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三振り目 医術士 ジョー・アズマヤ(ベルリン)

ジョーさんファイト!

おかげ様で本編一部完結しました。

外伝ゆっくりやってから、戻りたいと思います。

後で加筆訂正多少します。

【雨も滴るいい男】


「先生、急患だ」

ジョーの父であるハンチングは流れの医術士だ。元々は王国中央に属していたが、ある日を境に中央を去ることになる。

回復魔術、それは神々の奇跡(魔法)ともいわれている。回復系統の《治癒・回復》の使い手は、魔術師の中でも非常に稀な存在だ。術師達は基本的にほぼ国が管理しており、お布施(大金)によって各地や個人に派遣される。海王神祭典で、疲弊しきったウェンリーゼ領にそんな余裕はなかった。




シーランドは口の中の火傷により、きっと口内炎だ。歯からは血を流しており、その血は餌ばかりではなく自身の血も含まれている。

気に食わない、気に食わない、気に食わない。

美味いと感じていた餌がとんだ劇薬だ。シーランドはこの【ロシアンルーレット】でハズレを引いた。次の餌こそは美味であろうと、だが海の王は気付いていない。ハズレは一つとは限らないということを…



カァン、カァン

シーランドの一角に何かが中る。まるで痛みはないが、この音が口の中の痛みを刺激する。その痛みはこの乾いた音とともに酷く耳障りだ。

ジョーは近付かない。彼の狩りは遠距離からの的当てによるものだ。彼のポリシーは一撃必中、一撃で命を絶つことである。この医術士は、【ライセンス】のないヤブではある。しかし、このヤブは大陸中の誰よりも生き物の癒し方と壊し方を熟知している。

カァン、カァン

筒(杖)から魔術が放たれる。



〖筒〗

種類 魔法の杖

効果とストーリー

ベンジャミン・アズマヤ(ベルリン)の初期の作。効果は〖皆中〗の下位互換であるが、飛距離はその比ではない(およそ千メートルまで着弾可能)。シロの付与魔術《回転》が付与されている。魔法の弓としても使用は可能であるが、通常の矢を射ることはできない。


ジョーは回復系統の魔術以外は使用できないが、筒(魔法の杖)により自身の膨大な魔力を捻り出し、《回転》の付与によりその放出された魔力の飛距離と回転による殺傷力を増大させている。

カァン、カァン、カァン、

その一撃一撃はシーランドの一角に寸分の狂いもなく命中する。

「ガララ、ガララ、ガララ」

一方のシーランドも口から《水球》を放つ。

「《鑑定》左利き、右だ、次は二発来る」

仕事なしが叫ぶ。《水球》は【水上バイク】ルーググに当たらない。仕事なしは、元々【キャラバン】を取り仕切る商人であり、《鑑定》持ちである。得意な分野の鑑定ではないが、シーランドの術の発現を鑑定し見極める。シーランドの背鰭が発光し、一角に魔力を集束させる。

「先生!一角に魔力が《散水》が来ます!」

ジョーの筒から放たれた魔弾が一角の魔力が集束する【ポイント】を射抜く。

「ガラララ?」

魔術の発現は失敗に終わる。

「流石ですね!先生」

この伯父貴が作った魔法の杖は、東の虎の手によく馴染む。


残り2000メートル


「左利き、左だ、そのまま真っ直ぐ」

シーランドの《水球》は幾分か術の発現に【タイムラグ】が生じている。やはり、口腔中の《花火》による【ダメージ】のせいで、遠距離での攻撃に精彩を欠く。

カァン、カァン、カァン、

一方でジョーの攻撃は必中を連発する。的当ては足場の固定が非常に大事になってくる。足場の悪い、しかも高速で移動している海上での的当ては至難の技だ。

カァン、カァン

それを可能にしているのは仕事なしの補助(肩に筒を置いて砲台)と左利きの運転により、的当てにのみ集中できていることだ。

カァン、カァン

もちろんジョー自身の腕は言うまでもない。


残り、1700メートル




2

「お前たちここまでだ。この距離ではお互いに【セーフティ】だ。後はあそこにある〖峠岩〗に降ろしてくれればいい」

「先生はどうするんですかい」

仕事なしが問う。

「この距離では、的には中るが射ぬけん。魔力もそろそろ限界だ。至近距離から取っておきをお見舞いしてやる」

「狩人が近付いたらおしまいでは」

左利きがジョーを見る。まるでかつてのハンチングのような頼もしさを感じる。

「普通の狩人はな。安心しろ、俺は普通の狩人じゃない」

「「俺達も普通じゃありませんぜ」」

左利きと仕事なしは、人口に対して確かに割合としては希少である。

「ここからは【片道切符】だ。お前たちまで付き合う必要はない」

「へへへ…その片道切符、借金(命をチップ)してでも買わして頂きやす」

仕事なしは、本当に借金が好きなようだ。

「もうとっくに御気づきでしょうが、お父上の代から影として、御使いしているのです。今更でございますよ。ジョー坊っちゃま、それにそんなダサイことしたら【ハンサム】じゃねぇですよ」

女神達は、【ハンサム】とは顔だけのことじゃないと知る。

昔から影に隠れていた左利きは、最後くらいは堂々としている。

ジョーは何もいわない。謝りもしなければ、恩着せがましいこともいわない。言葉足らずと言われればそこまでだが、この男達にとってはそれが何とも心地好い。

神々は思う。あぁ、本当にカッコいいなぁと…

「そういえばお前達、随分長い付き合いだか名前を聞いていなかったな…」




3

「最後まで付きあってもらうぞ、ニート。そして、ガキの時からバレてたぞ…レフティ」




海上には水上バイクの残骸と、二人の英雄であったものが浮かんでいる。とても満足そうな顔をしている。二人とも、借金してでも手に入れたかった片道切符を買えたのだろう。ジョーはシーランドの眉間に飛び降りた。

「ガァァァ」

シーランドは叫ぶが時は既に遅し。

「シーランドお前の罪を愛そう。とっておきだ」

ジョーは筒をシーランドに向けてとっておきの【ダムダム弾】を放つ。

ガァン

遠距離とは違いこの距離では魔術障壁もさしたる効果が無いようだ。さらに一撃、シーランドの一角の一番弱いであろう部分に中る。二撃、三撃、最後の一発が暴発した。

シーランドは煙で前が見えないが、この結末に安堵した。獲物が、我を獲物だと、その表情からは怒りとともに安堵も見え隠れする。しかし、【ロシアンルーレット】は終わらない。シーランドには煙の中からタバコの火が見える。

「スマートじゃねぇなぁ」

ジョーは使えなくなった筒を縦に持ち、まるで弓のように正射の構えをとる。〖古流〗それは古竜とも言われてる流派である。より実戦を想定した下からの構えだ。

「皆中(古竜)」

それは本当に美しい正射からの離れであった。ジョーの父譲りの四射連続(皆中)は、その名の通り古竜すら畏怖する魔力の射だ。一射が魔法障壁を突き破る。二射が一角の一番脆い部分に突き刺さり、三射が援護する。

「ガラララァァァ」

シーランドは自慢の一角(海のグングニル)に痛みを感じた。最後の一発が放たれる。

ピクッ

シーランドが痛みを感じた刹那に、ジョーも数十年振りに杖を固定している左腕の小指に痛みを感じる。

「ワォーン」

最後の一射は…犬の鳴き声とともに海に飲み込まれた。

シーランドは一瞬、恐怖を感じるとともに一角に魔力を集束させる。上級魔術《水月》だ。

ジョーは残心(最後)の余韻に浸る。

「伯父貴、父上、やっぱり弓は苦手みたいです」

ジョーはタバコを【携帯灰皿】に入れた後に、シーランドに向けて射の構えを崩さなかった。

「ガラララァァァァァァァァァァ」

竜の咆哮(数トンの水魔術)がジョーを襲った。虎は死に際まで【ハンサム】であった。



ピシリ

海の槍(一角)に不吉な音がした。


この東の虎(狩人)は獲物だろうが、病気や怪我だろうが狙いは外さない。

ジョー・アズマヤ(ベルリン)。彼は自身の東屋に多くの患者を雨宿り(癒し)させた。

時の女神と美の女神は雨宿りに来た迷える命の数を数えていたが途中でやめた。彼の東屋ジョー・アズマヤに訪れたその数は、満天の星よりも多かったからだ。夜空に幾つの星があるのかは、機械や神々ですら知らない。

シュパッ

死神は数十年前に付けた傷痕めがけて、鎌を振るった。【ハンサム】の顔を傷付けないように鎌を振るった。


時の女神は砂浜で、オレンジ色の大きな土台を見つけた。そこに赤いレンガを三つ積み上げた。

カタカタカタ

ギンの魔剣に三色の色(魂)が加わった。




今日も読んで頂いてありがとうございます。


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