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パープル・レイン  作者: アジサイ
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20/20

1

年度内に大事な試験があるため、もう1つの連載小説は一旦お休みします。こちらは隔日投稿を目指しますが、やはり不定期気味になるかも(´・c_・`)

「ここから中に入れるよ」

「みたいだね」

 草原を突っ切ること約15分、僕たちは林の()()に到着した。ララの歩幅を気に留め歩くことは、出端は酷く蕪雑(ぶざつ)な動作になったけれど、5分ほどですっかり慣熟に至った。まるで以前親しんでいた慣習を思い出すような作業だった。そのことに賛辞を呈するかのように、ちょうど目前に人が2,3人通れるほどの()()()()が迎えてくれた。地面も林道だけは僅かに落ち込み平たく整備され、焦げ茶色の土が顔を覗かせている。

 ここに至るまで、ララは幾つか新奇の話題を提供してくれた。この試験は、飛(飛行)、薬(薬学)、論(魔法の理論並びに歴史)、占(占い)、闘(決闘)の5科目で構成されていて、それらの試験を受ける順番は受験者自ら自由に組み立てられるらしい。ララは最初に受験する「飛」には絶対的な自信を持っているが、4つ目に受験する「占」を不得手としているそうだ。ララとしては最初の「飛」で勢いをつけ、2、3はそれを維持し不得手を()()()()、最後に「闘」を迎える心積もりらしい。「薬」と「論」、どちらを2つ目そして3つ目にするかは、「飛」の合格後に決めるとのこと。僕は、悪くない組み立てだ、と応えた。そして能う限りのサポートを約束した。が、今のところどうやって、そしてどのようにララの役にたてるのか、肝腎な部分は皆目見当がつかない。そもそも、()()()()辿()()()()()()()()分からない。次の瞬きの瞬間には…………かもしれない。いや、悲観的に捉えるのはやめよう。そんなことに()()を割くべきではない。()()()()()()()()()()、そう考えていよう。……これもお見通しか。

 次いでララの故郷について聞いた。名はキハル市。漁業と農業が盛んな街で、その中のダイカンという山あいの小さな町に産まれたらしい。農業と牧畜で生計を立てている町だそうだ。ここまで聞けたところで、林の入り口にたどり着いた。

 林の内に踏み入ると、坂が僅かに急になったのを足の裏と健の張りから感じ取ることができた。それは何か観念的な区切りを象徴しているように思えたが、具体的に何を象徴しているのかは、もちろん分かる由もない。抽象的だが分かることが1つ、僕に関連する区切りだということ。()()()()()()。この世界では総てにおける大前提だ。

 林を構成する樹木群は細長で間隔が広く、林道を除く地面には下草――草原の草々より背丈が低い――が茂げている。それらがまるで夜空の星雲のように、樹木の間から溢れ落ちた月光を反映している。空に浮かぶことの出来ない代わりのように。そのお陰か、林の中は妙に明るい。反対に林道に舞い降りた月光は土に吸収され、無骨なその色を幾らか柔和な印象にするだけに留まっている。東洋人の皮膚の色に近いように思える。僕には反映の無い土の方が()()()()()()。下草も土も、いずれも()()()()は見あたらない。

 耳に入ってくる音も、確と変化している。

 からころざら。

 先ほどまで草原の上を走っていた分厚い風が、ここでは木々の葉を叩く。そこから発せられる音響は()()()()で、土を踏みしめ歩いているのに、まるで水の中に身を任せ漂っているような感触を僕に錯覚させた。足音もそのおかげでほとんど聞こえない。実に気持ちがいい。

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