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前話の最後の方に台詞抜けがあったので、良ければまた見直してほしい(。>д<)
確認しなくても矛盾がないように構成し直したけど。
「――そうだね、もっとちゃんと、僕の世界について話そうか」僕はララの瞳に向かって語りかける。「ララ。まず、科学って分かる?」
「科学? もちろん分かるよ。説明しろって言われると難しいけど」ララは答える。
「ふふ、そうだね。僕も説明しろって言われたら、容易にはできない。――じゃあララ、例えば100m以上、中には300m以上の長さのとてつもなく大きな鉄の塊が、馬くらいの速さで海を渡ったり、音よりも速く空を飛んだり、手のひらサイズの箱で世界中の人と連絡を取ったり情報を共有できる。そんなことが想像できる?」僕は続けて質問する。
「……何それ? 全然分かんない」ララは、まるで聞いたことのない外国語を耳にしたような表情でそう言った。
「僕のいたところではね、魔法そのものはないけれど、それ以上と言っても恐らく過言ではない科学がある。そして大半の人間が、程度の差こそあれ、それを自由に使用することができるんだ」
「…………すごぉい!! 私たちの魔法ではまだ想像すら出来ない世界だよ! そうだよ! 魔法がないんじゃない。いらないんだよ。カエデの世界は。それって素晴らしいことじゃない!」
ララは、たっ、たっ、たっ、と足を踏み鳴らしながら、はつらつとした声をあげた。昂奮するとふいに出る、ララの可愛らしい癖のようだ。その振動が、包まれている右手から僕に伝って来る。1度、それが心臓の鼓動と重なって、僕を心地よい動揺に誘った。
先に僕がララの右手を包み込んだ際、そこには男性特有の横紙破り的な力みがあったと思う。それはララを幾分か不安な心持ちにさせたかも知れない――それでも僕はそうせざるを得なかった――。しかし、ララが幾ら自身の身体に力を込めようと、微塵もそのような力みは現出しない。今僕の右手を包み込んでるララの両手には、手前勝手な力の流れがまるで無いのだ。それはララが女性だからという平明な問題ではない。もっと根本的に、ララの内にそういった概念が存在しないのだ。その意味することについて、僕は思いを巡らさずにはいられない。その意味が、けして僕の手前勝手な願望によるものじゃないことを願いながら。
「私たちの世界はね!」
「……うん」
ララは僕から手を離し、色取り取りな身振り手振りを入れながら、親に初めて知ったことをひけらかす子供のように、僕にこの世界のことを語ってくれた。僕は少し、またそれをなごみ惜しみながら、作曲家が譜面に音符を書き入れていくように、適当なところで相槌を入れた。本当に良いセッションだったと思う。
同時連載。『異世界ファンタジーはハッピーエンドを求めている。』もよろしく。
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