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不撓導舟の独善  作者: 縞田
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0-2 プロローグ

「――以上をもちまして生徒総会を閉会します」


 結局、その後も濁流のような質問責めを受けることになったが、無事に生徒総会を終わることができた。それも議長の技量によるものだろう。議長に感謝。


「何はともあれ無事に終わったな」


 生徒総会を終えてからオレは舞台裏で待機している。その理由は至って単純で、体育館から教室までの間で行われる大名行列のせいで、ここ周辺は人で溢れかえる。そうなると、教室に戻るだけでも一苦労だ。


 だからオレは今こうして体育館から去っていく彼ら彼女らを観察するように眺めている。

 それ以外に特にすることもない。できることと言ったら生徒総会の台本を読むか、生徒たちに配られた資料に目を通すかの二択。


 こんなものを再度読むほどオレは物好きじゃない。そういうわけで消去法の末、観察に落ち着いた。

 しかし、それも飽きてきた。まあ、もとから楽しい代物でもないんだから当然だ。

 そういえば、体育館近くの自販機がマニアックだとかなんとか言ってたな。

 暇つぶしがてら、その噂の自販機のところにでも向かってみるとするか。


 体育館の裏口から出ることによって人の濁流を回避して、自販機に向かった。

 幸い、自販機に向かう道は教室とは反対方向にあるため、混雑どころか人の姿すら見当たらなかった。

 すぐに品揃えがマニアックな自販機が現れた。

 オレはその自販機に値踏みをするようにじっくりと見やった。


「え~と。うなぎサイダー、セミの素揚げジュ……」


 最初の左二つでマニアックの域を超えていることがよくわかった。

 視線を横に流して、遠目で雰囲気だけを確認する。


「知ってるパッケージが一つもねぇ……」


 一列目、二列目も恐ろしげな文字が連なっていたので、読むことをやめるとともに、この自販機のラインナップの変更を固く決意した。

 せっかく体育館の近くにあるっていうのに、この品揃えは生徒たちが不憫だ。今のオレも不憫だし。


「せめてスポドリくらいは置いといてほしいもんだな」


 そんな感想を呟きながら、自販機に小銭を入れた。

 ゲテモノ揃いではあるが、たまにはそういうのもいいだろう。

 飲んでみたら意外といけたりするかもしれないし。

 ゲテモノを片手に塗装が剥げかけている青色のベンチに腰をかける。

 ちなみにオレが選んだのはイカ墨ジュース。中の液体も缶も真っ黒。


「ああ、ここか!」


 オレと同じく人混みから避難してきたのか、男子二人が自販機の方に寄っていく。


「ほんとにあったよ、やばい自販機……」

「言ってたこと本当だったんだな。半ば嘘だと思ってたわ」


 男たちが腰辺りに付けているアクセサリーはお互いを叩き合っている。

 そして、アクセサリーの騒音を上回る声で男子二人は飲み物を決めていた。


「ささみコーラ、シャカシャカマカロニ⁉ なんだそりゃ!」

「これ誰が買うんだよ……」


 オレもそう思う。誰が買うんだよ。

 そんなことを言いつつ、自販機からがしゃんと二回音がした。

 すると、その二人組は他人オレの目をはばからず、大声で会話を始めた。


「そういやさ、里霧と送波って付き合ってんの⁉」

「あー、なんかそういう噂あるよな」

「はたから見てると全然そんな感じしないよな? なんつーか冷たい?」


 なんか他人の恋バナ始まったな……。


「俺は拘崎と付き合ってるもんだと思ってたわ」

「あー、確かにいつも一緒にいるしなー」

「どこ行くのにも二人でいるもんだからてっきり拘崎だと思ってたんだけどな。まさかのダークホース誕生とは」

「そうなると怖いのは拘崎だよな」

「そうだな、拘崎が荒ぶる予感がする」


 どうやら我が志操学園では昼ドラのようなドロドロの人間関係があるらしい。

 聞きたくなかった。そんなこと。


「まあ、あの二人を見てる感じ既にギスギスしてるっぽいし」

「ああ、道理で教室の空気が悪いわけだ」

 

 男子二人は空き缶を捨て、話の続きをしながら、この場をあとにした。


「オレも少ししたら戻るか」

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