21.いざゆかん、イアンのおうち②
しゅんとしてバックに薬をしまう雄介にオーエンリッヒは目を怒らせる。
「自重という言葉をしらんのか!」
まったく、とぷりぷりしているオーエンリッヒに雄介はそっと目をそらす。
「あーあれだ、それで何の話で盛り上がってたんだ。」
カロンが困ったように話題を変える。
今度はイアンが不満げな表情を浮かべて、カロンがおや?っと眉を上げた。
「なんだよ兄さん。」
「いや、家の話をしてたんだ。」
「おお、あそこに落ち着く気になった?」
「ああ、薬師殿も一緒に来てくれる事になったからな。」
「えええええ!!!い!いつのまに!?」
「そうなんです。イアンさんがお部屋を貸してくれると言う事になりまして、いつまでもこちらにお世話になる訳にも行きませんし、仕事も決ってない状態でローエンと二人は何かと大変だろうって気遣っていただきまして」
サマンサとカロンが顔を見合わせる。
同棲×
同居○
雄介の頭には同棲という文字は浮かばなかったらしい。
サマンサとカロンの何とも形容しがたい視線がイアンを射抜く。
「こっちは、いつまでだっていてくれていいんだけどねぇ。確かにローエンの事を考えるとひととこに居を据えるのは賛成だね」
「ついでに兄さんも落ち着いてくれたらなおいいね!」
「そっか、イアンさんは冒険者だから色んな町に行くこともあるんですよね?」
「いや、せっかくだ。ここでやってくさ。」
「そうしてくれ、これで町出身の人間の訃報が届くたびにびくびくしないで済む。」
カロンの呟くような声にイアンははっと顔を上げた。
そうか、呟いて目を伏せたイアンにサマンサの柔らかな視線が向けられる。
「まあ、心配するのはこっちの勝手さね。」
ふふ、と嬉しそうな雄介にオーエンリッヒはそっと雄介の頭を撫でた。
ひどい子供扱いだが、存外雄介はオーエンリッヒの子供扱いを気に入っている。
「僕は家族との縁が薄いから、みなさんを見てるとちょっとうらやましくて、楽しくなります。」
オーエンリッヒを見上げた雄介が嬉しそうに笑う。
「口うるさいおじいちゃんが居てくれるのでさみしくはなかったですけどね。」
「口うるさくはないじゃろう?お前さんがやらかすから怒られてるだけで」
「「「・・・・・・ああ、目に浮かぶ」」」
三人のつぶやきに雄介がショック!と言わんばかりに目を見開く。
にっこり笑ったサマンサが話題を戻す。
「それで?先生も一緒についてくの?」
「うむ、せっかくじゃし薬草の事もきになるしの」
「今日移るって話じゃないんでしょう?足りないものだって買い足さなきゃ」
「昨日のうちにある程度は揃えた。今日はローエンの服を見に行く。」
「義兄さん、相変わらず思いついたらすぐだねぇ。子供服ならニーナのところがお勧めだよ!」
「あそこか、アーブンのところも寄っていくか。」
「わしもついてくかの」
「何言ってんの先生はしばらくギルドに通わなきゃなんでしょ?」
そうだったと肩を落とすオーエンリッヒは自分の名前が出て顔を上げていたローエンに笑顔を向けられてすぐに気分を上昇させている。
「ばいばい!」
良い笑顔でローエンに手を振られて、また肩を落とした。
そんなオーエンリッヒを見送って雄介たちも立ち上がる。
「ごちそうさまでした。今日も美味しかったです!」
「おーよ!気いつけて行ってこいよ!」
「行ってきます!」
抱っこされたローエンが上機嫌に手を振っている。
イアンが開けてくれた扉をくぐって外に出ると町はすでに賑わっていた。
大きな通りに出ると、行き来する人も増える。
歩きたがるローエンを何とかなだめて、雄介たちはアーブン商会を目指す。
大きな荷物を持つ人、親に手を引かれてはしゃいでいる子供、軒先に置いてある椅子に座って話し込む老人。
人の顔が明るい、それが雄介には嬉しい。
「改めて良い町ですね」
「そうか」
言葉少なに頷くイアンからなんとなく嬉しそうな雰囲気を感じて雄介も嬉しくなる。
ローエンが楽しそうに雄介の服をひっぱってあれは?それは?と聞いてくるのも嬉しい。
アーブン商会への道のりはあっという間だった。
昨日よりも賑わっているアーブン商会の入口に見知った顔を見つけて雄介とローエンが手を上げると、向こうも手を上げてこたえてくれる。
「薬師様!おはようございます!」
「おはようございます。腰の調子はどうですか?」
「いやー、あのシップと言うのは良いですね!絶好調です!」
「ずっと貼ってるのは駄目ですからね」
「はい!用法容量は厳守!ですね」
「はい、なら結構です。」
そんな話をしているとマックが顔を覗かせた。
「おや、どうしたんです?」
「おはようございます」
中に案内されて昨日の部屋で待つ事数分でアーブンが現れた。
一緒に来たリタがローエンと手をつないで部屋を出るのを見送ると雄介は早速薬を取り出した。
「いやはや、薬師様の魔力は尽きないのですか?」
並べられた薬の量にアーブンが呆然とする。
「一回に放出出来る量は少ないんですけど、魔力量は多い方だそうですよ。」
他人事のように返す雄介にアーブンは苦笑いだ。
「して、この薬はどんな効能が?」
雄介が楽しそうに薬の説明をするのをアーブンが目を輝かせて聞いている。
案外この二人の相性はいいのだろうな、とイアンは若干呆れ顔だ。
薬につける説明書、文字の読めない者用に従業員への説明などやる事は多いのですぐには出せないが、助かる者は多いだろうとアーブンが言う。
雄介はその言葉に破顔した。




