第16話:新たな日常生活(1)
翌日。
いつもの日常風景が、水城家に流れていた。
「霞・・もう朝だよ」
霞を起こそうとしている、フラウフェアリーのリリス。
「う〜ん・・」
「昨日早く寝てればよかったのに・・早く起きないと彼方が起こしに・・・」
リリスがそう言っていると
「お姉ちゃん!お母さんが早く起きなさいって・・」
と、部屋に近づいている彼方の足音。
「ん〜・・・彼方?」
と、ドアを開けて入ってきた彼方。
彼方には姿が見えていないリリスだが、すぐに霞から離れた。
「もぅ、お姉ちゃん」
霞の身体を揺らして霞を起こす彼方。
「んっ・・」
眠たそうな目をして身体を起こした霞。
「お姉ちゃんおはよう」
「彼方〜・・・おはよぅ〜」
まだ半分夢の中にいる感じの霞。
「早くご飯食べないと遅刻しちゃうよ」
そう言うと下へ降りていった彼方。
「霞♪おはよぅ」
彼方に続いて挨拶したリリス。
「リリス〜おはよ〜」
とりあえずベッドから降りた霞は、制服に着替えて一階へ向かった。
「ごちそうさまでした」
そう告げる霞と彼方。
「それじゃ学校行こうか」
「うん」
これも水城姉弟のいつもの光景だった。
彼方の通う小学校までの道のりだが、二人はいつも楽しそうに歩いていた。
ちなみにちゃんとリリスも霞の肩に乗って参加している。
「それじゃここまでだねお姉ちゃん」
「うん♪時間が同じだったら一緒に帰ろうね」
そして霞は彼方と別れ、いつもと同じく学校へと向かうのであった。
「おはよう」
笑顔で挨拶しながら教室に入る霞。
「おはよっ、霞」
と、挨拶を返してきたのは璃花だった。
「あれ?璃花ちゃん早いんだね」
そう言う霞。
「昨日は一日じっとしていたからね・・・」
そう告げた璃花。
「ねぇ、璃花ちゃん・・」
少し表情を変えた霞。
「心配することないわよ霞、そうでしょリオン」
と、璃花の鞄の中から飛び出してきたリオン。
「私も璃花さんも完全回復ですよ」
元気いっぱいに言うリオン。
「もう二度とあいつらにはあんなことさせない・・・だから霞も安心して、潤も・・」
「一番潤君に迷惑かけちゃったしね・・・」
そう言う霞。
「まだ先は長いけど頑張りましょう」
そう告げるリリスなのであった。
その頃、闇の異空間では・・。
大いなる闇の力を持つディオグの前に集まったダークフェアリーの四人。
「ディオグ様・・・申し訳ありませんでした・・あと少しの所まで追いつめたのですが・・・」
そう説明するガロン。
「過ぎたことは構わない・・」
ディオグがそう言うと
「ディオグ様・・・今度は俺が必ず・・」
ヒヤシがそう告げた。
「お前達は少し身体を休めるがいい・・・長い戦いで精神も疲労しているだろう・・・各自部屋にて待機していろ」
そう四人に告げたディオグ。
「それはどういう・・」
慌てながらそう告げるキキ。
「これ以上は必要ない・・・」
そういい残し、ディオグの気配はこの場から消え去ったのであった。
フラウフェアリーと出会う前と変わらない日常。
いつものようにホームルームが始まった。
しかし、今日はいつもと違う事が起きるのであった。
「今日はお前達にお知らせがある」
教壇に立った担任の先生がそう告げた。
「何だろう」
不思議な表情を見せる霞。
その横でリリスも見ていた。
「春に転入してきた水城に続いて転入生だ」
先生の発言で多少教室内が騒がしくなった。
「じゃあ紹介するぞ」
教室の外にいたその転入生に合図する先生。
と、一人の男の子が教室に入ってきたのだった。
「それじゃ自己紹介を」
そう言う先生。
「初めまして、僕の名前は灰垣湊っていいます。よろしく」
そう自己紹介した湊。
「みんな仲良くしてやれよ・・・一時間目は俺の授業だから灰垣との交流の時間とする、以上」
そう言うと先生は一旦職員室へと戻っていったのであった。
そして一時間目。
担任の先生の授業ということで、転入生とふれ合うための時間となった。
「転校生が来るとやっぱり賑やかになるわね」
ふれあいの時間はつまり自由時間みたいな感じなので、璃花と霞は潤の席の近くに来ていた。
ちなみに上のセリフは璃花の発言である。
「霞の時もそうだったよな・・」
思い出しながら言う潤。
転入生である湊はクラスメート数人と話をしていた。
と、その時潤の元にやってきた詠二。
「ん?どうしたんだ詠二」
声をかける潤。
「誘ってみないか?転入生を」
そう告げた詠二。
「潤と詠二ってサッカーやってたっけ」
そういう璃花。
「お前があいつを加えたいなら別にいいぜ」
そう告げる潤。
「じゃ、ちょっと行ってくる」
と、湊の元へ向かった詠二。
「二人とも運動神経いいもんね」
そう言う霞。
しばらくしてから詠二が戻ってきた。
「放課後やるぜ潤!時間あったら霞ちゃん達も見に来るといいよ」
うれしそうな表情を見せながらそう告げる詠二なのであった。
そして放課後。
グラウンドや他の場所でも、部活動が開始されていた。
そしてグラウンドには潤や詠二が所属しているサッカー部が活動を行っていた。
「潤達から話は聞いているよ・・君が転校生の湊君だね」
そう言うサッカー部の部長。
「はい、灰垣湊です」
「いきなりで難しいかもしれないけれど潤と詠二、二人と組んで攻めてきてほしい・・・キーパーは僕自らがやるよ」
そう言うと部長はゴール前に立った。
そして配置に着くディフェンダー。
と、ちょうどグラウンドの端っこに霞達がやってきたのだった。
「始まるところみたいね」
そう言う璃花。
そして璃花に連れられてやってきた霞と美奈。
「遅かったなリリス、リオン」
部活に出ているため潤から離れていたサナーが合流してきた。
「それじゃ霞、私達は木の上で見てるね」
「うん」
霞の了承を得て、リリス達は木の上に移動した。
「湊、準備はいいか?」
そう聞く詠二。
「大丈夫ですよ」
「相手は先輩たちだけど遠慮はいらないからな」
「はい」
そう返事する湊。
「それじゃ始めようか」
部長の言葉でスタートするのであった。