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13.事実と落胆とこれから




恋人のケイスケ(圭介)はもともと少し弱い人だったと思う。

不安が溜るとよく雄介にあたる事があったし、流されやすく、お酒に弱い。

今回の件だって雄介が居るのにパーティーメンバーの女性の好意に流されるままいい加減な態度をとり続けていたのが原因だった。

 俺がいなくなればか・・・

いつまでも煮え切らない態度の圭介にその女性はとうとう我慢の限界を迎えたらしい。

彼女に好意を寄せるギルド職員に手を貸してもらい、小さな奴隷商に半ば脅すように売りつけそこら辺のゴロツキを護衛に街を追いだした。

が、予想外の事が起きた。

ヤギ先生、圭介共に雄介を血眼になって捜し始めたのだ。

それに診療所に出入りしていた冒険者や街の人まで加わり、ヤギ先生に至っては圭介たちのパーティーを見るなり魔法をぶっ放し、空き地を更地にしたらしい。

身の危険を感じ始めた彼女はギルド職員をそそのかし街を出ようとしていたところを捕まったとある。


「あの、いいです、犯罪は犯罪ですけど、僕は無事ですし、その、軽くしてあげてください罪を。」


「それはおおすめ出来かねるな、こんな身勝手な理由で犯罪を犯すなど」


「それは、そうです。でも、彼女、一番仲がいいつもりでした。初めてパーティーを組んだ時足を引っ張ってばかりの僕をフォローしてくれるのは彼女でした。他のメンバーはみんな僕には否定的だったので。抜けて診療所で働き始めた時本当にそれでいいのかと言ってくれたのは彼女だけでした。甘い事もそれじゃあいけない理由も重々承知しています。それでも僕の居たとこではこれだけで死罪にはならなかったんです。刑に服して戻れば元の生活には戻れないけど、家庭を持つ人が居たりしていました。簡単じゃないけど生活を普通に送る事が出来たんです。もちろんそれで納得できないようなことももちろんあって、色んな人の色んな葛藤や苦悩の上に成り立つようなものでしたけど、どうしてもいきなり死罪は、それは、それだけはどうしても抵抗があって」


真っ青な顔でなおも言い募ろうとする雄介をトーマスは手で制した。


「君は、渡り人という人たちの事を知っているかい?」


「え?・・・・えっと、いいえ。移動しながら暮らす人たちとか?ですかね」


突然飛んだ話に目を白黒させながら雄介が答えると、トーマスは考え込むようなしぐさをする。

イアンを見上げた雄介は険しい表情を浮かべてトーマスを見つめている事に気づく。


「渡り人っていうのはね、ここではない世界、違う世界からやってくる人たちの事だよ。君は、どこから来たんだい?」


「なに、いって、・・・・ひとたち?他にも、いるんですか、違う世界から来た人が、僕たちじゃない・・・?」


ローエンが雄介の頬を小さい手で撫でる。

思わず抱きしめた小さな体はとても温かく柔らかい。


「ユー、よちよち」


ローエンの小さな手が雄介の頭を撫でる。


「ローエン、ありがとう。」


ふふ、と小さく笑った雄介にローエンが満足げに笑い返す。

意を決した雄介は顔を上げた。


「僕たちは地球というところから来ました。」


「ふむ、国はアメリカですか?」


「!?、いいえ、日本です。ほんとにいるんですか?」


「我が国に居るのはアメリカから来たというブライアンという男性とイギリスから来たというリサという女性です。お二人ともかなり高齢ですがご健在ですよ。確か他の国にも何名か。すぐは無理ですが、お会いできるかと。」


言いようのない昂揚感が雄介を包む。


「そこでですね、我々はあなたを保護しなくてはならないんです。」


「え?」


雄介はローエンを抱く手に力が入るのを感じる。

イアンの雰囲気が変わる。


「僕は、望みません、会ってはみたいですが、保護って、どういう意味ですか?」


「あぁ、いや、保護と言っても自由を奪うようなものでも、何かに制限を掛けるようなものでもないですよ。イアン、殺気をよこすな。」


トーマスはひらひらと両手をこちらに向けて降参とでも言いたげに笑う。


「本当はこの世界に慣れるまで色んな勉強をしてもらうんです。金銭の事や法の事、それぞれの国の事。魔法の勉強や生活の為に必要なこと全般を。王都の方が都合がいいですからそちらにしばらくは住んでいただく事はありますが、ただ、今回はねぇ、時間が経ってるでしょう、ここに来て」


「え、あ、はい。そうですね。もう、2年過ぎました、ね。」


「本来はね、すぐ分かるものなんですよ渡り人の出現てのは。」


「はあ、そうなんですね?」


首を傾げる雄介にローエンも同じ方へ頭を倒す。


「魔術師ってのは比較的万能で、この世界に渡り人が出現するとゆらぎ?が生じるらしくてね、それを感知するような物をつくって王宮で保管してるんですが、それが今回だけは反応しなかったようなんです。」


「はあ、」


「異例中の異例なのか、気付いてないだけで他にもいるのか。大規模な捜索が行われることになりそうなんですが、まあ、それはこっちの都合なのであなたには何の関係もないだろうと。ちょっと話ずれましたね、あなた方はもうすでに2年もの間、きちんと生活してこられたわけですから、今さらだろうという事になりまして。ただ、国としてはあなたたちに不自由な想いはさせたくないわけです。」


「えーと、どうして?」


「はっきり言いますと、何らかの利益が生じるからです。実際あなたはオーエンリッヒのところでできないとされた薬草の栽培に成功されてますし、ケイスケ、彼は新しい魔法を開発している。」


そういえば、圭介は魔法を覚えたばかりの頃、創るのも楽しいと言っていたのを思い出す。

請われて小さな子供や魔法が使えない住人に教えていた事もあった。


「もし必要であれば、王宮に迎える事も出来ますし、分からず困っている事があるなら国を上げて解決に動きましょうというのが本来の目的でして。」


「ここにいたいです、出来るならローエンと家族になりたい。」


その言葉に、トーマスはほっと笑う。


「もちろん!」


「わからない事は、今も多いと思います。教えていただけるのでしたら、それはありがたいですが、僕はここから離れるつもりはありません。来たばかりですけど、ここにいたいと思ってます。」


「ええ、もちろん。」


「ギルドにも圭介にもきちんと伝えていただいて構いません。でも、こちらから彼に連絡を取るつもりがない事を一緒に伝えてもらえたらと思います。後は、ヤギ先生と連絡が取りたいです。」


「すべて、承知いたしました。あと、オーエンリッヒですが、比較的すぐお会いできるかと」


「へ?」


「あのじじいは無駄に魔力と行動力がありますから、明日、明後日ごろのはこちらに着くんじゃないですかね?」


「え?」


「通信機の前ですでに旅装束でしたから、切った後すぐ向こうを発ったんじゃないかと」


「ええ?」









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