら、引越の準備は順調に進んでいった。
少しお久しぶりです。




