第45話:謎秘めた少年
聖羅が転入してはや数日。
特に問題もなく、美鈴も普通に聖羅と接していた。
「まだ、警戒でもしているのか?」
休み時間、清二に話しかけてきた冷子。
「この前までのことを考えれば、あいつ等がいつでも俺達に近付ける状況を作らされてるって・・・思っちゃうんだよ」
そう告げる清二。
「しばらくは大丈夫だろう・・・奴等の言う敵が現れたりしなければな」
冷子と清二が話している間も、美鈴は笑みを浮かべて聖羅と会話を楽しんでいた。
「・・・」
そんなこんなで過ぎていく時間。
しかし、事が動いたのはその日の夕方であった。
今日も一日退屈な日々を過ごしていた正行。
「あいつらとやりあわなくなって、余計に暇になっちまったぜ・・・」
近くの公園のベンチで横になる正行。
「しばらくの辛抱だろう・・・ゲンドウが動き出せば・・・」
そう言うライズ。
「ライズだって思い切り力使いたいんだろ。このままじゃなまっちまうぜ」
そう言い放つ正行。
「なら、その退屈を解消してあげるよ」
と、突然声がして驚く正行。
正行の前に立っていたのは、小学生ぐらいの男の子だった。
「なんだ・・・このガキは」
そう告げた正行。
「こいつ・・・何かが違う」
その男の子から何かを感じとっていたライズ。
「そうだね。初対面なのに挨拶がないのは人としてまずいよね・・・僕はベルゼ・・・この姿は・・・適当に考えたなかで一番活動しやすかったから選んだんだ」
そう自己紹介をするベルゼ。
「やはり普通の人間では・・・」
「精霊・・・とも違うんだろ・・・」
そう告げるライズと正行。
「君達とは似ていて似ていない・・・矛盾した言い方だけどね」
そう言ったベルゼ。
「待て・・・今君達って・・・」
「俺の事が見えているのか?」
そう聞いたライズ。
「そうだよ・・・そして君が雷のES能力者って言うことも理解しているよ」
そう語るベルゼ。
「お前・・・本当に何者だ」
そう呟く正行。
「最初に言ったでしょ。君の退屈を解消する・・・者だよ」
そう言ったベルゼ。
「話を整理するならば、お前は人間でなく精霊が見える存在・・・ということだな」
そう告げるライズ。
「だが、何で俺なんだ?この街には他に能力者は何人もいるだろう。一番かどうかはわからねぇが、俺の前に現れたのは・・・」
そう言った正行。
「実を言うとね・・・僕が君にしてあげられることは、力の限界を解放することなんだ」
そう告げたベルゼ。
「力とはES能力か・・・」
そう言うライズ。
「もちろんだよ。でも、このやり方で成功するかどうかはわからない。でも僕には君なら成功できるんじゃないかって思っているんだ・・・君の強い身体と精神ならね」
そう正行に述べるベルゼ。
「正行、まだにわかには信じられない状況だが・・・」
正行に指示を仰ぐライズ。
「こういうのだよな・・・退屈しない日常生活って言うのは」
「正行・・・お前」
正行の言葉に驚くライズ。
「リスクは・・・あるんだよな」
「半々かな・・・失敗すれば能力は暴走して・・・まぁ、これも僕の予想の範囲内でしかないんだけどね」
そう言うベルゼ。
「いいぜ。やってくれ・・・これで変われるなら・・・」
「うん、成功するように僕も祈っているよ」
そう告げたベルゼ。
そして、その日の夜。
静かな夜の街・・・。
だが、そんな中で大変な事態が起きようとは誰も思っていなかったのであった。
「ふむ・・・」
夜の街の明かりを窓から眺めているゲンドウ。
「お爺様・・・そろそろお休みになられては・・・」
そう告げた直樹。
「もう少しな・・・何やらイリヤが感じておる・・・」
「では、聖羅も先に休んでいますから俺も・・・」
直樹がそう告げたとき、ドアが開き部屋の中に正行が入ってきたのだった。