第39話:風の覚醒(1)
「ん・・・」
ふと目を覚ました美鈴。
「ここって・・・」
辺りを見渡した美鈴は、ここが今までいた場所ではない事をすぐに理解した。
「そう言えば・・・さっき声がして」
『ここ・・・』
と、上から声がしたので見上げる美鈴。
「高い所に黄緑色の・・・何かの塊」
『もうすぐだから・・・ここまで・・・来て』
美鈴も先ほどからの声が、あの塊の中から聞こえている事に気付いた。
「来てって言われても・・・」
と、美鈴の周囲に吹いていく風。
「暖かい風・・・ねぇ、この風が・・・私の能力なの?」
そう聞く美鈴。
『私は・・・貴方の中からずっと見ていた・・・でも、貴方は何も知らなかったから・・・私の声も聞けなかった・・・でもあの人のおかげで貴方の前に階段が出来たの』
そう言うその声。
「階段?」
『貴方と私をつなぐ階段・・・今の貴方ならたどり着けるから』
「冷子さんの修行・・・そうだ・・・精神を集中させて・・・」
目を閉じ心を落ち着かせる美鈴。
(清二君・・・清二君は私なんかよりしっかりしてるから大丈夫だよね・・・だから私は自分の事に集中する)
と、ただこの空間内に吹いていた風が次第に美鈴の周りに集まり始めていた。
(どうしてだろ・・・修行の時は感じられなかった能力そのものが・・・今は少しだけどわかる)
『ここは貴方の世界・・・思いの強さが自分の力を引き出してくれる』
と、美鈴は集中して気付いていなかったがいつの間にか美鈴は地から足が離れていた。
「・・・大丈夫だよね」
そう呟き瞳を開いた美鈴。
すでに美鈴の身体は、集まった風によって高く浮いていた。
そして、上に向かって手を伸ばす美鈴。
「ようやく・・・ちゃんと貴方と向き合えるね・・・貴方と・・・ううん・・・美鈴と」
と、黄緑色の塊は小さくなり姿を変えていった。
「はじめまして。もう、私の名前わかるよね」
「うん、私の心に浮かんできてる・・・」
そう言い微笑む美鈴。
「美鈴、外の世界で美鈴が戻るのを待っているわ。早く行きましょう」
「うんっ」
元気よく返事をした美鈴。
そしてこちらは清二達の戦い。
「何なんだよライズ!相性じゃこっちが有利のはずなのに・・・」
そう言う正行。
「戦いは相性で決まる訳じゃないって事だ」
そう告げる清二。
「相性ではなく能力の扱い方・・・」
そう言うアクル。
「先ほどから我の雷を防いでいる水の盾。雷を受け止める瞬間に自身と水の盾とのつながりを切り離すことで雷が自身に流れるのを抑えるか・・・小僧にしてはやるな」
そう告げるライズ。
と、その時清二の後方から暖かな風が吹いてきた。
「・・・もうか・・・」
そう呟く正行。
そして風が吹いている場所に美鈴が立っていたのであった。