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クレイジーパーティ






「先輩!ランカー2人でもこれは厳しいですって!」


「つべこべ言わずとにかく走れ!」

俺たち3人は無数のプレイヤー達に攻撃されていた。仲間割れなど起こしているパーティなんかただのかもだ。


「なんでセラちゃん、ログアウトしないんですか!」


「ゲームの電源落としてないからだ!今回の原因はお前のせいでもあるからな!」


「あーもー、どうしてこうなるんですかぁ。先輩声でかすぎですってー。」

不知火が大声を出したせいでそれが周囲のプレイヤーを引き付け、3人を視認するや否や全力攻撃である。またその漁夫でプレイヤーが現れ、やってやり返されての大混乱。流れ弾がヒュンヒュン飛び交い、不知火や黒羊の体にあたる。

幸い、ヤグラは排除していたためSRの攻撃は少ない。だがまたヤグラに登られるのも時間の問題だ。


「このまま2番換金所まで疾走するぞ!離れるなよデッドマン!」


「あーもー、俄然やる気が出てくるからやめてくださいその言い方ー!」


「おう、そうか!なら走れ走れ!俺たちなら2キロなんて余裕だろ!」


「ひー、先輩のスタミナはおばけですかぁ!」


2人は着実に換金所まで近づくが換金所前の開けた場所で迎え撃たれる。

前方にはプレイヤーが機銃陣地を構築しておりこのまま走り抜けるのは危険だった。


「あいつら、機銃セットまで展開したぞ!黒羊!ランカーだってバレたんじゃないか?」


「かもしれないです!ロビーで長居したのまずかったですね。どうします?先輩!」


「お前、今日のハイライト見たんだってな!」


「え?どうしてそれを!」


「全部筒抜けだァ!」


「そんなぁ!じゃああれも、これも告白もぉ!?」


「同じことしてやる!セラを預けるぞ?こっちへ来い!」

セラを黒羊に渡し、右手を黒羊に伸ばす。


「は、はい!先輩、お願いします!」

黒羊は不知火の右手を強く握る。


「行くぞぉぉ!!」

不知火は走る勢いを全て投げる威力へ伝え、セラを抱えた黒羊を2番換金所の入口付近まで投げ飛ばす。

豪速球で投げられた黒羊は咄嗟に換金所の方へ背中を向け、セラを庇う。そして換金所の中へホールインワンした。

黒羊は激突の衝撃を自身へ全部与えるため、ぶつかる直前でセラを離し、自分がバウンドした時にもう一度、抱え直してセラへの衝撃を緩和した。

黒羊は骨折した体を回復キットですぐさま直しながら換金所を出て、後方から機銃陣地を攻撃する。


「ランカー舐めんなぁ!」

黒羊はサブマシンガンを乱射し不知火の到着を援護する。

しかし、機銃陣地の人数が多く1部のパーティしかこちらを向かず、肝心の機銃は不知火を捉えていた。

不知火は疾走を続け、機銃の攻撃を避けるが前と後ろその両方を攻撃されダメージが蓄積されていく。

黒羊のサブマシンガンの弾が切れ、スナイパーでの単発射撃での援護となる。

不知火は森から換金所前の平地に到着してから走りながら射撃を開始するがそれがかえって仇となり、被弾を増やしていく。

2番換金所前は数々のパーティが集まり乱闘状態となる。




セラはその激突の数分後、目を覚ます。

アーマーはなくなり、HPも半分を切っている。

換金所の入口から見える光景は黒羊がシールドを構えながら、不知火を引きずっているところだった。不知火の頭は半開し、左腕はない。だが引きずられながらも、攻撃を続けている。

セラのキャラは耳鳴りを起こし、回復キットを使わなければまともに動けない状態にあった。

操作プレイヤーの紗夜は一生懸命、腕を動かし、前へ進むがなかなか2人の元へたどり着けない。


黒羊が一瞬、こちらを向いて笑った。

「大丈夫!先輩はちゃんと送り届ける!」

彼女はそういうとシールドを投げ捨て、不知火を両手で抱え上げ投げ飛ばす。

それは換金所の外壁まで届いた。

シールドを失った彼女は防御手段を失い。滅多撃ちになるが、ランカー特有のHPの多さで凌ぐ、けどそれは時間の問題だ。

20秒と持たないのは確かだろう。

不知火はそれを理解し、アサルトライフルを黒羊に投げる。

黒羊はそれを受け取ると、反撃を開始した。

タイムリミットは残り15秒。

その間に自分を狙うプレイヤー全てを倒さないといけない。それが彼女であってもこの状況では不可能だろう。

そう理解できても最後まで抗う。それがNo.5 騒々たる死人(ノイジーデッド)である。


セラが届かない手を伸ばしていると、不知火が駆け寄り注射型の回復キットを打つ。そしてセラの左手にもう一本同じのを持たせる。

「HPの無い俺が行っても壁にしかならない。これはドーパミンだ!セラ!行け!」


セラは立ち上がり、前に進む時不知火が背中を押す。

彼女はGoodサインを不知火にみせ換金所から飛び出した。






「またせた!!ノイジーデッド!!!」

セラは黒羊をそう呼び、G9を構える。そして、彼女の太ももに注射を打つ。

黒羊は感極まって絶叫した。


「「「あはははっははぁぁぁ!!!最高!!まじ最高!」」」


飛び交う銃弾、着弾で砂塵が舞う。回復したHPがミリミリと削れる。セラの方は1発当たれば致命傷。それを黒羊が注射でHPをMAXまであげて治療する、不知火のドーパミンで2人のHPは2倍に跳ね上がっている。2人は既に10回以上は死んでいるくらい攻撃されているが未だ健在。


「ノイジー!あなたのこと、どう整理すればいいかずっと考えてた!」


「それで?答えは見つかった?」

2人は尚も射撃をやめない。セラは3つ目のドラムマガジンを装填し、黒羊はSRの弾も尽き、ハンドガンで応戦している。


「あなたは!」

セラは投げられたグレネードを撃ち落とす。


「あなたは?」

黒羊が空になった弾倉を敵に投げつける。


「恋敵だけど!」

セラは弾のないG9を地面に置き、黒羊に手を差し出す。


「恋敵だけど?」

黒羊が敵を撃ちながら胸のホルスターからハンドガンをセラに渡す。


「私たちの戦友だ!」

セラがそのハンドガンで敵を倒す。


「センユウ!!!!」

黒羊はもうテンションMAXで華麗に弾丸を避ける。

「そう!戦友!いいよ、いい。すごくいい。あー、やばい。セラちゃんも好きになりそう!」


「いいよ、なってもいい!むしろいい!」

セラが黒羊を肯定する。

2人はこのピンチを楽しいと感じていた。

相手プレイヤーからすると地獄だ。目の前には常に瀕死になる経験値ボックスがいるのだ。上位ランカーを倒してしまえばランク80未満は確定でランクが10上がる。こんな美味しい機会滅多にない。だけど倒せない。死なない。こっちの数はどんどん減っていく。プレイヤーはトドメをもらおうと画策しながら攻撃してくる。だが死なない。原因は高身長のランカーが使う回復キットだと断定したプレイヤー達が黒羊を優先して狙い出す。


黒羊は大口径で肩を撃ち抜かれ体が仰け反っても武器だけは常に敵に向いている。

2人はお互いをカバーしながら、ただただ、キルすることを考えるだけの機械と化している。

2人の存在はすぐさまSNSで拡散され、AREA100のオープンレイドの2番換金所は見物客で溢れていた。

面白さ半分で挑戦したものが、すぐさま返り討ちに会う。

しかし、増加し続ける人数に耐えきれず次第に被弾は増えてゆき、回復キットも底をついた。

2人がやられそうになるとどんどん見物人の感情はヒートアップしていく。もう、お祭り騒ぎ所ではない。


不知火は換金所の外壁でもたれ2人を眺めていた。

なんだか体は疲れきったようで動かない。こんな状態になったのは初めてだ。

しかし…



「「不知火・先輩!!」」

「「手伝いなさい・来て!!」」

2人が血まみれになって俺を呼ぶ。俺の瞳に火が灯った。

そこまでして、死地に誘うか。そこまでして勝ちに執着するのか。

俺が忘れていた過去の自分。現役時代の俺はこんなふうにチームメイトを鼓舞していたのだろうか?

たぶんそうだろう。もう歳だの、若いやつには勝てないなど散々逃げて言い訳してきた。この誘いに乗れば、もう後戻りはできない。自分が誘ったようなものだ…この2人を…。


俺は重い腰をあげ立ち上がる。視界の半分は表示されていない。

そして、2人の元へ躍り出た。


2人の元へ飛び込み。スライディングをしながら装備を並べる。

「お前たち2人に朗報だ。出し惜しみはしない!全部倒しきるぞ。ここで荒稼ぎだぁぁぁ!!!」

俺はポーチからコンプリートバレット(完璧な弾丸)を地面に置く。貫通力は標準だが全ての銃の弾に変化する特性を持っている。

そしてコンバットシールドを展開し遮蔽物を作る。

そこにBulletM82 セミオート式狙撃銃のバイポッド(2脚)を展開し50口径のマガジンを装填する。


「出ました!先輩の本気銃!!きゃぁかっこいい!」


「でっか…。」

セラはそれを見て唖然とする。

無理もない。俺の指1本くらいの大きさの弾丸だ。


2人は既にコンバットシールドの中に入り込んでおり、俺がコンプリートバレットと一緒に並べた回復キット1式を使っている。


俺の筋力だとBulletM82の反動を無効化することが出来、安定した射撃を可能とする。

弾を装填し、目標を狙う。当たったプレイヤーは吹き飛ぶ。


「うひゃー、グロテクス…」

黒羊が拍手する。


「よくそんなんスコープで見れるよね…」

慣れてしまえばどうということは無い。弾丸は敵を貫通し後ろの3人も同時で落とす。

それを見たプレイヤー達は逃げ出していく。


「あちゃー、こりゃお祭り終わったかなぁ…」

黒羊は残念そうに肩をおとした。逃げるプレイヤーを問答無用で射撃する。ここはオープンレイドだ。逃げる奴は狩られる運命にある。


次第に人は減ってゆき、30分程度、3人で攻撃し続けただろうか…気づいた頃には、2番換金所付近は静まりかえっていた。



「ふー、大したことなかったな…」

俺は装備一式をしまい、2人を担いで換金所へ避難する。

2人を置いて、シールドを構えながら倒したプレイヤーのタグを回収していく。中には既に取られている物もあり、ハイエナにやられていた。


集まったタグは350以上、あまりに多くて数えるのすら面倒くさくなって途中でやめた。

タグのランクは50~60までで大半でレイド初心者が興味本位で釣られたと予想出来た。経験値的には美味しいが換金率は少ない。

俺が帰ってきた頃、フィールドの時刻は夕方になっていた。


「おかえりー、どうだった?500いってた?」


「いや、あまりに多くて数えるのやめた。」


「えー、1回戻らないとランク上がったか見れないじゃん。」


「黒羊、セラはどうした?」


「動かなくなった…今度こそ寝落ちかもねー。ま!あれだけの連戦よ。オープンレイドでも稀に見るランカー殺し。2ヶ月前はもっと酷かったよね、あはは」


「確かに、あのころはオープンレイドが実装されて間もない頃だったからな。俺たち上位ランカーはまさに経験値ボックスだ。」

換金所のタグ投入口に回収したタグを流し込みながら答える。

お金はパーティメンバー参加者数で割って配分される。

換金が終わってからは換金所内の椅子に腰かけた。

しかし、俺は尻もちを着いてしまった。

「ん?、あぁいつものやつじゃないからか。」


「あれ?先輩ってDXでしたよね?」


「今は違う機体で遊んでる。」


「どーせ、リクライニング壊したんでしょーださぁ…」


「まぁ、そんなところだ。」


黒羊は何かを掴んだ状態で上下に手を動かした。

たぶんリアルで飲み物を飲んでいるのだろう。

VRつけながら飲めるとか器用なやつだ。


「あぁ、疲れたぁ。ロビィもどりたくなぁい〜」


「それは同感だな。今戻ればめんどくさいこと極まりない。」

多分、AREA100の先程倒されたプレイヤーで溢れかえっているだろう。


「だが、戻らないとログアウトできないぞ?」


「あー、それもそうかぁ。セラちゃんみたいに寝落ちしよっかなー。」

黒羊のキャラがあくびをする。

俺もつられてあくびをしたがフルフェイスなんで見えない。


「あー、聞いた?さっきさ。セラちゃんに認められたよォまじ嬉しい」


「そうか良かったな…」


「なんか不満があるみたいだね?どうしたの言ってみてよ?」

黒羊が肘を机につけ発言する。


「悪影響じゃないかって、思っただけだ。」


「悪影響!?いやいや!良影響しかないでしょう!私のおかげでよりこのゲームにのめり込める。先輩はそれでセラちゃんをランカーにできる。良いことづくしじゃないですかぁ?」


「それは良いとして、お前みたいに狂人になりかねないってことだよ。」

俺は大きなため息を吐く。

そのとき、換金所に新たなパーティが入ってくるが、俺たちを見た瞬間飛び出して逃げてしまった。

「ほら、見ろ。なんだか悪目立ちしてそうだぞ?」


「いやいや、さっきの人は僕まだタグ取ってないのに来ちゃったやっぱかーえろって、考えただけですよ〜」

途中、ふざけた口調で黒羊は言う。


俺は一旦、VRをあげ、紗夜の状態を確認する。リクライニングが起動し、ベッドで横になっている。


「ランク50以上にしてそんなミスするやついない。」


「ほんとですかねー?さっきの乱闘見ても、賢いヤツらはまず襲って来ないですよ…」


「それも一理あるな…経験値が欲しいのなら堅実に倒してった方が効率がいい」


「でしょでしょ?まぁ、遮蔽物なしで戦ってた私たちも十分阿呆ですけども、あははは」

「やっぱ、TW使ってると感覚麻痺しますね〜」


黒羊の言うとうりだ。TWなどほとんど禁止でまともに使えるのは上位ランカー同士の戦闘だけ。そんな装備だが1度使えば感覚は麻痺し狂戦士になった気分になる。

あれは、タバコみたいな嗜好品のようなもの。一種の中毒に陥る人間が既に現れており、上位ランカーでも1v1しか遊ばないやつもいるくらいだ。


「お前のTWは絶対回避系だったか?あれはすごいよな。勝手に体が攻撃を避けてくれるんだからな。おかげでこっちはシステムの反応速度以上に素早く攻撃するしかない。」


「はぁ?先輩の方がえぐいですよ!そのシステムより早い攻撃速度、実現させちゃったんですからね。そのせいで私のTWは使い物にならないって証明されちゃたんですよ?」


「まぁ、いいじゃないか。今はそれ使わずとも避けれるんだから。」

黒羊はその絶対回避系TWを使用しすぎたせいで脳がその速度に順応し今はそれ以上の反応速度を見せている。

「おかげで俺はお前と戦いたくない。」


「へぇ、じゃあ何度か練習して私の反応速度超えてくださいよ。」


「無理だろ…勘弁してくれ。」

俺はVRを外し、紗夜を起こす。彼女はそれに気づき起き上がる。

黒羊は不知火が誰かを起こす動作を確認し、それでセラが起きるのを見て確信した。


「先輩、さりげなく起こしてますけど全部、気づいてますからね。私のハートにズキズキ来るんですけどどうしてくれるんでしょうかね。」

黒羊はセラを抱きながら言う。


「すまないな。仕方ないだろ。このままほっとけないしな。」


「確かにそうですけどぉ、セラちゃん。先輩がいじめてきますぅ」


セラは寝ぼけながら返答する

「あぁい?それぇわぁ、よーくなーいぞぉ」

黒羊はそれを見てセラの頭をワシワシと撫で回す。

「うぃ、うぉう…」

セラはVRの画面がグワングワン揺れるのを見て酔う。


「それ以上したら危険だぞ?」

俺はそれを止めにかかった。


「あー、申し訳ない。セラちゃんがあまりにも可愛くてつい。」

それは確かに同意見だが、時と場合を考えて欲しいものだ。


「いつまでもこうしておくことも出来ん。とりあえずマイハウスに避難しよう。そこで今後の打ち合わせをする。」

電子端末を開き帰還するためのコードを換金所内のコンソールへ打ち込む。

コード保持者のみ換金所から出られる仕組みだ。メンバーの1人でも持っていれば全員ここから帰ることが出来る。


「いぇーい、やっと正式にパーティメンバーの一員になれましたよ。5ヶ月間長かったなぁ〜」

黒羊は大きく背伸びをした。


そのまま3人は転送されていく。セラは転送途中で完全に起き、戦闘が終わったことを理解した。






ロビーに戻った不知火はすぐさま2人をマイハウス招待を送る。

セラは少し遅れたが迫り来る群衆を避けることはできたようだ。システムで重ならないようなっていても何百人に囲まれるのは気持ちが悪い。


マイハウスに到着してからは目を輝かせた黒羊が家具や遊具、ミニゲームを物色していた。リアルでやられたら相当、引いてただろう。

セラは着いたや否やすぐソファに行きもう一度深い眠りについた。俺は黒羊に1回休憩するよう話して、自分も離席表示を押し、紗夜の家のキッチンへ向かい、コーヒーを作ることにした。ちなみにこのコーヒーも俺が彼女の家で備蓄させているものだ。

紗夜はゲーム以外にほんと、興味が無い。黒羊と話していた内容から察するに俺の責任でもあると感じていた。なんとか改善しなければと思い。考えたため、全く休憩にならなかった…。







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