第17話:ダークフェアリーと四人目のソルジャー(3)
「どうしよう・・リリス・・・もう、これ以上」
そう言うフラウリリー。
『このままじゃ本当にやられてしまう・・』
そう思うリリス。
「どうした!もう逃げる力もないのか?」
身体を炎に包みながらフラウリリーに向かっていくキキ。
ザレアはいつでも素早く動けるように、風を纏い待機していた。
「潤・・・璃花・・・」
そう呟くフラウリリー。
「これで終わりだぜ!!」
フラウリリーに迫るキキ。
そんな時、廃墟の天井に一人の人物が姿を現した。
「行くのか?湊」
尋ねるコスモ。
「あぁ、俺のやり方で・・やらせてもらうぜ・・・ディオグ・・」
と、黒の宝石を握りしめる湊。
「ジョイントフェアリー・・・」
そう呟き静かにその姿を変える湊。
そして、いつの間にか天井に人の気配が消えていたのだった。
『霞!何とか逃げて!』
そう伝えるリリス。
「うぅっ・・」
何とか立ち上がることは出来るものの、素早く動くことは難しかった。
「まず一つ目の宝石、頂だ!!」
フラウリリーの目の前まで来るキキ。
そして、キキがフラウリリーに体当たりでぶつかろうとしたとき何かが目の前を通過した。
その直後、フラウリリーの姿はそこになくキキの体当たりはミスに終わった。
「!」
「何が起きた・・・」
驚くキキとザレア。
『これって・・』
フラウリリーの中のリリスも驚いていた。
「あれ・・・私・・」
攻撃を受けたと思っていたフラウリリーは不思議な表情をして目を開けた。
目の前に見えたのは、見知らぬ顔。
だがその格好は、フラウソルジャーのそれであった。
「お前・・・何者だ!!」
そう聞いたキキ。
「俺か?俺の名は・・・フラウインフィ・・・フラウインフィだ」
そう名乗ったフラウインフィであった。
「フラウインフィだと・・・」
そう言うキキ。
「新たなフラウソルジャーか・・」
今度はザレアがそう言った。
「あの・・・えっと・・」
フラウインフィに抱き抱えられていたフラウリリーは、いきなりの展開に戸惑っていた。
と、フラウインフィはフラウリリーをおろした。
「立てるか?」
「は、はい・・・」
ふらつきながらも自分の力で立つフラウリリー。
「後は俺がやる、お前は下がっていろ」
そう告げたフラウインフィ。
「でも・・・」
フラウリリーがそう言うと
「心配はいらない」
それだけ告げキキとザレアの方を向いたフラウインフィ。
「いきなり現れて一人で俺たちと戦うつもりか」
そう言うキキ。
「そのつもりで来たんだが・・それが何だ?」
そう言うフラウインフィ。
「貴方は彼女の状態を見なかったのですか?一人で戦えば貴方もそうなるのですよ」
フラウインフィにそう言うザレア。
「ごちゃごちゃ言ってないでかかってきたらどうだ?強いんだろ・・・お前達は」
挑発するように言うフラウインフィ。
「ザレア!一気に倒すぜ」
「えぇ、後悔させてあげましょう」
そして、フラウインフィとキキ・ザレアの戦いが始まるのであった。
「行くぜ」
「えぇ」
キキ・ザレアは自分たちの火と風の力を融合させ一ヶ所に集めていた。
『あの攻撃・・霞が太刀打ち出来なかった・・・』
そう呟くリリス。
「あの、フラウインフィさん・・一人じゃやられちゃいます・・・私も」
そう言うフラウリリー。
「お前はボロボロだろうが・・まぁ、俺もあいつらに勝てるかどうかは知らないしな・・・この力使うの初めてだしな」
フラウインフィの発言に驚くフラウリリー。
「それじゃ最近フラウフェアリーと会ったんですね・・だったらやっぱり私も・・・」
「持ってろ」
と、フラウインフィは持っていた漆黒の石がはめ込まれたペンダントをフラウリリーに投げ渡した。
「わわっ・・・」
慌てながら受け止めたフラウリリー。
「お守り代わりだ・・それ持って下がっときな」
そう言うとフラウインフィは両手を前に出した。
「どんな技を出してきたって俺たちの融合攻撃には適わないんだ!!」
そう言うキキ。
「二人まとめて消してあげましょう」
そして次の瞬間、キキとザレアは火と風の融合エネルギー球をフラウインフィ達に放った。
『フルエネルギーですか?』
フラウインフィに聞くコスモ。
「適当でいい・・・何となく大丈夫そうだからな」
と、フラウインフィの手の前に出現したあまり大きくない黒っぽいエネルギー球。
「何、あれ」
不思議に思うフラウリリー。
『あの球体・・エネルギーが圧縮されてる』
そう告げたリリス。
「あいつらの力を砕け!グラビティハデス!!!」
勢いよくフラウインフィの手から放たれたエネルギー球。
「そんな小さな攻撃で・・・」
キキがそう言うと
「そうだな・・だが、小さくてもエネルギーの密度はこちらが上だ」
そして、中央で二つの技が激しくぶつかり合うのであった。
ぶつかり合うフラウインフィとキキ・ザレアの攻撃。
大きさでは負けていたフラウインフィの攻撃だが、次第に押し始めていた。
「何だと・・何であんな小さな攻撃が・・・」
キキがそう言うと
「さっき言っただろ?エネルギー密度はこっちが上なんだ」
そして、キキ・ザレアの攻撃は粉砕され二人は弾き飛ばされたのだった。
「これ以上の戦いは危険ね・・キキ、撤退しましょう」
そう告げたザレア。
「後少しでそいつを倒せたのに・・・」
悔しがるキキ。
そして、ザレアとキキはその場から消えていったのだった。
その頃、廃墟の入り口付近で戦っていたフラウサニーたち。
「!」
と、突然動きを止めたガロン。
「何だ・・」
「どうしたのかしら」
不思議に思うフラウサニーやフラウディオン。
「ヒヤシ、撤退だ」
「何だと!」
驚くヒヤシ。
「向こうが撤退した・・・何かあったらしいな」
ガロンがそう言うと
「チャンスを潰しやがったのかよ、あいつら・・」
怒りを見せるヒヤシ。
「これ以上我々もこの場にいる理由はない」
「ちっ・・」
そんな訳でガロンとヒヤシも早々に撤退していったのであった。
「どういう展開よ・・・これ」
フラウディオンが呆れていると
「璃花!霞を探すぞ」
「うん、わかった」
そして二人は、廃墟の奥へと向かうのであった。
戦いを終えたフラウインフィ。
「お前大丈夫なのか?」
フラウリリーに尋ねたフラウインフィ。
「はい・・何とか大丈夫です」
辛そうながらもそう答えたフラウリリー。
「じゃあ俺は行くからな」
そう言って立ち去ろうとした時
「待ってください」
フラウリリーが呼び止めた。
「何だ?」
「このペンダント・・・」
フラウリリーがそう言うと
「お前が持ってろ・・そいつは少しだけど守ってくれるからな・・・それにお前は無茶しそうだしな」
そう言うと飛び上がったフラウインフィ。
「それと・・俺のことは仲間には言うなよ」
「えっ、どうして」
フラウリリーが不思議に思っていると
「理由は後でな・・・お前の仲間も近付いてるみたいだ」
「潤君達が・・」
「じゃあな・・・」
そう言ってフラウインフィは飛び去っていったのだった。
その後、フラウサニーとフラウディオンが合流し互いの無事を喜び合うのであった。