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20.いざゆかん、イアンのおうち






「おはようございます」


昨日と同じに、ローエンにおこされた雄介が食卓に着いたのは一番最後だった。

オーエンリッヒもイアンもすでに食事を始めており、雄介は二人の座るカウンターに座る。

用意されていた子供用の椅子にローエンを座らせると早速ローエンはフォークとスプーンを手にっとてご機嫌だ。


「そういえばいつ移る?」


パンを食べ終えて満足したように一息ついたイアンが、ふと雄介に尋ねる。

昨日の欠損部位回復薬騒ぎですっかり忘れていた雄介ははっとした。


「何の話じゃ?」


ローエンにちょっかいを出して少し嫌がられているオーエンリッヒがひょいっと雄介を覗きこむように体を向けてくる。


「ずっとここにお世話になる訳にもいかないどうしようかと思ってたら、イアンさんが部屋を貸してくれる事になったんです。すごい、素敵なおうちなんですよ!」


「ほう、家のう、そういうのは一旦わしに言ってもらわんと。」


「どうしてあなたの許可が要るんですか」


呆れたようなイアンにオーエンリッヒが胸を張る。

横では面白がってローエンがまねをしている。


「なぜってお前さん、雄介の保護者はわしじゃし、この子目を離すとあんなんじゃからね」


「・・・・・え、待って、どんなん?」


胸をそらしてドヤ顔のローエンの口元を拭いながら、雄介はオーエンリッヒに問いかけるも、二人は睨みあっていて返事は返ってこない。

若干むっとした雄介は、仕方なく自分の食事を再開した。

出来たら早々に移りたい。

昨日のうちにある程度いる物はそろっているし、とってきた薬草を育てる準備もしたい。


「あー!ローエンの洋服!もう少し増やしとくつもりだったのに!忘れた!」


「・・・・ゆっくり見に行けばいいさ。」


オーエンリッヒと話しこんでいたイアンが苦笑いで答える。


「そうですね、また案内お願いできますか?」


「もちろんだ」


にこにこと楽しそうな雄介に不満げなオーエンリッヒがため息をつく。


「まあ、わしも長居出来んし味方は多いに限るかの。」


目の前の食事の最後の一口を行儀悪く放り込んだオーエンリッヒはよっこらせと言いつつ立ち上がる。


「ヤギ先生もう帰るんですか?」


少し不安そうな雄介にオーエンリッヒは優しげな笑みを浮かべるとそっと頭を撫でる。


「あと一カ月はおるよ」


「ほんとですか!?」


やったと嬉しそうな雄介の反対側でイアンが顔をしかめる。


「家に移るならわしも用意せんと。いやー、宿暮らしは何かと金がかかるからのう。」


ふぉふぉふぉと笑うオーエンリッヒに雄介はやったと声を上げた後、ハッとしてイアンを振り返る。

とっさに顔を取り繕ったイアンは雄介に視線をやる。


「イアンさん、その、先生もしばらく大丈夫ですか?」


「・・・・・ああ、もちろんだ」


だめなど言えるはずもない。

若干、間が開いたのは仕方ないだろう。

イアンとしてはこれからゆっくり・・・なんて考えていたのだからなおさらだ。

お邪魔虫以外の何者でないオーエンリッヒは心底楽しそうに高笑いをしている。

雄介はそれに首を傾げてはいるが、ローエンがユーと声を上げるとたちまちそちらに気を取られてしまう。

食べ終わったローエンの口元を拭い、自分の膝の上に抱き寄せている。


「おーおー朝から賑やかだな。」


カロンが喜色満面といった表情で奥から出てくると、雄介に頭を下げた。


「ありがとう、ほんとにあんたにはお礼を言っても言い足りない。」


照れた雄介は頭を掻きながらへへと笑う。


「サマンサはどうした?」


何の気なしにイアンが聞くと、カロンの顔が嬉しいのやら困ったやらいろいろな表情が浮かぶ。

それに雄介が青い顔になるのに、カロンは慌てて違う違うと声を上げて雄介に顔を寄せる。


「ほら、女性は、なにかと、な。その、特有のほら、」


それに雄介は、ああ、とほっと胸をなでおろす。


「よかった、薬の作用がきちんと出てるんですね。」


「ちょっと!!何聞かせてんだい!!」


そこに登場したサマンサはカロンの背をはたく。

いててと涙目になるカロンにお構いなしのサマンサは雄介にとびっきりの笑顔を見せた。


「ね、寝ててもいいんだぞ?大丈夫か?」


「心配しすぎだよ!病気じゃないんだから!」


「あ、でも、痛みの我慢はだめですよ。これ専用の痛み止めです。あんまりひどいようならヤギ先生に診察をしてもらいましょう?」


「ちょっと!薬師様!専用の痛み止めって言ったかい!?」


「は、はい!」


サマンサの剣幕に雄介は背筋を思わず伸ばす。


「もしかして、アーブンさんとこに卸した方がいい感じですかね?」


「いい!いい!すんごく助かるよ!!動けないくらいひどいのを無理したりする子が多いのさ!ありがたいったらないよ!」


「ひどい方はそうみたいですね。若いうちはそこまで気にしなくてもいいですけど、年齢を重ねるごとに辛くなる時は一度きちんと見てもらった方がいいらしいです。」


サマンサもだがオーエンリッヒも興味深げに耳を傾けてくる。


「それは雄介の故郷の知識かい?」


「はい、と言っても聞きかじった程度なので正直どこまで正確な情報かわからないですけど。用心はするに越したことないですし。」


「ふむ、雄介、そういう知識は思い出したらわしにも共有しておくれ。」


「はい」


そう言いつつ、テーブルの上には薬が並んで行く。


「ところで、これ何本出てくるんだい?」


サマンサが慄いている。

首を傾げた雄介がえーとと指を折り始める。


「沢山ありますね!」


楽しげな声を上げた雄介にオーエンリッヒはため息をついた。

ごん!と降ってきた拳が雄介の頭にこぶをつくる。

他の三人は苦笑いだ。


「お前はほんとうに!ほんっとうううに!」


ぐいぐい頬をつままれて雄介は涙目だが、誰も助けてはくれない。

ローエンも自分の頭の上の事は気にしない事にしたらしく、リタに教わった手遊びをしている。

 おかしい!味方が誰もいないよ!?













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