街と山
メイド服姿ミウナーの姿を見て心乱れてしまった。
はー、可愛い。
「お嬢様、それでは行きましょうか。」
私は返事をして歩き出し玄関を通り庭にある大きな門まで歩く。
ここまで来るのも初めてだ。
門を通り越して何分か歩くと街中に入ったようで、どこを見ても建物で賑やかな声があちらこちらから聞こえる。屋敷から見える範囲では建物がまばらに存在するだけだったが街中のこともあり建物の密度が高い。
何だろう。周りからの聞こえる声が多いからか幼い頃に行ったお祭りみたいで高揚感がある。
これだけ騒がしく人混みとまでは言わないがそれなりに人のある通りだ。
ミウナーを見失いために手でも繋いだ方がいいだろう。
「ミウ手、繋ごう?」
「うん!」
私はミウナーの右手に自分の左手を重ねて握り潰さないようにそっと握る。
「お嬢様、御手を」
まさかマリーから手を差し出されるとは思わなかった。
マリーは最近私に馴れ馴れしく接してくる。言葉遣いも偶に崩れている気がするし。
別にそれはいい。私も使用人としてだけでなくマリーと話してみたかったから。
だが、私の思っている感じと違う気がする。
何かこう、おちょくられているような、子ども扱い受けているような。
子ども扱いを受けるのは当然だが…私はあれだ、見た目は子ども頭脳は…と言うやつだから子ども扱いを受けるのは複雑なのだ。
私は無言で手を差し出す。
…みんなで手を繋ぐ時って一番幼い、ミウナーを真ん中にするものだと思う。
私達はそれから街を散策した。
街をあちこち見て、マリーのポケットマネーから出してもらい買い食いをさせて貰う。
因みにこの世界のお金の単位はベルで円と殆ど同じだ。例えば百円は100ベルで金貨、銅貨が出てこず全部同じ小判のようなもので、1000ベルを超えると紙のお金だ。
私は街中を楽しんでいたが本来の目的を思い出した。
私は特訓場所を探していたのだ。
この世界には魔物がいる。魔物が比較的頻繁に湧く場所で屋敷から近い場所を。
私はあたりを見回し特訓場所に向いていそうな所を探す。
あ、また同じメイドがいる。マリーと同じメイド服だからうちのメイドだろう。
彼女は確か、、、そう!メアリーだ。彼女の顔が少し特徴的で覚えていたのだ。
彼女の目はつり目で悪役令嬢だからかつり目気味のミウナーよりもそうなのだ。
やはり、護衛の様なものをつける必要があるのだろう。
メアリーの名前を思い出せてスッキリしたから彼女のことはもういいや、と私は思考を切り替える。屋敷の近くに山があったんだよな。そこなら魔物が湧いているか分からないが一目が付かないし何より書斎より確実に広くより実践的な訓練ができる。
私は目的を思い出した早々に解決させ楽しむことに専念することにした。
私達は昼程まで街を満喫してから屋敷に帰った。
こうして見ると屋敷って結構大きいな。
外から屋敷を眺めた事が無かったから分からなかったが、敷地は今日行った街の都市部ぐらいの大きさはあった。
私はマリーの背中で疲れて寝てしまっているミウナーを見る。
相変わらず可愛い寝顔をしている。それと今日は幸せそうな表情だ。
よっぽど街が楽しかったのだろう。
私も今日は楽しかった。
私は一旦書斎に行き本を持ち、今日見つけた山に行く。
勿論こっそりと。
書斎の窓から木を伝い外に出る。
私はまだ街に行った時の高ぶりが残っていて、はやる気持ちを抑えて山まで徒歩で向かう。
私は山の入り口まで来ると準備体操をしてから魔物を探す。
魔物と対峙するのは初めてだが、光属性の魔法は傷も癒せるからそれなりに大丈夫なはず。
実際に傷を治せるか試すのに自分の指を少し切って試したのだし魔法自体は大丈夫だろう。
私がそんなことを考えているとスライムが出てきた。
スライムといえば最弱モンスターだが、油断してやられる死亡例があると本で読んだ。
スライムに油断する理由は個体差が激しく、毒や酸を扱うものだったり魔法を使う個体もあったりと強い個体もいたりするからだ。
私、どうしよう。
私は基本、素手で戦う気でいたのだが前述した通りスライムの持っている可能性のある酸で溶けるかもしれないのだ。
私は何もせずにぼーっと突っ立ているとスライムの方から仕掛けてきた。
スライムが体当たりしてきたのだ。
私は余裕で躱すも私の攻撃手段がない今どうしたらいいか…あっ、魔法か。
何も光魔法は傷を治すだけではないのだ。
「ライトアロー」
スライムに向かって手を構えてそう唱えると構えた手のひらから光の矢が出てきてスライムを貫いた。
おおー。スライム倒せた。
私はちょっとした感動に打ちのめされる。
今実感できた気がする。
私、異世界に転生していたのだと。
それから私は森の中に入り魔物を探しては倒していた。倒し方なんかは一体一体工夫して倒していた。
魔物が人がするような動きすることは少なかったが、魔物との戦い方は板についた気もする。
私は満足して書斎部屋下の庭にまで帰ってきたのだが、帰りはどうするか考えていなかったのだ。
否、考えてはいたのだが実際にできるか不安になってきたがなんとかなった。
「身体強化」
光属性魔法は傷が癒えるだけ、攻撃魔法が使えるだけではないのだ。
私は光属性魔法の身体強化を使い木に登り始める。
体軽くなった感覚と身体の感度が高まった感覚がし、するすると木を登り終えた。
書斎に着くと私はぱたぱたと土っぽい服を叩く。
マリーにはバレていなかったし、私は充実した日になったと、満足した。