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案の定、遅い時間に目を覚ましたローエンはせっせと薬作りにいそしんでいた雄介の邪魔をするべくべそをかく。

雄介はそれに気付くと苦笑いを浮かべながらローエンを抱き上げた。

外にはランタンの明かりが灯り賑やかな男たちの声とあでやかな女の声が微かに聞こえてくる。

その喧騒に混ざって弦楽器の音が聞こえてくる。

雄介が窓を開けると喧騒が少し近くなる。

酔いに任せたまま騒ぐ声が雄介は嫌いじゃない。

千鳥足で歩いて行く男たちを見下ろしながらローエンの背中をゆっくりと打つ。

体を揺らしながら子守唄を口ずさむ雄介は穏やかな顔をしている。

こうしていると自分の中の嫌なもの全部凪いで行くのがわかる。


「ローエン、俺の家族になってくれる?ずっと一緒に居てくれる?」


うとうとし始めたローエンにそっとつぶやく。

あーい、と小さな間延びした声に雄介はそっと腕の中のローエンの額に唇を寄せた。





ぴくぴく、と動く耳が小さな声を拾う。

夜になると聞こえてきた声を間違えるはずはない。

きっとローエンがぐずったのだろう。

独特なメロディの旋律を紡ぐのは雄介だ。

店の前に椅子を引っ張り出して酒盛りをしていた兄弟は明りのともる部屋を見上げる。


「はじめて聞くなぁ、何だろう懐かしい感じがする」


「薬師殿の国の歌だろう。」


「へえ、いい声だ」


「あぁ」


チン、と軽く銀のコップの縁を合わせると、酒をくいっとあおる。

窓から見える二人の様子にサマンサは今夜は長くなりそうだと掛けていたエプロンを外す。

この時間に宿を出ている連中は明け方まで帰ってこないし、今いる客はもう出る事はないだろう。

今日は先に休ませてもらおう、サマンサは伸びをすると住居への扉を開けた。


「いい夜だ。」


「なんだよ急に」


穏やかな声はまだ歌を紡いでいる。

イアンはいい夜だと口に出さずには居られなかった。

泣かないでと切実に歌うのでも、何かを紛らわすために歌うのでもなく、ただローエンを想って紡がれる。

それがイアンは嬉しかった。

いつまでも明りのついた部屋を見上げるイアンにカロンはふっと笑みをこぼした。

2人の酒盛りは部屋の明かりが消えるまで続いた。

何度もコップを合わせ、なみなみと注いだ酒を飲む。

夜番の従業員が一度、そろそろお開きにしないと怒られますよと声をかけてきた。

カロンは上機嫌に返事を返して従業員に苦笑いをこぼされていた。



ぐずった割にすぐに眠りに就いたローエンを抱いたまま風呂場を覗くと桶から出た羽蛇はとぐろを巻いて眠ってるように見える。

水を捨てようと桶を覗いて雄介は叫びそうになった。

すんでのところで口を押さえる。

首をもたげた羽蛇は雄介の手首に這い上がるとくるりと体を回して腕輪スタイルだ。


「これ、もらってもいいの?」


尻尾が雄介の肌を一撫で。

了承を得た雄介はローエンをベットに慎重に寝かせると風呂場に戻る。

一枚一枚丁寧に拾い上げながら拭いて行く。

12枚もの鱗に雄介は小さくガッツポーズを決めた。

あれもこれも作れる。

ローエンの耳もこれがあれば元道理だ。

その時の痛みが恐怖が消えるわけではない事は重々承知している。

それでも、傷をみて悲しい思いをする回数はきっと減るはずだ。

そう願いながらテーブルに戻った。

雄介が明りを消したのはもうすぐ夜も開け始めるような時間だった。

薬瓶に入れた薄青色の薬が瓶を揺らすと波打つ。

雄介は袋に丁寧になおしてローエンの横に滑り込んだ。

子供特有のいい香りと温さにあっという間眠りがやってくる。

もぞもぞと動いたローエンが雄介の腕の中にもぐり込んでくる。

幸せな気持ちで雄介は瞳を閉じた。














「ユー、おっきよー、」


「んー、もうちょ」


とと言いかけてはっといきなり起き上った雄介に上に乗っていたローエンが転げてベットから落ちかける。

慌てて手を伸ばした雄介はローエンごとベットから落ちた。


「あいてっ」


おでこを打った雄介が額に手をやるとローエンがまねをして額に手をやる。


「ローエンごんね、びっくりしたね?」


「びっくり!」


頬に手をやったローエンが目大きく開けてびっくりの表情をつくる。

雄介はそれがおかしくて笑ってしまう。


「着替えてサマンサさんのお手伝いできるかな、でも、もうこんなに明るいとなると・・・・」


降りて行くとすでに食堂の人はまばらで食器を片づけている最中だった。


「おはよう!よく眠れたみたいだね!」


睡眠時間はそれほど取れていないが何も気にせずゆっくり眠ったおかげですっきりしている。


「はい、すごくゆっくり眠れました。すいませんお手伝いもせずに」


サマンサに頭を下げると、呆れた表情が返ってきた。


「あんた、うちが客に手伝いさせるような店に見えんのかい?いいから座んな!美味しい朝食たんと召し上がれ!」


次々に並べられる料理に目を白黒させながら雄介は促されるままに席に着く。

するとイアンがのっそりと入口から入ってきて同じテーブルに着いた。

それを見て雄介はほっと息をついた。

ローエンも嬉しそうに手を上げている。


「おはよう」


「おはようございます」


「おはよー」


サマンサが雄介の膝からローエンを抱き上げると、従業員が子供用のいすを出してくる。

そこに座らされたローエンは一瞬不満そうな顔をするがすぐ横に雄介が居るのに気づくとまあいいかと言わんばかりにセットされたフォークに手を伸ばした。


「食いけがかったな」


イアンがぼそっと呟く。

噴き出しそうになった雄介が肩を震わせる。


「ユー、たべる?」


「う、うん、ふふ、いただこうか、いただきます!」


ローエンのお皿には果物が多めだ。

イアンのお皿には山もりの肉が、雄介のお皿にはサンドイッチ。

スープにパンに果物にお肉。

口元にソースをつけたローエンがおいしいと口を開けば雄介が破顔した。









幸せ家族計画進行中。



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