冒険者の姉とマリー
まさか冒険者を認めるだけでなく一緒にやると言い出すなんて予想外だ。
今日はもう夕方だがギリギリまで魔物を倒して稼ぐか。
「マリー、今から出かけよう!」
「流石に今出かけるのは問題だと思いますので…」
「でも、ミウを助けるために必要な金額は大きいから直ぐにでも稼ぎ始めないと間に合わないわ。」
私が食い下がるとマリーは仕方ないと了承してくれた。
私とマリーは山に行った。
いつも私が訓練している場所なので多少暗くても大丈夫だろうと思ってきたが山は既に暗くあたりは何も見えずに危険に思えた。
私は光属性魔法で光を放つか迷う。
マリーのことは信頼しているが色々面倒そうだと思うからだ。
「お嬢様、やはり暗い山は危険だと思うのですが」
そう苦言を呈するのは最もだと思うが、どうしてもやらないといけないのだ。
…暗くなければ大丈夫だよね。
私は木の葉の隙間から光が漏れ出るように調節してあたりの木に光る球を出現させる。
「…大丈夫よ。ここら辺の木って不思議で光の。」
私は誤魔化すために嘘をついた。
本当にそんな木があったら見てみたいのだが。
「…そうなんですか。私は知りませんでしたが光る木なんて、存在するのですね」
絶対誤魔化せてない。マリーが訝しむ目でこちらを見ているのだから。
私は先程恐怖が戻ってきて冷や汗を感じる。
「光源もあるのだし大丈夫そうね。出来るだけ報酬の高い魔物を狩りましょう。」
「そうですね、お嬢様。光で魔物も集まってきましたし」
マリーはそう言い剣を構え、少し口角がつり上がった気がするが気のせいだろう。
マリーが剣を持っていたのは驚いたが一応元冒険者だったと言っていたのでその時の愛用品だろう。
マリーの言う通り光で集まってきた魔物を私たちは倒し始める。
私は勿論、光属性魔法を使えない、又はバレないように使うと言う制限がかかっているが。
マリーは思ったよりすごかった。
動きげ戦闘慣れしている。
魔物を狩り始めてまだ一週間程度しか経っていない私なんかとは場数が違うと実感させられた。
暫く光で集まっていた魔物を倒していたが一旦数が減り余裕が出てきた。
「マリーって思っていたより戦い慣れていたのね。」
「伊達に冒険者やっていませんでしたから。楽しかったですね」
…楽しかった、だと?確かに、魔物を倒しながら笑っていた。
魔物を倒す感覚はなんとなくゲームをしているようだからそう思わなくもないのだが。
「マリー。ひょっとして貴女魔物を倒すのが趣味だったりする?」
「?冒険者として屋敷の仕事の休暇に魔物を倒したりして楽しんでいます。」
…ダメだった。マリーは戦闘狂だ。
いや、別にマリーがダメと言う訳ではないんだけど。うん。
私達がもう少し魔物を狩るとあたりに魔物はいなくなっていた。
私は事前に持ってきていた袋に倒した魔物の魔石を入れる。
魔石は魔物を倒すと出てきて、魔物を倒した証明になり冒険者ギルドでもし依頼があれば依頼達成という事になる。
私はせっせと集め冒険者ギルドに行くことをマリーに提案しそのまま行く事になった。
私達は冒険者ギルドに着くとカウンターのお姉さんの元に行き魔石袋をカウンターに置こう、としたが背が届かない。マリーがそれを見て私の手から袋を受け取り代わりにカウンターに置いてくれる。
ゴン、と言う少し鈍い音がして受付のお姉さんが驚いた顔をした。
「これは…?」
「全部魔石です」
マリーがにっこりした顔で言う。
マリーのこの顔、なんか怖い…魔物を狩る時の顔だよ、迫力があって殺気が撒き散らされているような …普段は優しいマリーが怒ったような気配を出すと異様に怖い。
私がマリーのオーラに怖がっているとマリーと受付嬢さんの会話はまだ続いている。
「この量は凄いですね。鑑定するのに時間がかかるので少々お待ちください。」
「えっと、冒険者カードを見せてもらって良いですか」
マリーは冒険者カードを差し出すと
「んん?マリーさんってあのマリーですか?Sランク冒険者の?」
「はい、そうですよ?おじょ、マイもカードを出してください。」
マリー貴女何者?Sランク冒険者って凄いんだろうな。
ミウナーのように攫われないように貴族だとバレると危険んだから、お嬢様呼びはしない方がいいと言ったら冒険者名のマイと呼ばれることになった。
え?私も冒険者カード出すの?代表者だけで良いと思ったんだけど。
私は一週間冒険者をしていたがパーティーを組んだことがないのでそう言うものかとおとなしく差し出す。
ここで突っ込んではいけないのは一週間も冒険者していたのに仲間ができなかったこと。私が悲しいから絶対に言ってはいけない禁句だ。
私は素直にカードを渡す。
「お二人でこの量の魔物を倒したのですか!?マイさんはずいぶん小さく見えますが!?」
確かに子供が冒険者登録をしていると言っても10歳前後だ。5歳で冒険者登録している人はかなり少ない。
受付嬢さんが驚いても仕方ない。
受付嬢さんからカードを返してもらい私達はこれから屋敷に帰ろうと話していると、人の顔の描かれた紙が沢山貼ってあり犯罪者の顔らしかった。
私はこの中にミウナーを攫った犯人が居たりして、となんとなく見ていた。
そしたら、見覚えのある顔があった。