表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/6

過去編3

「ーすっごくきれいだったね!僕、本当にうれしいよ!!」

興奮冷めやらぬ様子で蒼は話している。

「よかったな」

「うん、僕今日のことずっと忘れないよ。美歌ちゃんの歌も今日凄かったよ」

「もー大袈裟!それにそんなにほめても何も出ないわよ」

「えへへ」

「じゃー、またな」

「うん、バイバイ、二人とも」

蒼は家の前で手ををぶんぶん振っている。


二人は美歌の家に向かって足を進めた。

「色々あったけど今が一番楽しいな」

「退屈なんてしてる暇ないもんね」

美歌の家の前で、ちょうどお客さんを見送っている百合がこちらに気が付く

「あら、大河。久しぶり!」

家の前まで二人が足を進めた。


ーその時。

気持ちの悪い揺れがあたりを包む。

思わず身を寄せ合っているが、急激に強くなる揺れ。

あちらこちらからガラス音が聞こえ、警報音が鳴っている。

「ー!」

その瞬間、何かに気が付いた百合が強い力で二人を押した。

転がった衝撃から起き上がり、開けた目の先に広がっていたのは壊れた家だった。

「叔母さん!」

「百合さん!」

いつの間にか揺れは収まっていたが、叔母さんの姿が見えない。

ーやがて、あちこちからサイレンと叫び声が聞こえ始めた。

泣き叫ぶ子供の声、名前を呼ぶ声、助けを求める声ー

「おい、二人とも大丈夫か」

近所の人が声をかけてきてくれた。

が、叔母さんを呼び続けている美歌には声は届かない。

「ここに…」

大河が消え入りそうな声で答えた。

「!」

「よ、よし、あっちで今助けている田中のばあさんを出したら次ここに来る。ちょっと待っていろ」


近所の人たちが集まってくる。

がれきを押しのけていく。細い、手が見えた。

「ここだ!」

「くそっ、これがひっかかって出せねぇ」

「専用の器具でもあればな」

「ー美歌ちゃん、手を握っていてやんな」

「…叔母さん」

美歌は手を握った。幼い頃両親を亡くした美歌を迎えに来てくれた手。悩み事があるときに、美歌をぐいぐい引っ張って散歩に連れ出してくれた、そのままの手だ。

「ーおい、大河。そろそろ消防の応援がつくころだ。探しに行ってこい。」

「わかった」

大河は無我夢中で駆け出した。
















評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ