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かたん、ことん、かたん、ことん、
規則的に揺れる電車の窓から、彼女は外の景色を眺めていた。
今流れる景色に馴染みはないけれど。
ーあのときも、こうやって外を眺めていたっけ
一ヶ月前ーTokyo
ピピピピ・・・
目覚ましのアラームがなり、窓際に体育座りでうつむいていた、重たい頭をあげる。
窓の外には東京の街が霞を纏って映っている。
頭をコツン、と窓につけて、その景色を眺めていた。
街頭の大型ビジョンに映るスクリーンに、TVはニュースの中継を映していた。
本日、こちらで行われる壮行会には、総理と各国大使も参加される予定でー
街にはたくさんの人が溢れている。
「あ、見て~あれ新曲だよね?」
「本当だーなんか引き込まれるんだよね」
「わかるわかる」
~♪♪~♪~♪
街頭の大型ビジョンに映るスクリーンから、その向こう側。
「はーい、オッケーです。お疲れさまでした」
「お疲れ様です。ありがとうございました」
挨拶を交わしながら彼女は楽屋に帰っていく。
彼女の後ろから背の高い男がすっと近寄り、ぽんと彼女の肩をたたいた。
「よっ、お疲れ」
「社長」
「きれいに取れてたぜ。歌はもちろんだが」
彼女は先ほどまでの愛想のよさを捨て、ほっとしたようにただうんうんと頷いた。
「お前、今夜はOFFでよかったんだよな」
「そうよ。用事があるから」
"用事"を優先させる彼女に少しだけムッとして
「本業で支障のないようにしろよ。こっちが本業だぞ」
「わかってる。融通してくれていることには感謝しているわ」
(-まぁ、お前がこの意思を曲げないことはわかっているんだけどな)
そう思ってすたすたと歩く彼女の背中を見送った。
カツカツカツカツ
ピシャリとしたスーツに身を包み歩いていく。
「お疲れさまです」
「あ、さん、ちょうど良かった。実は急遽変更が入ってー」