過去編2
街のはずれにある、建物。
美歌と大河が幼いころ一緒に過ごした施設だ。
今日はここも外部からの人でにぎわっている。
「あ、園長先生、バザーの売れ行きはどう?」
「あらぁ美歌ちゃん、元気そうね。大河君が手伝ってくれていたのよ」
「よ、俺はもう一仕事したぜ」「はや」
「ねーねー美歌ちゃん聞いてよ、最近はね、晃君がすっごく背が伸びてねー」
「園長先生、お忙しいところ失礼します」
話し込んでいる三人にスーツ姿の男が話しかけてくる。
「あら、ああ、あれね、美歌ちゃん、ちょっと手伝ってくれるかしら」
二人は園の奥に向かっていった。
「やぁ」
「んだよ、俺、お前のこと苦手なんだよ」
残された二人の会話は弾まない。
「っはは、なんで?」
「いやーなんかいつも心がこもってないっていうかさー、あんた、流れでこの支援もやってるんだろ。まぁ、それでも俺達にはありがたいんですがね。いい大人ならもうちょっと隠せよな。鋭い奴らばっかりなんだから」
「あはは」
「じゃ」
一人残されたは呟く。
「いやぁ、一回り以上も年下に見透かされるなんてね」
車の中。
「ーなぁ、葛西、親父の地盤を継がなきゃダメか」
「その前提であなたを育ててますからね、今も」
「ー俺よりもっと適任いるだろ。」
「でしょうね、ただ、こういう古い形も必要なんですよ。多分。」
環境に恵まれている、というのはわかっている。ただ、後継ぎということを除いて、なぜ俺なのか。
俺じゃなくてもいいのではないか。もっと適任がいて、この地盤が喉から手が出るほど欲しい人がいるのではないか。その思いが消えないでいる。
どれだけため息を吐き出しても、その思いはちっとも減らなかった。
駅前広場
♪~♪~~♪
パチパチパチパチ
片付けをしている二人に話しかけてくる。
「ーなぁ、うちで歌ってくれよ~いいでしょー」
「-そういうつもりはないとお伝えしたはずです」
「もったいないよ!今は弱小事務所だけどさ、きっと大きくしてやるから」
「メジャーにしかできないことも、今しかできないこともあるってば。ねぇ本当に、一ミリも興味ない?」
美歌は答えない
「ーいやーこいつ頑固なんだぜ?無理無理」代わりに大河が答える。
「しつこさでは僕も負けてないはずなんだけどなぁ。ーわかったよ、いったん引き下がって東京に帰るよ~でも、答えないってことは『No』でもないってことだったって受け取っとくよ、勝手に。それに、気持ちは変わるものだからね!じゃーまた来るからね」
手をひらひら振って離れていった。
「あいつ、しつこそうだな。でも面白い人じゃないか。そういや、明日星を見に行こうって来てたぜ」
「本当?あ、天気もよさそう」