過去編
-満天の星空の下
「見えそう?」
「あともうちょっと、あ、見えた!」
「おー私にも見せて見せて!」
広々とした護岸に、5人の少年少女が座っている。
「おーきれいだな、詳しいことはわからんけど」
「もー、この輝きがすごいんだってば!いつでも見られるわけじゃなくってー」
「あーわかったわかった」
「もー、、あ、一曲引いてよ、美歌ちゃんの歌で」
「わかったよー」
大河はギターを手に取って音を探す。
海と空に響くメロディーに美歌の歌がのる。
ーパチパチパチパチ
「すごーい!!流石!スカウトも来てるんでしょー受けてみたら?」
「いやー、東京に出るつもりはないかなー」
「いやいや出ようぜ、その時は俺のデザインした服でデビューを!」
「それだけは遠慮するわ」
「あはははは」
「なんでー!!」
「だって、宗一郎の服、一つ一つはいいけど全部盛りだもん」
「全てをの味を足した巨大アイスクリームみたいなもんだぞ」
「え~そこがいいんじゃないか~」
海に笑い声が響いている。
帰り道
蒼の家の前
「じゃあなー」
家のドアから母親が出てきて
「あら、美歌ちゃんに大河くん、ありがとうね」
「いいえー」
「星見えた?この子夜間学校でいいお友達できたってうれしそうにしていて。」
「お母さん、それこんなところで話さないでよ」望遠鏡を抱えた蒼は恥ずかしそうにしている。
「あはは、じゃ、また明日」
カランカラン
「ただいま」
「おー美歌ちゃんお帰り」
「あーもうこんな時間かー」
住宅街にある、カラオケバー。美歌の叔母が経営する、憩いの店だ。そして美歌の自宅でもある。
「帰る前に一曲美歌ちゃんの歌を聞かせてくれよ」
「はーい」
♪~♪~~♪
「犬のおまわりさんを一生懸命歌っていた美歌ちゃんがなー」
「いやいや俺の一押しは"かわいい魚屋さん"だぞ」
「も~はずかしいよ~」
「いいじゃないの~私たちにとっては大事な思い出だわ」
「はーい、もう夜も遅いのでお開きにしますよ、お客さん」
「気をつけて帰ってねー」
お客さんたちを見送って、叔母さんの酔い覚ましを兼ねてノンアルコールの飲み物を二人で飲む。
これが美歌と百合おばさんの日課だ。
「ースカウトの人、来てたんでしょ。考えてみたら」
「いや、いいよ」
「でもあんた、歌うの好きでしょ」
「ーそうだけど。私は、歌で有名になりたいわけじゃなくて、ここで、よく知った人達に届けたいの」
「でも駅前で歌っているとき楽しそうよ」
「楽しい、けど。ーそれに、ここを離れたくないし」
「も~若い時にしかできないこともあるのよー。何かあればいつでも戻ってくればいいじゃない。
あ、このお店?やだなもーそんなにノープランじゃないのよ!?確かにいつまでもお酒飲んでいるわけにもいかないからね。うふふ、そのうち昼間にめずらしいお茶を置いているCafeにするんだから!もちろんカラオケバーは週末は続けるわよ」
「ええええそうなの!?」
「うふふ、いいでしょー。やりたいことてんこ盛りよ~あんたもぐずぐずしてたらもったいないわよ。あんたのお父さんの音楽の才能と姉さんの美声を受け継いでいるんだから。ーまぁ、せいぜい悩むといいわよ!」
「そういえば今日は星は見えたの?」
「ー見えたよ。あ、そういえば宗ちゃんがね」
「あはははは、あの子達面白いよねー」
ーこうして、今日もおしゃべりは弾んでいく。