第38話:ESの秘密(1)
冷子との修行の約束をした美鈴。
そんなわけで、普段の状態から美鈴はワクワクしていた。
「お姉ちゃん、なんだか嬉しそうだね」
と、家で佐和子に言われるほど表情にワクワクが出ているらしい美鈴。
「帰り少し遅くなるかもしれないけど、佐和子大丈夫?」
そう尋ねる美鈴。
「帰りの事なら大丈夫だよ。夕ご飯も少しぐらいなら準備できるから」
そう答える佐和子。
「ゴメンね佐和子。出来るだけ早く放課後の用事終わらせるようにするから」
そう言い強い意気込みを見せる美鈴。
そして、次の日の放課後。
美鈴は冷子が待っている剣道場へと足を運んだ。
「失礼します」
そう言って扉を開けた美鈴。
「そんなに緊張しなくていい。お前が真剣にやっていけば能力では私をすぐに追い越す」
剣道場の中心に立っていた冷子がそう告げた。
「私が冷子さんより上になるなんて・・・無理ですよ」
そう言う美鈴。
「まぁ、そんなにすぐに上に行かれたら私のプライドもあるしな・・・では、早速修行を始めるわけだが・・・」
と、冷子は構えていた竹刀を降ろした。
「まず始めに美鈴に見せておこうと思う。出ろ、フリグ!」
と、一瞬で冷子の前に冷気が集結していったかと思うとそこに見慣れない生き物が出現した。
「これってあの正行さんって言う人も持ってた・・・」
「ES能力者がその能力につき一体持っている精霊と妖精の間みたいなものだ。私は氷のES能力者、つまりフリグは氷の精霊というわけだな」
そう説明していく冷子。
「私にも・・・いるんですか?」
「いる・・・が、それは能力を覚醒させなおかつその力をある程度扱えないと無理だ。詳しい説明を今しても理解は難しいだろうからな・・・まずはここに座れ」
そう指示し、美鈴は言われたとおりに冷子の前に正座をした。
「瞳を閉じ意識を集中させろ。お前の持つ風の力は周囲の力を敏感に感じ取れるほどの特殊能力を持つ。まだ、能力が覚醒していないお前には感じられないかもしれないが私とフリグが微かに放っている力を感じ取ってみろ」
そう言うとフリグは、空中を自由に動き回り冷子は美鈴から離れて竹刀で素振りを始めた。
「・・・」
瞳を閉じた美鈴の視界は、当然真っ暗になっていた。
「感じる・・・でも、氷の能力なら冷たいって感じるのかな・・・」
「教えるのも難しいが、冷気を感じるのではなく能力の源の力を感じる。それが出来るだけでお前のレベルは上がる」
素振りをしながら説明する冷子。
「難しいんですね・・・冷子さんも正行さんもその精霊さんを出すの大変だったんですよね」
「奴の事は知らないがすぐにとはいかなかったな・・・とりあえずあまり遅くならない時間までその修行をこれからやっていく」
「は、はい」
瞳を閉じたまま返事をする美鈴。
しかし、特に成果が出てくると言うわけでもなく数日が過ぎていくのであった。