オープンレイド
2人で射撃訓練をしていた時、セラが質問してきた。
「不知火って金策どうやってるの?」
「基本はオープンレイドに行ってる。」
オープンレイド、それはAREA100に存在しているフィールドでランクが50以上のものが参加出来る。ソロから最大4人のパーティで参加できるPVPのことを指す。そのフィールドでは倒したプレイヤーのドッグタグを回収し換金所でお金と交換する。
「AREA100はマップの大きさが最大で週ごとに地形が変化する。また現実の時間の3倍で時が進むから8時間で一日が終わる。そのレイドに参加している他のパーティ全てが敵で、倒したプレイヤーのタグを回収しそれをお金に変える。」
「ふーん、ちなみにTWは使えるの?」
「全てのTWが使えないな。ランク90以下のプレイヤーが不利となる。」
「え?それじゃあ、今日の大規模戦では使ったけどそれもオーバーパワーじゃ……」
運営が決めたレギュレーションに違反してなかったし大丈夫だろ。
「今回のデータから使えなくなる可能性はあるかもしれん。」
「話を戻すが今日で大量の出費になったからな。オープンレイドに行ってもいいんだが、セラはまだ始めたて」
俺がそう言っていると彼女が弾薬置きに銃を置き、割り込んできた。
「お金はちゃんと返すって言ったから。初心者とかこの際どうだっていい。まずは行って練習しなきゃ。射撃訓練も重要だけど実践あるのみ!」
「タグだけ取られなければいいんでしょ?簡単じゃない。」
「うーん。相手を倒しても必ずタグを貰えるわけじゃない。自分から回収しないといけないし、集めたタグをきちんと換金所に届けないとお金にならない。この2つがスムーズにできてこそ初めて金策となるんだ。ましてや、換金所はフィールドに5つあってそのどれもが敵に狙われやすい位置にある。中に入ってしまえば死ぬ事がないけどね。」
「漁ってるのを狙われる。待ち伏せされる。その危険性があるか。でも不知火の耐久値なら余裕で突破できるじゃん!」
セラは楽勝といった表情で答える。
「俺は1人でオープンレイドに行って稼いでたんだぞ?この装備無しで……こいつだってついこないだ買ったばかりだ。」
「オープンレイドで戦うことに慣れれば奇襲されても殺られなくなるぞ?だからセラが十分に戦えるようになるまで俺は見守る。」
「えー、そんなぁ。まじかぁ」
落胆しているとこ、申し訳ないが俺はセラをランク97まであげたい。その為ならば鬼にでもなるつもりだ。
「セラの言うとうり、実践あるのみだ。早速行くぞ。弾薬は補充しておけ。弾は貫通力が一番いいやつにするといい。アーマーに吸われたらダメージなど与えれないからな。」
俺はセラに胸部アーマーを付けながら説明する。
高額な装備になる程、耐久値と非貫通率が上昇するためランクが高い相手は良い装備をつけていることが多いためである。
中には速度重視でアーマー無しで戦う奴も1部いたりするけどな。
「はー、いつも思うけどアーマーってゴワゴワしてて動きづらい。もっと薄くて硬いのは無いの?」
セラが自分の装備をいじりながら言う
「サイボーグアバターを購入したらいいぞ。」
俺は自慢げに腕を組む。
「そんな簡単にランク90行けるか!」
彼女が俺の腹に1発殴ってから訓練所をあとにする。
俺がやられた振りをして膝を着くと、ガッツポーズをしていた。
俺が外に出るとセラからフレンドメッセージが送られてくる。
〔AREA100で待ってる。〕
行動が早い……パーティリーダーからすると助かるな。
AREA100のロビーに到着したらフィールドの入口前でセラが待っていた。
「急にどうしたんだ?」
「いやぁ、待って見る側にもなりたくてね。」
いつも待たせてるやつが何を言ってるんだか……
AREA100のロビーにはレイド帰還者が集まっており、作戦室で話し合うものや装備の点検、好きな時間帯で開始するため仮眠をとるプレイヤーなど様々だ。
ここにはTWの資金を貯めるためランカーが多く滞在している。
常にランカーたちは敵対関係にあり虎視眈々と上位の座を狙うために目を光らせている。話しかけようとするものはあまりいない。
ロビーの内装はフィールドの環境に合わせた作りで今回は森林ステージのためフィールド入口は神社の鳥居が立ち並び、幻想的である。
「中はオープンワールドになっているから、開始から1分以内は無敵状態だがその間に遮蔽物まで行かないと危険だ。森林ステージは特にSR装備が多く、ギリースーツを着ているプレイヤーがほとんどだ。今回はセラがオープンレイドに慣れるため、俺はSRで援護に徹する。だから無線機を渡しておくぞ。これで指示を出す。自分から動けるようになれば知らせてくれ。」
ポーチからイヤホンタイプの無線機を出す。
「援護と敵の情報だけでいいよ。教えられた通りにやってるだけじゃ上達しないからさ。あ、でも提案とかはしてよね?」
セラが拳をこちらに向けるので俺もそれに合わせる。
「よし、これで決まり!」
セラがニコニコと笑っていると……
「なにが決まったのですか?先輩?」
突然俺の背中を指で撫でられた。そして、全く足音も気配さえしなかった。俺は咄嗟に振り返り、セラを庇うように前へ出る。
前へ出た拍子に声の主とぶつかる。というより故意にぶつけた。
「いたっ!そんな酷いじゃないですか!あの激戦を潜り抜けた同志ですよ!?」
目の前で尻もちをついた女はオリーブカラーのタクティカルスーツを上下に着て、太ももには大量のマガジンポーチを付けた軽装をしている。髪はオレンジで長いセミロング。そして緑の迷彩柄をしたハンター帽を被っている身長180cm。体型は細身。
「お前、今日は用事でログインしないって言ってただろ。」
「いやぁ、それがですね?用事をドタキャンされまして……暇になったのでお金集めをっと。」
彼女はそういって薬莢をフィールド入口に向けてフルスイングした。
その様子を見たセラが俺の背中からちょこんと顔をだし、挨拶する。
「はじめまして、セラといいます。うちのものがお世話になっているようで、大変申し訳ないです。」
「へー、へー。セラちゃん。私はNo.5 騒々たる死人の黒羊!よろしくね。」
「の、ノイジーデッド?不知火、この子厨二病?」
セラがゴミを見るような目で言う。
「何を言いますか!この称号は最強たる面々。ナンバーズたちの証!そ、こ、の!クソデカ先輩も持ってるぅ!」
黒羊が俺の胸部アーマーを突っつく。
「お、お前!不知火にくっつきすぎじゃない?」
「はいはい、ヤキモチ妬かなーい!ではでは、先輩の称号を紹介しましょう。彼は……」
俺はすぐさま黒羊を止めにかかるがひらりと躱されそのまま足をかけられて倒されてしまう。
「神速の不知火!その速さはナンバーズのまさにトップ!青の閃光とも言われ、彼を捉えることは誰もできない。」
決めポーズを取りながら俺を右足で踏みつける。
セラは俺たちを哀れな目で見る。
「セラ、これは本当のことだが。誤解しないで欲しい。自分でつけたわけじゃないんだ。」
「そんな称号あるのになんで今、踏まれてんのよ……」
セラは嘘だと言わんばかりに呆れている。
「セラさん、そこまで言わないであげて。先輩は格闘戦が苦手なの。」
黒羊が可愛こぶった口調で言う。
「とまぁ⤴︎ 紹介はここまでで、先輩はなんでこんなかわい子ちゃんと遊んでるのかなぁあ?」
踏みつける力が強くなり、身動きが取れなくなる。
「今までソロだったじゃん。私のパーティ申請だっていつも、いつも無視して。おかしいなぁ。おかしいよねぇ!」
俺の画面上に1v1コールが届く。
「絶対承認しないからな?俺には先約があるんだ!」
「先約……。へぇ、VIPコールも使っちゃおうか?」
VIPコールそれは送られれば強制的に戦闘させられるランカー同士でのみ許される高額な1v1コールである。
「やめろ!提案だ、提案がある!」
俺は必死に戦闘を避けようとする。
「ほぅ?聞こうじゃないか?」
「セラのオープンレイドでの立ち回り、戦闘方法を一緒に教えよう!な?いい案だと思わないか?」
「OK!それが欲しかったんだよ!」
黒羊は足をどけ、離れる。
「んで、彼女は先輩の弟子ってことだね。いつもソロだったから友達いないんじゃないかって心配だったよ。これから上位ランカーとバチバチに戦っていく予定なんでしょ?お金はいくらあっても足りないよね。任せなさいよ!格闘戦の鬼、黒羊。先輩の頼みじゃあ断れません。全力で支援します。」
「あ、それとオープンレイドでも経験値溜まるから、一日500名はキルとっとくと3日でランク80行くよ。あとあと、お得情報なんだけどさ。ランカーになれば使えるVIPコールってのがあって、それ使ったらどのランク帯でも1v1挑めるからね。これ、アイテム説明に載ってない裏技。」
「それはお前しかやったことの無いやり方。付け加えて、TWより高いVIPコールを複数枚所持しているのも、もちろんお前だけにしかできない芸当だ。」
「彼女が強いってのはわかった。でもさっさと移動しよう、不知火。まわりのプレイヤーがジロジロ見てる。」
セラがオドオドしながら俺の背後に隠れようとする。
たしかに、周囲の空気が変わり他プレイヤー達が獲物を見るようなギラギラした目に変わっている。
「これだから低俗なハイエナたちは嫌になるよね〜。上位ランカーのタグなんて取れりゃあ一攫千金よ。」
黒羊はパーティ申請を俺に送り、足早にフィールド内へ入っていく。慌てて、許可を選択しセラを連れて入口へ急ぐ。
鳥居の入口の先は深い深い森の中。自分たちの位置は正確には分からない。BGMは無く俺たちの足音と動物の鳴き声、乾いた銃声が聞こえる。
「やってるやってる。今の方向は1番か2番換金所の方だね。セラちゃん、ハイエナ達は換金所を何時間も狙い続けているんだよ?やばいでしょ、あはは」
スキップしながら先導する黒羊はニヤニヤ笑っている。
「黒羊、余裕だな……」
「先輩は全てにおいて慎重だからね。わたしはっ」
と黒羊が言いかけたとたん銃声がなる。俺たちが銃声に気づいたのはとっくに弾が発射された後で至近弾だった。
俺は咄嗟にさけぶ
「アンブッシュだ!下がれ!」
黒羊に警告したが彼女はその頭を狙った至近弾を首を傾げるだけで避けた。
「わかってるよ、先輩。安心して。」
黒羊は腰のホルスター内のハンドガンを傾けて反射的に撃つ。それは草むらに隠れていたプレイヤーのおでこを貫通しヘッドショットした。
「危ないねー。危ない危ない。セラちゃん、こうやってリスした瞬間に狙われるけど、実はまだ無敵時間なんだよね。有効時間は1分。でも敵さんは緊張してビビってたから時間経過を待たずして撃っちゃった。大変惜しかったね〜。んで先輩。下がれだって?無敵、知ってたでしょ?」
彼女は死体をあさりタグを回収する。
「常に警戒する。それが無敵時間でもだ。」
「慎重だねぇ?でも、かっこよ……」
セラはビビりきっている。初めは皆そう。アンブッシュと言うのはいつになっても慣れない。
「セラ大丈夫か?このまま続行してもいいか?」
「ごめん、急だったから驚いただけ。大丈夫、続けよう。」
セラはG9を構え直す。
「強い子だね。アンブッシュに出会ったら怖くて固まるか、後ろを向いて逃げる。初心者にはありがちだよ。」
黒羊はそっとセラを抱きしめる。
「私は子供じゃない。」
セラがキッパリと言う。
「え?うそ、ほんと?」
黒羊がこちらを見て確認をとる。
「少なくとも、お前より年上だ。」
「あぁ、申し訳ない。セラさんも先輩でしたか……」
黒羊は手をどけ両手を合わせる。
「気にしなくていいよ。このゲームで女性プレイヤーに会えるなんて嬉しいし。」
セラは照れくさそうにして、両手を合わせていた黒羊の手を離してあげる。
「わぁ、なんてお優しい。先輩!この方を必ず生きて返さねば!」
黒羊は立ち上がり、サブマシンガンPPsh-41を取り出し前方を警戒する。
そして、死体を何名か発見する。
「先輩、開始すぐにプレイヤー、しかも1人。そして3名の遺体。これは我々、後出しになりますね。セラちゃん、このオープンレイドのリス地はランダムだけどすぐには変更されない。これは敵と遭遇しやすいようにシステムがそうなってる。さっきのプレイヤーとこの遺体の数、多分、同じパーティと考えるべき。よってさっきのプレイヤーを発見できない。もしくは逃げざるおえなかった先行者が存在すると思った方がいい。」
セラはこくこくと頷く。
俺は死体の銃痕を確認し、綺麗に足だけ攻撃されているのがわかる。
「黒羊、レッグメタだ。」
「あー、ならさっきのプレイヤーのアーマーに吸われたんですかねー。あぁ、レッグメタって言うのはね、高ダメージの弾丸をアーマーのない部分に当てて出血で相手を倒すやり方なんだよね。でも高ダメージの弾って貫通力が乏しくてアーマー以外に当てないと効果がないんだ。」
黒羊は周囲に目を配りながら、不審に思ったところへエイムを向けつつ話す。
「先輩、それ。たぶんシャッガンじゃない?」
「そうだな。この破壊よう。ショットガンだ。」
死体の足はちぎれかけており惨い状態にある。
セラは見ないように顔を背ける。
一行が死体を見ていると、銃声が聞こえた。
「先輩!漁父りましょう!」
黒羊はそのまま飛び出して走り去る。森の中は移動速度が低減するデバフがかかるのになんて速度だ。
俺はセラを担ぎ後を追う。
黒羊が向かった先から、口径の小さい弾を連発する音が聞こえる。
俺は黒羊を視界に収めたところでセラを下ろし
「セラ木々をつたいながら着いてこい!相手は複数人だ。黒羊が急襲したはずだから余裕はある。」
俺はそのまま森を突っ切り黒羊の隣まで行く。
セラはきちんと後ろの木に隠れる。
「黒羊、状況は?」
「敵はざっと4、5人。シャッガンプレイヤーは排除。残るはフルパで2名落とした。多分、前方の岩場で味方を回復させてる。」
「了解。2名はどこを負傷している?」
木から顔を一瞬だけ出し、岩を確認する。岩の左側からこちらを狙っている。銃口が見える。距離は20メートルほど。
「多分、上半身。片方は大量出血。」
「ナイスだ。さすがデッドマン。」
「嬉しいな。またそうやって呼んでくれるってね!」
黒羊は今の位置から右の木、そのまた右と回り込むように移動する。俺はアサルトを今の位置から岩場へ撃ち込む。
セラは先程まで黒羊がいた場所へくる。
「不知火、この場合どうすればいい?」
「セラのハンドガンは反動が大きいからここからの撃ち合いは不利だ。近づかないといけない。だが行けば落とされる。俺が射撃したあと木から岩場を覗け、相手に狙っているぞと威嚇し続けろ。それでも撃ってきたら、構わず身を隠せ。」
俺は即座に攻撃開始し、セラに威嚇させる。
攻撃開始した時には相手も同じ考えなのか同時に攻撃してきた。
セラがその相手のヘルメットに弾を当てた。
それに気づいた2人目がセラのこめかみをかすらせる。
「セラ、威嚇だけでいい!相手の方が威力と速さが違う!」
セラはすぐさま隠れる。
「セラ、倒したい気持ちはわかるが抑えろ。アタッカーはあくまで黒羊だ。彼女が裏取りしきるまで相手を釘付けにするんだ。」
セラの手は震えており、大規模戦の時のようなハイにはなってないようだ。
俺は射撃位置をずらし再度攻撃する。
また攻撃が合わさるが俺の位置が変わっていたため弾は外れる。
そしてこちらの弾で相手のヘルメットを貫通させる。
そのあと、連射の音がし銃声は止んだ。
黒羊が岩場に登り、そこで伏せて終了を教える。
セラが木から離れ彼女の元へ向かったあと、俺の位置へコロコロと金属が転がる音がした。
3秒後それは爆発する。
セラが戻って来るが俺がそれを制止させる。
「来るなぁぁぁぁぁぁ!!!!」
黒羊がすぐさま、セラを引っ張り岩場へ隠す。
くそ、やられた。
俺は損害を確認すると、四肢の耐久値が半分になりアーマーは完全破壊される。
グレネード。それはどれだけ良いアーマーでも防ぐことは難しい。いいグレネードは爆発範囲と爆発までの時間、破片量が増加し四肢を破壊させる。
サイボーグアバターでなければ即死だ。
俺が起き上がる間、黒羊が周囲にグレネードを投げる。そして敵が逃げる音がした方を攻撃し続ける。
「くそ、やろぉ!!」
黒羊が武器をSR、M1891に切り替えプレイヤーをヘッドショットで倒す。
しかし、プレイヤーはまだ存在し、それが新手のパーティだとわかる。
俺は森を駆け、黒羊が狙った方向へ行く。
そこには2人のプレイヤーがアサルトを構えた状態でいた。
すぐさま、スライディングの姿勢をとり低木を潰しながら2名を射撃する。相手も負けじと攻撃するが俺がしゃがんだせいでエイムが振れ当たらない。2名を倒したあと、木陰に隠れ回復する。
セラには無線で生存報告をした。
後に、黒羊たちが合流する。手には5人のタグを持っていた。
「先輩、お見事ッス。まさかグレ直撃で生きてるってバケモンですか?」
彼女も反撃をくらいHPが減っている。しかしアーマー値が減ってないことから被弾がほとんどないとわかる。
「セラちゃんはお守りしました。しっかし、最初のソロ含めて3パ。そのうち1パは同じく漁夫。ひゃーキッついきっつい。」
白い歯をみせつつ言う彼女も同じくバケモンだ。
「不知火ごめん。」
セラは多分、自分が飛び出したのを責めているのだろう。
「初めのうちは誰でも判断を謝る。今回で十分わかっただろう。それと自分の技量以上のことはそれ相応になってから行え。」
「わかった。肝に命ずる。」
「いやいやぁ、セラちゃんも十分働いたよ〜。見たよー、綺麗にヘッドショットしてたよねー。しかも初弾で!」
黒羊はセラの頭をぐりぐりと撫で回す。
「う、うぁぁ〜」
セラはその手をどかそうとするが黒羊の方が筋力が高いのでどかせられない。
そうしているとまた遠くで銃声がした。
「あー、今回はいい部屋当てた見たいですね。わんさかいますよ。」
黒羊は撫でる手を離し。弾を込める。
セラもそれに習い、マガジンに1発込める。
俺は回復を終わらし、一息吐いて立ち上がる。
「残り3人のタグを回収したら移動だ。」
今度は俺を先行させ、黒羊とセラが後続に回る。次は黒羊から援護を教わるようにさせる。
その方がいい気がした。
しばし、森を歩くと俺のよく知る地区に来た。
「ここは多分マップの南東。正方形のヤグラが見えるだろ?あそこはスナイパースポットになっている。」
前方には6つのヤグラがある。
「1番奥が2番換金所がちょうど狙えるところになる。必ずと言っていいほどプレイヤーが潜んでる。」
身をかがめろとハンドサインを出す。
「先輩、その耐久値活かして、囮になってよ?ここからモシンで抜く。」
「セラちゃんは周囲警戒ね〜。影、足音、草を擦る音。異常が分かったらすぐに私の背を叩いて。倒すから。」
ほんとに頼もしいな黒羊は。うーん、初戦は見て覚える事をやった方がいいかもしれんな。
「わかった、ここから30メートル離れたら全力疾走する。ちゃんと倒せよ?」
俺はそう言いきったあと、中腰で草むらをかき分け進んでいく。
後方からはセラに指導する声が聞こえた。
「セラちゃん、あの男のどこに惚れたの?教えてよ。」
「は?いや、そんなの急に言われたって。」
「隠す気ないのね。へー。」
黒羊はニマニマしながらスコープを覗く。
「付き合ってるんだー。」
「はぁ、戦場に来てまで聞くの?そんなこと。」
「きくきくー、戦場だからきくんだよぉ〜。今、めっちゃ興奮してるの。セラちゃんに会った時からずっとね。」
「えぇ、気持ち悪い。」
そう言いながらも2人は警戒を怠らない。
「私はね、先輩の綺麗なコントロールが好き。」
突然の告白にセラはビクッとする。
「へぇ、そうなんだ。」
セラの声には焦りがあった。
「で、でもわかる気がする。私が不知火を知ったのは、ゲームショーでやってたデモプレイだった。彼はそのときもFPSをやってて迷いもない動作と無駄のない射撃、そして動きのスピード感。それを見てゾクゾクした。」
「おっ、結構話すじゃん。続けて。」
「う、うぅ。それで名前をしってSNSとか、配信名とか探して応援して、彼のスポンサー企業に入社して、同じゲームを遊んで。それでとある企画で一緒の仕事をして、それから頑張った。」
「ふーん。彼って結構、めんどくさいでしょ?」
「そ、そんな時はあるけど。ゆ、許せる。」
「いいじゃん、いいじゃん。私もね。彼のゲームセンスに惚れた。だけど最近、プロゲーマー引退したでしょ?もう歳だっていってさ。それで躍起になって探して、このゲームにいると知った。私たちは同じってことだね。」
それを聞いたセラはまずいと感じる。この女は危険だと。
「でも、セラちゃんに譲るよ。今日の大規模戦のハイライト見たよ。ずるいな……私もああして欲しかったんだ。でも今は守られる立場にいない。同じ土俵で彼と戦ってる。私は今、彼に背中を預けてもらっている。信頼されている。あなたとは別の感情で、好きって言うのはあなたに。戦友は私がもらうっよ!!」
黒羊が6番目のヤグラからでた頭を撃ち抜いた。
「ヘッショ頂きっ!」
「まだ、いるよねー。出て来い出て来い。」
黒羊に撃たれたプレイヤーを庇うように新たなプレイヤーが全力疾走中の不知火を攻撃する。それをまた撃ち抜く。
「はいはい、おつかれー。先輩に撃ったって当たらないって〜。避けに徹した先輩はもう止められない!」
3人目がヤグラから逃げるのを黒羊は逃がさない。
その後、不知火がヤグラの中に入り制圧射撃をする。
戦闘は終わったようだ。
セラは困惑する。恋敵ってこと?戦友は貰った?どういうこと。戦友以上それ以下。その関係って許せるの?
「困った顔をしているね。私は君たちの関係を応援するよ。考えすぎない方がいい。まだまだ、戦闘は終わらない。今日は500キルするまで終わらないかなー?あはは」
黒羊はM1891を肩に乗せて不知火の所へ移動する。セラはそれに続くが、足元がふらつく。目眩がして立ち止まる。それはゲームキャラのセラの目に起きたのではなく、紗夜の目に現実で起こったことだ。セラはそれを自キャラのスタミナ切れだと思い込み。歩くが、倒れそうになった。おかしいなと思っていると途中で止まる。自キャラは傾いたまま止まり、セラだけ時間が止まったようになる。
「あれ?セラちゃん。接続障害かな?大丈夫?」
黒羊は言いすぎたかなと思い、セラを動かし木陰に隠して、戻ってくるまで守りの体制に入る。
セラの思考が停止していた時、耳元でまことの声が聞こえた。
「紗夜、大丈夫だ。俺はお前しか選ばないし、それは永久だ。君を愛している。」
そう聞こえたあと、遠くのヤグラから返り血を浴びた不知火が出てくるのがわかる。
紗夜の思考は余計に麻痺し、オーバーヒートする。
「あちゃー、完全に接続障害だよー。ゲームぶち消しかな。やりすぎた私……」
黒羊は頭をかかえ、セラを担ぎ不知火の方へ走った。
黒羊は不知火の元へ着いた瞬間、膝蹴りを入れられ、吹き飛ぶ。
もちろんセラは回収済みだ。
受身をとった黒羊はさけぶ
「なんで?どうして?ミスってないですよ!」
「めちゃくちゃミスってんだよお前はぁぁぁ!!!」
その不知火の声は2キロ先の2番換金所まで聞こえる程の爆音だった。
矛盾点を修正致しました。