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三~四振り目 魔導技師 ベンジャミン・アズマヤ(ベルリン)


「ベン行くのか」

ギンはベンの背中に語りかける。

「ちゃんと見届けるつもりじゃったが、もう辛抱出来ん」

ベンは本当は一番に逝きたかったようだ。

「世話になったな。お前がいなければ私は、とっくの昔に死んでいる」

「記録上は死んだことになってるがのう」

「おかげでいい夢をみることができた」

ギンはベンに感謝をいう。

ベンは振り返り、かつてのようにギンに頭を垂れる。

「最近、先代によう似てきましたな。ギン坊っちゃん」


「最高の褒め言葉だ」

ギンは本当に嬉しそうに微笑む。


ベンはゆっくりと顔をあげてかつての主に似たその顔を慈しむ。

「いって参ります。ギーンライトニング・ウェンリーゼ様。もう一人のウェンリーゼの王よ(親方様)」






唄が聴こえる。


酒飲みの唄、祝いの唄だ。


この唄は皆で酒を飲みながら、友を家族を労う唄だ。明日もまた健やかな日々が送れますようにと…

一人の老人が酒を飲みながら涙を流し、唄を唄う。


〖峠岩〗海の上にそびえるこの巨大な岩の遥か海底には、〖月の賢者の迷宮〗があり、月の賢者がお眠りになっているという伝説がある。


ベンジャミン・アズマヤ(ベルリン)は岩に座しながら待ち焦がれる。五十年ぶりの宿敵を…


残り1500メートル


「ガララ」

シーランドはゆっくりとその巨大な岩に近付く。何故だかその歩みが重い。

「よう!ずいぶん待たせるじゃねぇか、お前さんも一杯どうだ。【末期の酒(水)】じゃあ」

「ガラララララ」

シーランドが止まった。シーランドは、ベンを見る。この海の王がベンを覚えているかどうかは定かではない。だか、シーランドとベン見つめ合う。まるで、お互いの五十年を確かめあっているようだ。


「お前さん前と違うな。誰に踊らされた。いや、魅入られたか。随分つまらん顔になったもんだ。前におうた時はションベンチビったもんだがなぁ」

シーランドはたじろいだ。シーランドには何故だかこの大きな岩がベンに見える。いや、この男の言葉を発する酒臭い吐息が、世界が終わろとも決して動こうとしないその岩のような所作の一つ一つが、この頑固親父を自身より大きく見えるのだ。


「うぃーっと、お前さんがぐずぐずしとるから酒も無くなった。次はお前さんのそのヒレを貰って酒のアテにでもさせて貰おうかのう。あぁ、そういえば鰭酒の分も取っとかんといかんのう。最近、物忘れが多くて敵わんわい」

ベンは酒瓶を置き、ゆっくりと立ち上がる。


シーランドは、きすびを返した。決して逃げた訳ではない。シーランドは、その岩の潮の流れを嫌ったのだ。油断すれば、自身をも飲み込みそうなその渦を…

シーランドは海の王者である。これ以上、陸地へ近付く必要はない。海から無限に集まる魔力を使い、《地震》、《津波》によって古来より汚れた大地を浄め、彼の姫君をお救いしなければならないのだ。

ここまでの戯れで傷を負ったが、海の祝福と無限の魔力により一時の眠りにつけば癒せる傷だ。目くじらを立てる必要もあるまいと…


シーランドが岩から離れようとした瞬間


「オイ!連れねぇなぁ、せっかく来たんだ。もう随分腹も膨れただろう。この老いぼれの小言にちぃと付き合ってくれや。〖拳骨〗・型破り」


〖拳骨(弓懸)〗

種類 手甲、弓懸(元は〖皆中〗と対なる装備)

効果とストーリー

弓の名人(神)、オトキチ・ヴァリラートが使用していたとされる弓懸。時を経て用途が代わり、秘蔵されていたものをベンジャミンにより【カスタム】改修された。

〖拳骨〗岩砕き、拳に魔力を纏い殴る。

〖拳骨〗岩、盾の部分に魔力の障壁を発現させる。拳骨そのものの物理防御も強い。

〖拳骨〗型破り、先端の指先に魔力を集束し爪のように使用できる。器用なものが使用すれば、指先から魔力を放出も可能だが、大量の魔力を消費する。



拳骨の指先に魔力の爪が発現する。まるで魔法の槍のような鋭い爪だ。

ベンがシーランドの頭部近い場所にある背鰭に拳骨の爪を食い込ませる。

「ガララララァァァァア」

「お前さんもちぃとばかし、痛い目みんとのぉー、うりゃぁぁぁぁぁ!」

ベンはその背鰭(酒のアテ)を容赦なくを引きちぎる。


「ガララララァァァァアァァァァア」

シーランドが吠える。

ベンが背鰭から飛び散る血を浴びる。その姿は古来の神々である〖アシュラン〗のようであった。

シーランドがその鋭い爪でベンの脳天を突き刺す。ベンの頭から血が吹き出す。

シーランドが仕留めたとニタリと嗤うが…


グググ…シーランドの爪が弾かれる。


「痛いのう。うちの倅どもと甥っ子はもっと痛かったじゃろうなぁぁぁぁぁあ」

〖血塗れのアシュラン〗が泣き叫ぶ。


「ハァッハハハ、もう限界じゃい!脳天がブチキレて何がなんだかワケわからんわい!ハッハッハア、このトカゲだか蛇だか分からん羽虫がァ!ぶち殺してくれるわぁ」

酒を飲み尽くされたウェンリーゼの守護神は、相当にキレていらっしゃる。


古来の神〖アシュラン〗その顔は三つあったといわれている。それは、少年、思春期、青年の顔といわれていた。では、大人の顔は…


かつて、大陸の覇者アートレイは竜の血を浴び自身の穢れを払い、国を起こしたとされている。

だか、この現世に舞い降りた老人の顔をした〖アシュラン〗様の怒りは、竜の血を浴びようと鎮まること叶わない。


ウェンリーゼの地に、海を隔てた遥かなる地の古の神々(最高神イ◯ドラ)すら怖れた、血塗られた戦いの神が降臨あそばされた。


挿絵(By みてみん)


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