第2話:花の妖精と花の戦士(3)
「はぁっ・・・はぁっ」
何も考えずに街外れの林にやってきた霞。
リリスと出会った日の夜に聞いた話。
関係のない人を巻き込まないように霞はここに逃げてきたのだった。
【リリス・・大丈夫って言ってたから・・・無事・・だよね】
やはりリリスの事が心配になっていた。
だが、そんな霞の様子を見ている者が上空にいた。
「あいつが青の宝石を持っているのか・・・ディオグ様の話によれば覚醒していなければ厄介にはならないと・・」
と、ゆっくりと降下していくその人物。
「今ならたやすく手に入る」
その頃霞は疲れたのか足を止め休んでいた。
「リリス・・・」
『何か困っているのか?』
「!?」
誰もいないと思っていた霞は突然声をかけられ身体をビクッとさせた。
そして振り向くとリリスと同じような生き物が宙に浮いていたのだった。
「リリスと同じ・・でも感じが・・・」
だが霞はそれを見て嫌な感じを受けていた。
「俺はヒヤシ・・お前の持つ青の宝石を貰い受けにきた」
と、霞が
「これはリリスのだよ・・・だからダメ」
「お前の都合なんて知らない・・それにディオグ様も素直に宝石を渡してくれたなら危害は加えるなとおっしゃっている・・・だから・・」
と、そんな話をしていたヒヤシだが既に霞の姿はなかった。
「あっ、てめぇ!」
慌てて逃げた霞のあとを追うヒヤシ。
「やっと見つけた物をそう簡単に諦めるかよ」
【どうしよう。このままじゃリリスの大事な宝石が・・・】
「何を呟いているか知らないが・・逃げ回るなら俺も力を使わせてもらうぜ」
と、手のひらから力を発動させるヒヤシ。
「あれ・・・何だろ・・急に寒く・・・」
霞が辺りを見ると、木々が徐々に凍りついていたのだった。
「ここはもう俺のフィールドだ・・これ以上逃げられないぜ」
そう霞に言い放つヒヤシであった。
「これは絶対に渡さない」
そういい駆け出す霞。
「抵抗しなきゃ無傷で帰してやるのによ・・・」
と、ヒヤシは霞の前方に力を放った。
すると、その周囲の大地が凍りついていったのだった。
「えっ!?・・あっ・・・きゃっ」
いきなり目の前の大地が氷に変わり、足を止められなかった霞は滑って転倒してしまった。
思わず握り締めていた青の宝石を落とそうとしたが何とかもちなおした。
「これ以上抵抗すれば今度はお前が氷の彫刻になるぜ」
そう告げるヒヤシ。
「うぅっ」
この展開にどうしたらいいかわからない霞。
と、その時空から何かが近づいてくるのが見えた。
「あれって・・確か・・・」
思い出してみる霞。
それはリリスが戦っていた使い魔だった。
「少してこずったか?」
使い魔に尋ねるヒヤシ。
「さすがは噂のフラウフェアリー・・しかし・・・」
と、霞は使い魔の手に握られた傷だらけのリリスを発見してしまった。
「次はお前がこうなるぞ」
そう静かに告げるヒヤシ。
「リ・・リス」
「素直に宝石を出せばそこのフラウフェアリーは解放してやる」
そういわれた霞だが俯いたままになっていた。
「ヒヤシ様。どうやら恐怖のあまり何もできなくなったようですね」
笑みを浮かべ言う使い魔。
「仕方ない・・・手段は何でもいい、宝石を手に入れろ」
「承知しました」
と、使い魔は霞にリリスを掴んでない方の腕を向けた。
「・・リリス・・・」
「恨むなら導かれた運命を恨むんだな」
最後にそう告げたヒヤシ。
「終わりです・・」
「そんなのダメ・・・」
と、突然そう呟いた霞。
それと同時に霞の手に握られていた青の宝石が淡く光り出していたのだった。