第21話:接触(1)
翌朝。
あまり眠れなかったからなのか、眠そうな表情で身体を起こした恵美。
「辛そうだが大丈夫か?」
そう聞いてきたレット。
先に起きていたのか、カーテンを開けていたようだ。
「おはよぅ・・レット」
とりあえず挨拶した恵美。
「やはり辛そうだな・・・」
レットは恵美の気持ちをちゃんと理解していた。
「レットが一番辛いよね・・戦う相手・・・同じ仲間なんでしょ」
恵美がそう言うと
「それは違う・・辛いのはパートナーとなった恵美達だろう」
そう告げたレット。
「・・・湊君が戦おうとしてる相手・・私達と同じ子供なんだよね・・・どうして戦わないといけないのかな・・」
そう言う恵美。
「ディオグを倒せば全てが終わる・・・だが今は七人揃っていないばかりか一人はディオグ側にいる・・恵美・・・恵美には後悔のない選択をしてほしい」
そう自分の思いを恵美に伝えるレットなのであった。
そして、学校へと登校する恵美。
幸いなことに、その途中でフラウフェアリーをパートナーに持つ人と会うことはなかった。
「・・・」
無言のまま玄関を抜け教室まで向かった恵美。
「恵美・・」
心配そうに見ているレット。
と、そこに飛んできたフラウフェアリー・コスモ。
「貴方・・・」
「湊からの伝言・・今から図書室に来い・・・だそうだ」
そう伝えたコスモ。
「・・でも・・・」
「動く意思がなければ強制的に移動させるように言われている・・その意味は理解しているだろ」
コスモにそう言われ表情を変える恵美。
「恵美の意識を操って連れて行くつもりか」
コスモにそう言うレット。
「それが湊からの指示だ」
そう告げたコスモ。
「わかりました・・・すぐに・・向かいます」
「了解した」
そう言うと飛び去っていったコスモ。
「行きましょう・・・レット」
覚悟を決めたのか恵美はレットと共に図書室へと向かうのであった。
「・・・」
図書室の前にやってきた恵美。
だが、その扉の前で立ち止まってしまった。
「恵美、まだ気持ちの整理がつかないなら・・」
レットがそう言うと
「大丈夫よレット、私なら・・・」
言葉とは違い表情には不安が浮かび上がっていた。
そして、ゆっくりと扉を開き中へと入る恵美。
と、いつも恵美が座っている席で湊が読書をしていたのだった。
「・・湊君・・・」
近付きながら話しかける恵美。
「とりあえずは座れよ・・あまり目立ちたくないしな」
「・・・わかったわ」
言われた通りに座る恵美。
レットは一応いつでも恵美を守れるように、恵美と湊の間にいた。
「今日の放課後・・ディオグの部下達が騒ぎを起こす・・・そしてあいつ等がやってくる」
「・・・・・」
湊の話をただ聞くしかない恵美。
「その後まずは俺が出る・・本当は作戦前にお前の力を見ておきたかったが・・・霞の奴も変身後はかなり動けているからお前も問題ないだろう・・で、肝心のお前の出番だが・・・」
ちらっと恵美の方を見る湊。
「お前のフラウフェアリーに聞いて霞達に見つからない位置・・なおかつお前の攻撃が届く範囲から・・・俺を攻撃しろ」
「えっ・・」
そんな湊の発言に驚く恵美なのであった。
「湊君を攻撃って・・」
驚いている恵美。
「何を考えている?」
そう尋ねるレット。
「これも作戦のうちだ・・俺が合図したら攻撃しろ・・」
恵美を見ながらそう言う湊。
「・・・」
無言となる恵美。
「一つだけアドバイスだ・・」
「えっ・・・」
「その攻撃は俺を止める最初で最後のチャンスだ・・その意味がわかるか?」
そう聞く湊。
「どういう事・・・」
「お前が本気を出して攻撃して俺を倒せればお前は解放される・・だが、本気の攻撃を仕掛けてきて俺が倒されなかったとき・・・その時、お前の意思はないと思え」
と、席を立つ湊。
「・・・・・」
自分の後ろを通る湊を見れない恵美。
「じゃあ作戦開始にな・・・」
そう言い残し湊は図書室から出ていったのであった。
「恵美、大丈夫か?」
心配するレット。
「私・・どうしたらいいのかな・・・」
悩みそう呟く恵美なのであった。