犯人と調査
この顔見たことがある。
誰だっけ?知っているんだけど…前世でもないし本とかでもないし、今世で会ったことがある人物だろう。
今世で会ったことある人物といえば屋敷の人間だけど……
暫く犯罪者の掲示板で立ち止まっているとマリーが私の近くに寄ってくる。
んん?この顔にメイド服が合うような………っ!思い出した。マリーに確認してもらおう。
私はマリーにこれを見て、と紙に指をさしマリーは私の言う通りそれを見る。
そこに描かれていた顔は悪役令嬢のミウナーより特徴的なつり目を持つ女性の顔だった。
「っ!この顔って間違いなく……」
マリーが言うのだから間違いない。
私はその後家に帰って寝る準備ができたので寝た。と、見せかけて部屋をこっそり抜け出した。
抜け出したのは真夜中の一時。みんなが寝静まった暗い屋敷の中、私は使用人の事務室に来ていた。
誰もいない廊下を歩くのは少し不気味で知っている場所が知らない場所になっていて探検しているような気分でワクワクする。
使用人の事務室は私が普段過ごしている書斎より小さく本棚と椅子、机の1セットが置かれ部屋が整理整頓されていた。これなら直ぐに見つけられるだろう。
私が探している書類は雇用契約書。
雇い主と雇われがサインされている細かい注意事項などが書かれている紙だ。雇用契約期間が書かれてあるはずだからそれに興味があったため、わざわざ見に来たのだ。
私は目的の人物の雇用契約書を見つけると雇用契約期間の欄を見る。
そこには三年前の西暦が書かれていた。
ギルドの職員さんに夕方気になった犯罪者の最後の犯行を聞いたところ三年前。
マリーに聴くとここの職場はかなりの業務量らしいので犯罪を犯している余裕などないだろう。
私が気になったのはこのことだ。
冒険者ギルドで見た犯罪者の顔が屋敷の使用人と一緒。それで経歴が気になっていたのだ。
犯罪をやめて真面目に働いているのなら良いのだけど。
そばにいたネズミを光属性魔法のミラージュフェイクで分身を作るり監視としてさっきまで契約書を調べていた人物に付いてもらう。
因みに作った分身は私の言う事を聞く。…無機物でもワンチャン動かせたりするかもしれない。
屋敷にネズミがいるなんて大丈夫なのだろうかと思いながら、夜中無理に起きたせいでまだ眠い目を擦りながら自室に戻りベッドに潜った。
翌日、私はマリーを連れて山に来ていた。
今日も魔物を狩って魔石をお金と交換してもらおう。
昨日だけでかなりのお金が溜まった。
私が持っていたお金の2倍ほど昨日は稼げたのだ。
これで貴族の金銭感覚でも成金程度になっただろうか。これでも目標額の十分の一しか無いのだ。
気合いを入れて稼ぐぞ。
私は体育会系でも無いのに気合い入れまくりな拳を天高く掲げる。
ある程度魔物を狩り終わった頃昨日のネズミと感覚共有すると、ネズミが追っている侍女が屋敷からこっそり抜け出していた。
私は笑顔で戦うマリーに魔物の群れを任せネズミの感覚に集中する。
侍女は、屋敷に出て、街に行きある一軒の家に入る。その家は家というより物置のような倉庫で狭い場所でそこに手足を縛られて寝転がっている人影がある。
ネズミの見え方でしか見えないためミウナーかどうかわからないが、多分ミウナーだろう。
居た、ミウナーだ!どうする、ここに突るか?街の道順が曖昧なのだが辿り着けるのか。
とりあえず冒険者ギルドに行ったついでに行ってみようかな。
そんな事を考え終え、マリーと一緒に戦い始めた。
私はギルドに行った後ミウナーが囚われているであろう倉庫に行った。
正直迷いそうになったがなんとか倉庫まで着いた。
はぁー。迷子にならなくて良かった。
私は窓がないか家を一周したが窓は見つからない。
私は仕方なくドアを開けようとするが勿論鍵が掛かっていた。
魔法を使えばドアを使わず入れるが…流石にダメだよね。物を壊すのは器物破損で犯罪だ。
うんー。どうするか。
「マイ、どうしたんですか?この家に何のようなんですか?」
ミウナーが居る可能性が途轍もなく高いがネズミが教えてくれたなんて信じないだろうしな。
正確には私が犯人らしい人にネズミを付けさせて中に人が縛られて転がされていたのだ。
何回言い訳しないと。目的があってここまで来た風でさっき家に周りをグルグル回った言い訳になるもの…
「この家…この前見かけたとき、なんか他の家と違って窓ないし不思議だなって、よく見て見たくて。」
これで大丈夫かな?
一応粗方は説明できるはず。家を回っていた理由も、わざわざここに来た理由も、バッチリだ。
だが、強いて言うならこの言い訳の欠点として何を言っているのかよく分からない点だろう。
私はこの後どうするか迷う。
鍵がかかっているとは何となく予想していたが鍵がかかっていた場合のその後など考えてもいなかった。
このまま帰るか、魔法でぶち壊す選択肢としてはこの二つだろうか。
前述した通り、家を壊して侵入など犯罪だ。
なのでここは大人しく帰るしかなかった。